私
駄文です。イエイ
ドキドキと鼓動を感じながら、ゴーグルを濡らし曇り止めを塗る。そしてプールへ向かう。
ポチャン ポチャン 水滴が滴り落ちる音がする。
肺にこれでもかと言うくらい空気を詰め込んで、潜って中を覗くとキラキラと輝く景色が続いていた。
そんな美しい世界をずっと眺めていたい。もっと水とひとつになりたい。泳ぐことは私にとって全てだった。
大会に出ればいつも一位だった。出した大会新記録だって、一つどころか山ほど出した。私よりも、速く泳ぐ子なんて見たことない。私より上手く泳げるこなんて見たことない。私より泳ぐのが好きな子なんて見たことない。なのに、私は泳ぐことが出来なくなった。最初は何が起きたのか分からなかった。起きたら病院のベッドで私の体はボロボロになっていた。
「大丈夫。治ればまた泳げるようになるよ。」
確かに先生はそういった。でも実際は違った。
影でこそこそと話す声を私はある日聞いてしまった。
「あの子かわいそうにね。」
「先生もひどいわ。泳げるようになるって言っても、選手として泳ぐのはね....」
「そうねぇ、実力があったぶんね....」
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!泳げるって言った。また泳げるってなのにあれは嘘だったなんて.........
ろくに歩けもしない身体を引きずって私は病院を飛び出した。近くに学校があったはずだ。学校へ行けばプールがあるプールがあれば泳げる。服装なんて関係ない身体があればいい。そうすれば私は泳げる。泳げないなんてそんなの私じゃない。無我夢中で私は進み続けた。そして気がつけばプールにいた。
いつも通り、水に飛び込んだ。でも、水は私を拒んだ。私の体の一部だったハズの水が一気に私に牙を向いた。苦しい苦しい。
息ができなくて苦しい。水に拒まれて苦しい。もう前のように泳げない今が苦しい。いろんな苦しさが私を埋めつくして、意識を奪っていった。途切れる意識の中キラキラと輝く水から伸びる光が見えた。
読んでくださってありがとうございます。