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青春ラン!  作者: 成海空
2/2

第2話

翌日。


未だ慣れない高校生活のなか、さらに先日のひったくり事件も加えて少々疲れ気味だ。


けれども、気持ちは浮き足立っている。


もしかしたら顔が少しにやけているかもしれない。


そんな気持ちで学校へと向かう。


電車に透はいなかった。


なんとなくだけど透は朝に弱い気がする。


僕よりも後の電車なんだろう、多分。


そんな脳内透設定を勝手に考案しつつ玄関で靴からシューズへと履き替え、自分の教室へと足を運ばせる。


流石に教室を間違えることはないけれども、なんとなく教室には入りにくかった。


けれども教室の前で棒立ちしていても仕方ない。


顔はにやけてないな、うん、ダイジョブ。


一度軽い深呼吸をしてからドアを開けた。


ガラガラー


「お、和泉来たじゃん、おはよっ」


「噂をすればなんとやらだな」


窓側後方の席に固まって喋っていた男子たちに名前を呼ばれた。


確か、和田君と桃川君だ。


「おはよ、どうしたの?」


「どうしたの?じゃないぜ、和泉改めヒーロー君よー」


と、ソフトモヒカンでやんちゃそうな和田君。


「ヒーロー?どゆこと?」


「こやつとぼけますぜ、桃のダンナ」


ダンナと呼ばれた背の高い桃川君。


とぼけるも何も僕にヒーローなんてあだ名がつく理由に心当たりがないんだからしょうがないじゃないか。


「昨日のひたっくりの件じゃないのか」


「うぉっ、透か。後ろから声かけないでよ、びっくりするじゃん」


背後から気配なく発言したのは透だった。


「悪い、オドロカセルツモリハナカッタンダ」


絶対嘘だ。


言葉は片言だし顔が少しにやけている。


内心面白がっているに違いない。


「おはよう、井上。そうか、井上も和泉と一緒に事件に出くわしていたのか」


「おはよ、桃川だよな。まあ大方そんなとこだ」


どうでもいいけど長身の桃川君とインテリメガネな透が話すとなんか絵になるな。


僕にそっちの気はないけど。


「というかよく二人とも知ってたね。僕、家族以外に話してないけど・・・もしかして親が知り合いとか?」


それはないか。


親が知り合いなら僕ら同士も多少なり知ってるはずだし。


「微妙に近いな。自転車止めたあと犯人逃げたんだろ?で、その犯人最終的に捕まえたのが犬の散歩してたうちのじいちゃんなんだよ。昨日帰ってきたじいちゃんが俺とおんなじ制服着てるっていうから特徴聞いたら和泉っぽかったんだよ」


あの男の人、和田君のおじいさんだったのか。


とても孫がいるとは思えない体格だったぞ。


「俺は和泉がすごい勢いで走っていくのを目撃してな。和田の話を今さっき聞いて、話の筋がわかったんだ」


「桃川君見てたんだ。ぜんぜん気づかなかったよ」


「そりゃそうだろ。あんだけ全力疾走してれば周りの人なんか見えるかボケ」


透にボケって言われたよ。


ちょっとショックだ。


「井上の言うとおりだな。まさか和泉があんなに足が速いとは思ってなかった」


「いやいやそんなに速くないよ。自転車だってそこまで速かったわけじゃないし」


「またまたご謙遜をーヒーロー殿」


「和田、茶化すなよ。和泉はお前と違ってお気楽能天気野朗じゃないんだからな」


そこまで言うか。


「ダイジョブだよ、それくらい。僕は話しかけてくれて嬉しかったし」


「いい子や。」


「健気だな。和田も見習えよ……っとそろそろホームルームの時間か。席に戻るとしよう」


思いのほか話し込んでいたらしい。


桃川君の一声で僕ら四人は席に着くことに。


程なくして担任の先生が来てホームルームが始まった。







昼休み。


朝に意気投合した和田君と桃川君の誘いで僕と一矢の四人で昼食を摂り、その後談笑していた。


「へぇー、じゃ和田君と桃川君って長い付き合いなんだ」


「そうなんよ。かれこれ小学校からの付き合いなんだぜ」


「桃川の方は若干呆れてるみたいだけどな」


「呆れてるというか諦めてる感じかな。要は腐れ縁だ」


辟易とした様子の桃川君が言うと和田君は彼を睨んだ。


だが桃川君、これを華麗にスルー。


どうやら腐れ縁は伊達ではない様子。


意味が無いことを悟ったのか和田君はこちらに向かって話しだした。


「そういや一泊研修、どうするよ?この面子でいいかなって勝手に思ってるんだけど」


一泊研修…そういえば朝にそんなこと担任言ってたな。


クラス内の交流を深めることを主な目的とした一泊研修を週明けにするらしい。


簡単な学力テストなんかをやるそうで、場所はちょっと離れた山の麓。


それに伴い男女混合で7~8人の班を今週中に作っておくこと、とのことだった。


「いいんじゃないか?」


と、透。


「俺は井上と和泉がいいなら構わない」


「僕も構わないよ」


反論なんて欠片もなく、むしろこっちからお願いしたいくらいだった。


「じゃ、これにてけってーい。あ、あと女子どうする?」


「あてがないな」


「そうだな」


「ないね」


「お前ら消極的すぎるだろ。俺もないけど」


「ま、ウダウダ行っても仕方ない。各自で探すしかないだろ」


桃川君が方向性をまとめた。


腐れ縁なんか言ってるけど中々いいコンビに感じる。


周りを盛り上げようとする和田君とそれを良い方向に持って行こうとする桃川君。


透といいこの2人といい良い友人を持った気がする。


一人、そう考えていると黒板側――つまり和田君の後ろから女の子の声がした。


「楽しそうに話してるときにごめんね。和泉君、井上君。ちょっと廊下出てくれないかな?昨日のことでちょっと」


昨日の事件の被害者の霜月さんだった。


「いいけど…。透は?」


「オレも構わない」


「ごめん、悪いけどちょっと抜けるね」


「気にするな。例の件だろ?行って来い」


「いってらっしゃいー」


紙パックの紅茶を飲んでいる桃川君と笑顔で手を振っている和田君。


理解ある二人で助かった。


食べ終わった弁当箱を自分の席に置きつつ僕ら三人は廊下に出た。







だいたいの人は教室か食堂でお昼ご飯を食べているこの時間帯、廊下にある人影はそんなに多くなかった。


あまり人に聞かれたくない話をするときはもってこいな場所だろう。


「悪いね、わざわざ移動してもらっちゃっって」


「気にしないで。あんまり聞かれて気分のいい話じゃないだろうし」


「痛いところついてくるわね和泉君」


滅相もございません。


「で、どうしたの?」


透が単刀直入に聞く。


その声は少々いつもより冷たく感じた。


「そんなたいした用事じゃないんだけどね。ちゃんと二人にお礼言っとかないとなって」


「いやいやそんなたいしたことしてないよ。ね?透。」


「さあな。少なくともオレは警察よんだだけだし。お礼言うなら優に言え」


そう言い残すと一矢は階段の方へ歩き出した。


「ちょっとどこ行くのさ、透。話し終わってないよ」


「関係なさそうだから飲み物でも買いに行ってくる」


言いながら透は去っていった。


そんなに霜月さんと関わるのがいやなのだろうか。


「嫌われてるのかな、あたし。」


「さぁ・・・。僕もまだ付き合い長くないからなんとも言えないや。」


霜月さんに落ち度があったとは思えないよな。


「まぁいいわ。井上君の言うとおり和泉君に言っとくことにする、ほんとにありがとね和泉君」


霜月さんはニコッと笑いながら言った。


「携帯とかいろいろ大切なものも入ってたし・・・あ、そうだっ和泉君メアド教えてよ」


「あ、うん。いいよ」


「赤外線行ける?」


「いけるよ」


「それじゃあたし送るね」


ピッっという短い電子音が鳴る。


同様にして僕の連絡先も霜月さんに送った。


便利な時代になったと感じる瞬間。


僕が前に使っていた携帯はこれが出来ないタイプだったので一々文字を打っていた。(もしくは打ってもらっていた)


「オッケー、ありがと。何かあったら連絡するね」


「了解ー」


ここまでのよくある連絡先交換の間、霜月さんは終始楽しそうな顔をしていた。


僕には少しわからなかった。


きっと女の子特有の感覚なのだろうと思考に終止符を打つ。


「ねぇ、和泉君」


「はい?」


先ほどと打って変わってちょっと真面目な顔になる。


「一泊研修の班決まった?」


タイムリーな話題が出てきた。


「男子のメンバーは決まったよ。ただ女子の宛がないのが現状かな」


男だけでも集まったんだ、上等だと思う。


「そう、なんだ」


か細い声でそう言うと


「良かったらあたし達と班組まない?こっちも男子探してたんだ」


思いもよらない提案が彼女から飛んできたのだった。



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