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ソロモンの系譜  作者: 柏木 遥希
出会いと邂逅
7/9

出会いと邂逅(6)

 拓也・悠・龍之介の3人は少女に言われるがまま非常口から飛び出した。そのまま外階段を降りて野次馬にまぎれる。周りからは三人の体を心配する声や店内の様子を聞く声があったが3人ともその声に答える気になれず、茫然としていた。死にかけていたという実感はないものの嫌な汗というのは問答無用で体を冷やす。

 周りの声にこたえるわけでもなくボーっとしていると、ガッと店内から何かがぶつかりあう割と大きめの音が聞こえた。外からでは何が起きているのかわからないが誰かの足がちらりと見え、そのまま奥へ消えた。店の入り口からは土煙が外に飛び出してきている。その様子から激しい大きな戦闘が起きたことがうかがえた。周りにいた野次馬は先ほどの音に驚き、ざわついている。そちらのほうがやはり気になるようで拓也達に質問するのをやめ、店の方に目を向け始める。野次馬の中には店の写真を撮るものまでいた。

 ふと拓也は少女の姿がないことに気付いたので悠と龍之介に

「あの子はどこへ行ったんだ?」

 と尋ねたがどちらも知らないようで龍之介は首を横に振る。

「店ん中戻ってったんとちゃうんか?」

 そういったのは悠だった。それを聞いて拓也はさっきからする音は彼女が出しているのかもしれないと思った。

「やっぱり持ってんのかな?」

「だろうな」

 悠の問いに主語がなかったが聞かなかったのは、『悪魔』のことであることが分かっていたからだ。彼女があの大穴を開けた存在とぶつかり合えているのであれば『悪魔』を持っていることは揺るぎようがなかった。『悪魔』を持たずにあの存在とぶつかり合うのは戦闘機に素手で渡り合おうとすることと同義と考えていい。

 最初にした音から少しは何も音はしなかった。周りの野次馬も店から少し離れて見守っている。見守っていると一度出てきた土ぼこりが店内に戻っていくのが見えた。まるで店内に吸い寄せられてでもいるように風も出始めた。一瞬風が止んだと思ったら突風が店内から吹いた。台風のような風に周りから風に驚いたというような短い悲鳴が上がる。そして再び、店内から戦闘音がし始めた。今度は一回だけではなく何度かしている。それに伴って店内から出てくる土煙が勢いを変える。

 何度か音がした頃、野次馬が先ほどのざわつきとは別にざわざわしだしたので顔を上げると、店の入り口に影ができていた。中にまだ生存者がいたらしい。そう考えたい。戦闘音であろう音がまだしているため、敵である可能性はゼロに近かった。店内から出てくる影はだんだん濃くなってゆき姿を現した。従業員らしい男性2人と客であろう女性が1人出てきた。

 誰も駆け寄らない。それは店内からの影響を受けたくないからであろう。野次馬は一定の距離を置いて見守っている。ある程度この3人が近づいたところでまた1人また1人と、近寄るものが現れた。拓也たちの時のように中の様子を聞く声は拓也のいるところには聞こえてこなかった。拓也が気にしていなかったのもあるのかもしれない。拓也は周りが生存者に気を取られている中、いまだに影が残る店の入り口を見ていた。その影は生存者が観衆の輪に入ったことを確認し、何かを攻撃しながら再び店内へ戻っていった。その姿は助けてくれた少女の姿に似ていた気がした。

 それから2・3分たった頃、道を開けてくださいという声が聞こえてくる。警察だろうかと拓也は思ったが何か違うらしい。その声は反対側から聞こえてくる。ただその声は聞き覚えのある声だったので拓也も気になって人をかき分けながら前に出た。拓也が最前列に顔を出した時、声の主は店の入り口に向かって走っていた。

「香奈子!!」と声の主――香奈子を拓也が呼んだその時だった。香奈子が入口のところで振り向くと同時、2階の窓の上に設置してあった大きな看板が真下にいる香奈子に向かって落ちた。

「上ッ!!」

 拓也はとっさに叫んでいた。香奈子はその声に反応したのか上を見てギョッとしている。体が動かないらしい。次の瞬間、看板は香奈子を押しつぶす形で入口を完全にふさいだのだった。

 一瞬拓也には何が起こったのか理解できなかった。それはそのことを頭が理解することを拒んでいるような感じだった。しかし、現実というものは否応なしに非情なものを突き付ける。

「香奈子ぉ!!!」

 悲鳴が上がるなかにそのことを理解しだした拓也の叫びがこだました。香奈子がいた入口には土埃が舞うのみとなっていて、ぽっかり空いていた口は完全に塞がってしまっていた。


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