表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソロモンの系譜  作者: 柏木 遥希
出会いと邂逅
5/9

出会いと邂逅(4)

少女――アリスは休日の四分の一をゲームセンターで過ごしていた。ゲームでもしようかなと何の気なしに立ち寄っただけだったが、いつの間にか5時を過ぎている。まさかあの格闘ゲームを自分が気に入ってしまうとは思っていなかった。そのゲームの内容としては普通だったが、K.O.した時の爽快感はよかったと思う。

またこようかなんてことを考えながら階段に近づくと怒鳴る声と落ち着かせようとする声が聞こえた。周囲を見回して落ち着けそうな場所をさがすと階段のすぐ横に休憩所のようなところがあった。もう一度階段の方をちらっと見たがヒートアップする気配しかなかったので、面倒事にならなきゃいいがと口の中で呟いてから近くにあった休憩所に向かった。休憩所の入口付近には同じくらいの年齢の男子が一人陣取っていた。鞄の数から察するに三人のグループらしい。一人は階段と壁にはさまれた自動販売機の前にいるあどけない少年で、もう一人は階段とは反対の方向に向かっていった少年だろう。アリスは一番奥の席に着いて気配を読み取ろうとしていた。何かあったらすぐに対応できるように警戒をしながら。

席に着くとあどけないほうの少年は自販機から離れ、元々いた少年の所へ行った。

そこについてから10秒もしないうちに悪い方へと転がり始めた。

下の階からマナの量が増えた。それは圧力のようなものとして感じられるだけだったがどちらにせよ危険信号にはかわりなかった。とっさに階段から一番近くにいる少年二人に叫んだ。「そこから離れろ」と。

素人が動けるはずもないのはわかっているのに叫んだ自分に対して反吐が出た。2人は声に反応し、こっちを向いている。向いてしまっていた。自分のミスに心の中で舌打ちをしてから

(クッキー、身体強化)

自身に宿る悪魔に対して能力ちからの行使を命じた。瞬間、自分の体に能力が宿ったことを感じる。そして少年たちの間にある机に向かって直線のように出来るだけ最短距離で跳躍した。机に着地する前に2人の後ろの方の首の襟をつかみ着地。そして方向を階段とは逆の方向に90度回転してもう一度跳んだ。出来るだけこの2人を怪我などさせないように今度は放物線だった。着地点はトイレの近くを狙ったので機械類に足をつけることなく女子トイレの前に着地した。その間にすごい音が背後でしていたのでたぶん休憩所は破壊されただろうなと思った。数十センチ右には男子トイレがあり、そこで突然の飛来物に驚いたのか、三人目であろう少年がへたり込んでいた。

持っていた2人を落とし、周りを見回す。案の定休憩所はほとんどが消し飛んでいた。屋根は消し飛んでなく、土煙が濛々としているので力技だろうかと仮説をたてた。そしてトイレのある壁に非常口のマークを見つける。呆然としている3人に対して指示を出す。

「お前らはあそこから外に避難しろ」

声をかけたが反応がなかったのでもう一度言った。もちろん少し小突く程度に蹴るのは忘れない。

「い・い・か?お前らはあそこから外に行きやがれ」

非常口を指さしながら言うと

「は、はい…」

と、元々いた少年が返事した。そしてそいつは周りの二人に対して

「悠、龍之介…避難するぞ…」と言っていた。

そのまま三人が安全に外に出られるように一緒に非常口まで付いていき、出るのを確認してから階段の方へ向かって歩き出す。

「クッキー、行くぞ」

と、今はアリス自身にしか見えない翡翠色の十二の瞳をもつサメ型の悪魔に声をかけた。そして自身しか触れられない悪魔の体を何度かなでながらアリスはこの事件の中心へと向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ