出会いと邂逅(1)
キーンコーンカーンコーンと本日の授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。最後の"特別"かったるい授業で固まった体を伸ばしながら放課後はどうしようかと考えていると、前の席のよくつるむ男子――中村 悠が話しかけてきた。
「なぁ拓也、放課後にゲームセンターでも寄ってかへんか?龍之介も来るゆーてんねんけど。」
「おぅ、いいぜ。龍之介とはどこで待ち合わせてるんだ?」
「ここや。」と、俺達の教室を示す。
ちなみに龍之介と言うのはもう一人のよくつるんでいる男子のことだ。この三人がよく遊びにいく取り分け仲のいいメンバーである。
「それにしても、今日のあの授業はええ睡眠時間やったわぁ〜」「…お楽しみだったようだな」
と、呆れた声でそう言うと驚きとなんとなくいやな予感を感じたというような顔で、
「え!?…なんでわかるん?」
まぁ、悠は寝ていたので知らなくて当然であったのだが、
「『あはははは…そこのビキニのねぇちゃんまってーなー』って、寝言言ってたぞ。…大きめの声で。」
正直、授業中にこの寝言はどうかと思った。
「じ、自分嘘吐かんといてーな。そ、そそそないな夢みるわけあれへんわ!!」
…動揺しながら言われても説得力もない。とりあえず、事実を述べてやることにした。
「みんな笑っていたぞ。…一部の女子は引いてたがな。」
ちなみに先生は青筋をたてていた。
「で、実際のところはどうなんだ?」暫く無言がつづくとゴスンと頭を机にぶつけた。数回ぶつけると机に頭をつけたまま動かなくなってしまった。たぶん汗とかが止まることを知らずに流れているだろう。
その時、まだあどけなさが残る黒髪の少年が教室に入ってきた。
「ごめんね。6限目が長引いちゃって。おまたせ…って悠はなにしてるの?」
「こいつが授業中に…」
と、言い掛けたときに
「言うなーっ!!」
と割り込んできた。
「自分、龍之介に言うたら殺したるからな!!」
と、凄んできた。必死過ぎて笑えない。
「ただこいつがビキニのお姉さんと授業中に夢の中で遊んでただけよ、龍之介君。」と言いながら女子近づいてきた。桜木香奈子だ。拓也と家が隣同士で所謂幼なじみというやつだった。親同士も仲がよく、二人の両親が居ないときは夕食などを一緒にとることもある。
「香奈子〜。ゆーてはならんことをゆーたなー…」
悠が低い声で唸る。
「あんたはたっくんに言ったのであって、私には言われてないわよ」
正論と言えば正論だが…目の前で話が広まっていくのは、不憫なものだな…。
「そうそう、たっくん9時頃に行ったらいいよね?」
「おぅ、その時間に準備しとくからな」
「なんや〜幼なじみ同士、そんなとこまで関係が進んどったんか?」
ニヤニヤしながら悠が茶化してくる。
「な、なにを想像してんのよ!!」
と、赤面しながら叫ぶ。どちらかというとほえる感じだ。
「そうゆう自分は赤面しながら何を想像したんや?」
「へ!?べ、別に…その…」
「わいはただ拓也の家行くゆー意味やってんけど…何を想像したんやろーな〜、こいつは。」
「な゛っ!な…な…」
香奈子はさっきから「な」しか言えていない。さすがにやりすぎと思ったのか龍之介が悠を止めようとする。
「もう、止めなよ悠」
「嫌や。さっきの借り返したらんと気が済まへん。」
と言いながら、龍之介と話すために龍之介に向けていた顔を香奈子に戻しながら言い放った。
「言えへんような妄想でもしとったんか?このち…」
と悠が言い掛けたその時、一陣の風が悠を襲った。