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第1話 名の無い物語 

名前の読み方は真琳(マリン)理音(リオン)(シュウ)です。

―――――あるところに双子のお姫様がいた。

ふたりは血の繋がらない姉妹だった。

ふたりの姫は頭も容姿もよく、色々なところが長けていた。

ふたりは隣の国の皇子を愛した。皇子は妹を選んだ。

姉は嫉妬に狂い、森の魔女に皇子が自分を愛してくれるよう頼んだ。

魔女は対価に、妹の命を貰うと言った。

妹は不運な事故で亡くなり、姉はそうして皇子と結婚した。

ある日、姉は妹が生前書いていた日記を読んだ。

そこには血の繋がらない姉を想う気持ちが沢山綴られていた。

姉は自分の愚かさに気付き、魔女の元へ行ってこう頼んだ。

「私をこの世から消して、その代りに妹を蘇させて皇子と結ばせて下さい」

翌朝、城に妹が戻り、その代り、姉は二度と城へ帰らなかった。

後日、妹と皇子は結婚した。


人は笑うだろう。彼女の愚かさに。可笑しさに。


しかし、なんて切なくて、悲しいのだろう。―――――






―――よく寝た・・・・。

霜沢理音は重たい瞼を開けた。

心地よい風が耳元の草をかすめる。

キーンコーンカーンコーン・・――――――鐘が鳴る。

理音は起き上がり、制服についた土と草を払い落とした。

―――久しぶりに見たなあんな夢。

理音は片手に持った本を見た。それはとても古ぼけていた。

あちらこちらが擦り切れており、愛読されていた事がよくわかった。

その本に題はなかった。その部分だけが擦れていた。

恐らく外国の本なのだろうに作者も翻訳者も書いていなかった。

この本は生れたばかりの赤ん坊の頃、母親がくれたものだった。

父はまだ読めないだろうと笑っていたそうだけど、母は字が読めるようになったら読めばいいといったそうだ。

理音は教室に戻ろうと、廊下を急ぎ足で歩いた。

その時、チラッと目に入った人の集団。

その真ん中にはいつも、理音とは似ても似つかない双子の妹の真琳が居る。

母は自分が生れてすぐ、事故で死んだ。その後、父は再婚した。

その再婚相手との間に一ヶ月も経たないうちに子供ができた。

それが真琳だ。つまりは腹違いって事だろう。

真琳は長い茶髪の天然のくりくりの巻き毛が可愛らしい、愛嬌のある娘だ。

理音とはだいぶ違った。

理音は黒髪で天然の直毛で肩ぐらいまでしかない。

気品のある上品な可愛らしさ、というか美しさなのかもしれない。

ふたりは頭も容姿も良かった。運動能力も真琳は理音には劣るが良かった。

しかし、理音はいつも何かで真琳に負けていた。その「何か」はよくわからない。

多分性格だろうな、と理音は一人納得しているが。

―――――まるで物語の双子のお姫様みたい。

いつもそう想う。妹に対する劣等感。父も義理母も妹にばっか気を使って。

ちょっと憎らしく思える。

理音は笑っている真琳を見ていた。

すると真琳と目が合った。思わず理音は目を離してしまった。

―――――なにやってんだろ

理音は溜息をつきながら教室の端っこにある机の席に着いた。

一人一人が席に着く。先生が教室に入ってきた。

「あ〜明日から中学入って二回目の夏休みだ〜。勉強もしろよ。以上」

短い言葉は終わり、皆荷物を持って友だちと笑いながら帰っていった。

理音がしばらく席を立たずにいると声を掛けられた。

「理音、帰んないのかよ」

背が高くひょろっとした少年。若月秋。

「・・・・帰るけど」

理音は教科書を鞄に入れながら、秋を見ずに応えた。

「あっそ。」

「さっさと帰れば?・・・真琳が待ってるでしょ」

「言われなくてもっ」

秋は舌をベッと出して教室を出て行った。

秋は親が親友って事もあって幼い頃からの馴染みだ。・・そして真琳の彼氏だ。

真琳も理音も小さい頃から秋が好きだった。

中学一年のクリスマスだった。その日は親同士が出かけていて、三人で祝う事にした。

真琳が買い物に行っている時、理音は秋に訊いた。「好きな人いる?」

秋は真っ赤になって頷いた。「ダレ?」

口ごもる秋の口からは理音の名前は出なかった。そのかわり―――失恋。

あんな事訊かなきゃよかった、なんて後悔するのは遅かった。

後日ふたりは上手くいった。真琳は理音が秋を想ってるなんて知らなかったんだろう。

上手くいった日、誰よりも先に笑顔で理音に報告した。

祝福の言葉は出なかった。『よかったね』なんて祝福にならないし。

なんで自分は劣っているのだろう?何回そう思ったことか。


一人ぼっちの教室にオレンジ色の光が窓から差し込んでいた。

次書くの遅いと思いますが気長に待ってやって下さい。

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