詩: ポケットの中の春
掲載日:2026/05/09
朝のバス停で
コートのポケットの中を探っていたら
指先に乾いた花びらが触れました
一年前のあの日
ふたりで歩いた桜の並木道で
「春を持って帰ろう」と
あなたが笑いながら集めた花びらでした
気づかずにずっと持ち歩いていたのですね
自分でも少し驚いて
少しだけ胸が痛みました
あなたのぬくもりも
最後に言えなかった言葉も
この薄い花びらに貼りついたまま
冬を越えてしまったようでした
けれど その痛みは
もう刺すものではなく
ただ静かに残っているだけのものに
なっていました
もう 大丈夫
このポケットを空っぽにして
思い出を温かい記憶に変えましょう
コートを脱ぐ季節がやってきました




