第10話 完璧じゃないけど、まあいける
「……減ってないな」
スマホの画面を見て、私はつぶやいた。
正確には、減っていないわけではない。
でも、思っていたよりは減っていない。
「……なんとかなってるか」
小さく息を吐く。
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テーブルの上には、いつものレシート。
ダンボールは、少しだけ減った気がする。
気のせいかもしれない。
「……慣れてきたな」
何に、とは言わない。
でも、前よりも迷わなくなった気がする。
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私は立ち上がって、冷蔵庫を開けた。
もやし。
卵。
あと、少しだけ増えた何か。
「……増えてるな」
いいことなのかはわからない。
でも、悪くはない。
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スマホが小さく光る。
通知。
フリマアプリ。
「……ん」
売れた。
また一つ。
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私は少しだけ画面を見つめて、
「……まあ」
とつぶやいた。
驚きは、前より少ない。
でも、ちゃんと嬉しい。
「……続いてるな」
私はそう思った。
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キッチンに向かう。
フライパンを出す。
もやしを入れる。
ジュウウウ、と音がする。
「……結局これだけど」
私は少しだけ笑った。
でも、それでいい気もする。
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炒めながら、ふと考える。
最初は、どうなるかと思った。
お金のこと。
生活のこと。
いろいろ。
「……まあ」
私は小さくうなずいた。
完璧ではない。
余裕も、そんなにない。
でも、前より少しだけわかってきた。
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「……なんとかなるな」
根拠はない。
でも、前よりは少しだけ、信じられる。
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火を止める。
皿に移す。
テーブルに運ぶ。
部屋は、相変わらず。
ダンボール。
レシート。
いつもの景色。
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「……変わってないな」
私はつぶやいた。
でも、同時に思う。
「……まあ、いいか」
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私は椅子に座って、もやしを一口食べた。
変わらない味。
でも、少しだけ違う気がする。
「……いける」
私は小さくうなずいた。
何が、とは言わない。
でも、たぶん。
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スマホの画面が、静かに光っている。
残高は、そこにある。
少しだけ、増えている。
私はそれを見て、目を細めた。
「……完璧じゃないけど」
小さくつぶやく。
「まあ、いける」
私はそう言って、もう一口食べた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。




