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かの人との思い出

作者: こまつぶ
掲載日:2025/11/22

11月の暮秋、鼻がツンとする季節。

スマホの光に乗せて最愛の彼女からのメッセージが目に届く。

「気持ちが冷めたから別れよ」


何故、いつから、と頭が混乱する中でかろうじて指を動かし返信する。

「そうなんだ、分かった。別れよ」

僕なりの最後の強がりだった。


どこかで目にした「冷めた気持ちはもう戻らない」のフレーズが頭の中でグルグルと回っている。


その日、夢の破片で繋ぎ合わせた摩天楼は崩れ去り、彼女と別れた現実だけが残った。


ーーーー


アラームの音で目を覚ます。

音の出本に目をやると11/10(土) 9:30の時刻が目に映る。

いつもの設定が残ったままだった。


そういえば、あの人は朝が弱い人だった。

それに対して僕は比較的朝に強かったので、いつもあの人の時間を合わせていた。


毎回の約束は土日祝の13時と決まっていた。

時間的にはお昼だが12時というピークを過ぎているので飲食店は少し空いている。


僕らはあまり背伸びをしない関係性だったので、いつもお昼はファミレスか近場の飲食店で済ませていた。

レストランはいつかの記念日に行ったきりだ。

互いに固まっていた姿は今に思えば微笑ましい。


昼食の後は映画館やカラオケに行ったりと、ある程度のルートは決まった。

その日の気分によって追加でどこかへ寄ったりもしていた。


最後のお出かけはどんなだったっけ?

思い出したくない想い出の山を掻き分ける。


ちょうど夜に近場でライトアップがあったのでそこへ行った記憶が蘇る。

その日のあの人の格好はいつにも増して似合っていた。

だが、それももう見ることはできないのだろう。


ーーーー


寝起きの頭を稼働させていると、時刻はすでに12:30になっていた。


お腹が空いていることに気づいたので自室から出てキッチンへ移動する。

冷蔵庫を開けて中を見ると焼きそばの袋が残っていた。

パッケージの4人前という文字に対して、中身は2つの麺の塊しかない。

消え去った2つの面の塊は家族が消費したのであろう。


面の塊を一つ取り出して焼きそばを作る。

作り方にこだわりはない。

ただ野菜と麺を炒めて付随の粉末ソースをかけるだけ。それだけだ。


作った焼きそばを腹に収めると、腹に食べ物を入れたせいか無性に外へ出たくなった。

今日はなんだか家でじっとしたくない気分だ。


ーーーー


支度を済ませると時刻は13:30になっていた。

いつもの約束のせいか少し申し訳なさがあるが、それもそのうちなくなるだろう。


自家用車に乗り込みこの街の唯一の遊び場とも言えるイオンへ向かう。


僕の住む街は地方都市だ。

街の中央には国宝の城が聳え立っており、それがこの街のシンボルだ。


地方都市なので都会のようにアミューズメント施設が十分に揃っておらず、申し訳程度にカラオケとネカフェが点々と存在する。

その中でもイオンという複合施設はこの街唯一のオアシスだ。


イオンに着くと家族連れや部活帰りの学生が多くいた。

その活気にあてられて気持ちが少し前向きになる。


足取りが少し軽くなり、その足で3階に収容されている映画館に向かう。

上映中の映画のラインナップを確認してつい最近上映されたアニメの映画を観ることに決める。


上映開始時刻を見ると14時と現時刻の13:45とちょうどよかったので早速チケットを購入して席に着く。

映画前の広告を見ていると映画本編への期待が高まって来る。

この上映されるまでの時間が癖になる。


ーーーー


映画ははっきり言って面白かった。

期待以上だったし、それ以上に映画以外を考えない時間を作れてよかった。

映画の感傷に浸っているとあの日のことを思い出す。


その日はいつものお出かけの日だった。

昼食が終わり、これからどこへ行こうと話した時にあの人は映画を観たいと言った。


ここから映画館までは片道1時間で、目的の映画の上映開始時刻は1時間後だった。


そこからは慌しかった。

昼食のお会計を済ませた後にすぐさま僕の自家用車へ乗り込む。

すぐに車を出してあの人に映画館までのナビを設定してもらった。


昼食を済ませた飲食店から映画館までは1時間強かかったので結局目的の映画は見れなかった。

たが、他にも観たい映画があったのでそれを一緒に見ることにした。


目的の映画は見れなかったが代わりの映画を観れたのでその日は互いに楽しかったと言い合い、あの人を家まで送ってそのまま解散となった。


ーーーー


ふと思い出に浸っていると時刻は16:00を目前としていた。

長居してしまったとすぐさまイオンの駐車場へ向かい、自家用車に戻る。

目的もないので家に帰ろうとと車を自宅へ向かわせる。


運転中もあの人との思い出が頭に蘇っては消えたりを繰り返していた。

自宅への道中、夕日を見れるスポットが目につく。

普段なら寄らないが、今日はたまたま気分だったので寄ってみる。


近場の無料開放されている駐車場に車を停めて夕日のスポットへ向かう。


歩みを進めるたびに心に重い杭が打たれるような気分になる。

きっとここへあの人と行きたかったんだろう、そんな気持ちが生まれる。


どうしよう、やめようかなと思った矢先。

スマホの通知のバイブレーションに気づき、癖でスマホをみてしまう。

公式アカウントからの通知だった。


あの人からメッセージが来ることはもうない、その事実だけが心に残る。


俯いた顔を上げると夕日が翳っていた。

スマホの画面を閉じて深呼吸をする。

やはりこの季節は空気が冷たい


今日はいつもと違う一日だったがそれでも終わる、そんなノスタルジックな気持ちに浸る。

僕の心に打たれた重い杭はいつしかなくなっていた。


帰ろう。

自家用車に向かうその足取りは少し軽かった。


ーーーー


家に帰った後はいつものように過ごした。

晩御飯を食べて入浴し、自由時間に趣味のゲームや読書に耽る。

そしていつものように眠りにつく。


ーーーー


またアラームの音で目を覚ます。

音の出本に目をやると時刻は11/11(日) 11:00だった。

いつもの単調な日々が始まる。

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