おかげさまで
「え?えええええ!?!?」
ユイが落下しながら言う。
先程まで飛んでいたカルテット達は上空約40メートル。実に15階建てのマンションと同じレベルだった。
「しぬしぬしぬしぬ!!!」
「ユイ!!共有権能!背中に力入れてみて!!!」
もう随分と離れたカルテットの声を聞いたユイが言われた通り、力を入れる。
「ぬぬぬぬ!!こうか!?」
その瞬間、全長3メートル……片翼で1.5メートルの大きさはある、天使から見てもかなり大きな翼が現れた。
その大きな翼を強く羽ばたかせると、たった1度でカルテットのはるか上空まで行ってしまった。
「うおおおおお!?!?」
そう言いながら横をとてつもない速さで通過するユイに呆気にとられているカルテットに、ユイが大声で言う。
「後ろ!!!」
ハッとしたカルテットが後ろを振り向くと、目と鼻の先にはすでに【デタラメの槍】が迫ってきていた。
―――――が、カルテットは余裕の表情で笑う。
「誰も抱えていない状態なら……この程度撒ける!」
そう言うと1度強くためてから、翼を大きく振りかぶる。
ユイが瞬きをした瞬間には既にもう随分と離れた位置にいた。
「はっや……」
と言ったユイのすぐ後ろから、聞き馴染みのある、先程自分を刺したあの声が聞こえてくる。
「ん、先輩。随分と寒そう」
シノだった。
「……おかげさまでな」
ユイの着ていた服の腹部を見事に穴が貫通している。
先程刺されたからだ。……が、身体の傷はもう治っていた。
「……傷、治り早い?」
「ん?ああ、そーかもな……で、なんだお前、契約者ってやつか」
「うん。先輩が堕天使と契約するから……こんなことになるんだよ」
そう言ったシノが指を鳴らすと、一瞬にしてユイの目の前に槍が現れる。
「おー……こりゃかっけえな」
「……遺言はそれでいいの?」
「え?俺死ぬの?」
「…………え?」
今の状況を理解していないユイが放ったまさかの返答でシノまでもが驚く。
「いや先輩死ぬんだよ?え?なんで死なないと思ってた……?」
「……これガチのやつかよ?やば……。天使とかドッキリかなんかだと……」
「手のかかりすぎでしょドッキリなら」
「……確かに」
年下に論破されたユイ。
愚かすぎる。
「……ま、それはそうとして…。さっきの堕天使も撒けるとは言ったけど、そんなすぐ帰って来れないだろうし、先輩は権能を使えない。どう考えても詰みだけど」
「…………権能行使!!」
権能を使えないと思い込んでいたシノはユイが放った一言が予想外だった。
「えっ!?」
カルテットがいきなり高速で飛べるようになったのは、人間を抱えてないからです。
一般的に人間より天使が頑丈なので、人間が、それも怪我を負った人間が耐えれるギリギリの速さで飛んでいました。
それはカルテットからすれば歩くようなものだったのでしょう。




