指名手配
「よし、契約完了!」
そう言ったカルテットは翼で抱えていたユイを離す。
「な、なんか変わったのか?」
「んー?あ、契約したばかりだから瞳に紋章出てるけど数分くらいで消えるから安心して」
「……もうこの際だから教えてくれよ。契約と権能について」
「仕方ないなあ――――――――。
――――ってことだよ。分かった?」
カルテット曰く、権能とは人の理の外の力。つまり漫画やアニメで出てくる異能力、と呼ばれるものだという。
天使それぞれに固有の権能がある他、共有権能と呼ばれる翼、天界と地上界を繋ぐ扉……など、天使全員が使えるものもあるらしい。
基本的にはその権能を使って天界での悪事を働く天使を捕獲したり、人助けをしたりと、かなり万能。
そんななんでも出来る権能だが、神が許可しない限りは人間界での使用は不可能のようだ。
そんな欠点を解消するのが契約。
契約することによって契約者である人間は契約した天使の権能を使えるようになる。
地上界の任務のために、人間と契約し、協力してもらう天使が少なからずいるのだとか。
「んで、天界では今私は指名手配犯。堕天したのに自我を持ってるからね」
「ん?まてまて、堕天したら普通は自我が無くなるのか?」
何事もないかのように話し始めるカルテットに聞くユイ。そんなユイに伝え忘れてたっけ、とでも言いたげな表情の彼女が言う。
「そうだよ。基本的には見た目も化け物……まあ個人差はあるけど、そんなふうに変わって自我が無くなる。だから魔界送りか殺すことになってるんだよね」
「ふーん……じゃあカルテットって凄いってことか?」
「んー、凄いかはわかんないけど前例はほぼないらしい。だから捕まれば研究対象にはされるだろうし、堕天権能も珍しいらしいからね……」
悲しげな顔をしたカルテットにはこれ以上尋ねることが出来なかったユイ。
「あ、そうだ、飯でも食いに行くか。カルテット」
「見つかったらどうするの?バカ?」
「あ確かに。どうすれば?あと一言多い」
「えぇ……ま、まあ戦ってもらうしかないね」
それを聞いたユイは声も出ないような驚き方をする。
それもそうだ。喧嘩はおろか、口論でさえ人としない、面倒事は避けて生きてきたユイが戦う、それも異能力を使って。
そんなことできるわけが無い。
「……まじでどうす……え?」
どうすれば、と焦っているユイの耳に、普段はならないインターホンの音が聞こえた。わざわざ家に尋ねる人間もいないユイにとって、久しぶりに聞いた音だった。
そんなユイがカルテットと共にインターホンを確認する。
「ん?誰だ?」
「ま……やば…………やばい、やばいやばい」
明らかに怯える、焦っているカルテットにユイが尋ねると、返ってきた返事は予想外のものだった。
「……契約者だよ、こいつ」
契約した時に紋章を刻んだ部位は、権能使用時に浮かび上がります。
瞳でも、手の甲でも、背中でも。
もちろん契約者によって紋章を刻む位置は違うので人によって場所はまちまち。




