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転生先「ラダ村」にて

目が覚めると目の前には大きな顔が二つ俺を覗き込んでいた。


「ああ、無事に産まれてよかったわ」


一つは若い女性。


出産直後なのだろう、真っ赤な顔は汗でびっしょりと濡れ、少しウェーブのかかった赤い髪が一部顔に張り付いている。


「ああ、頑張ったな」


もう一つは男性。


若干日に焼けたイケメン。ショートのくすんだ金髪。

体格は普通だが筋肉がしっかりついた腕が伸びてきて俺の頬をざらついた手が撫でる。


(この二人が俺の今世の両親かな)


「アイシャ、よく頑張ったな、ありがとう」


そう言って俺を撫でていた手とは反対の手で母『アイシャ』を撫でる。


「ルフト…」


父の名は『ルフト』というらしい。


「名前は決まったの?」


アイシャがルフトに尋ねる。


「ああ、この子の名前は『アルフレッド』だ」


「そう、アルフレッド…愛称は『アルフ』ね」


どうやら俺の名前は『アルフレッド』らしい。

これから俺『アルフレッド』としての新たな人生が始まるんだ。

そう思ったら俺の意識は遠くなっていった。


「寝ちゃったわね」


寝息を立てる我が子を見ながらアイシャがつぶやく。


「ああ、疲れたんだろう、アイシャも休んだ方がいい」


アイシャを気遣いそっとアルフを抱きかかえベッドの横にある赤子用のベッドにアルフを寝かせるルフト。


「ええ、少し寝るわ」


「ああ、おやすみ」


ルフトが優しくアイシャの顔の汗を布で拭くとアイシャは目を閉じ眠りについた。


「さて忙しくなるぞ」


そうつぶやきルフトは静かに部屋を出て行った。


そこは辺境の村「ラダ村」。

村の正門から先は緩やかに下っていくように草原が広がり、裏門から少し歩くと鬱蒼と茂る森とその奥に「ガスト山脈」がその頂上を雲で覆い隠して聳え立っていた。

森の中から村の近くを通って小さな小川が流れその先に大きな川が左右に伸びている。


村の人口は49人だったが、今日アルフが生まれた事により50人の節目を迎えたのだ。

祝いの宴の準備が村人総出で準備されている姿に自然とルフトは笑みを浮かべ自分も準備の輪に加わるのだった。


あくる日の朝、アイシャの体調を確認しにルフトが部屋に入ってきた。


「アイシャ、おはよう、体調はどうだい?」


「おはようルフト、よく寝れたから大丈夫よ」


そう言って起き上がりベッドの淵に腰かけるとまだ寝ているアルフの顔を優しく撫でた。


「よく寝ているわね」


「ああ、一度も夜泣きしなかったな」


そう言ってルフトもアルフの顔を覗き込む。


「もうすぐ宴が始まる、立てそうかい?」


「ええ、なんとか」


ルフトに支えられながらアイシャは立ち上がると優しくアルフを抱きかかえた。

そしてようやくアルフの目が覚める。


(ん…朝か…)


覚醒したアルフは目の前に母アイシャの顔があるのを確認すると眼だけを動かしキョロキョロと周囲を確認し始めた。


(んー…明かりは蝋燭かな?照明のようなものはないな)


見回しながらこの世界の文明レベルを確認していく。


「周りが気になっているみたいね」


微笑みながらアイシャがアルフの体をうまく傾け周りが見えやすいようにする。


(おお…助かる~、首が座ってないから困ってたんだ)


「ははは、ずいぶんと好奇心旺盛な子みたいだな」


笑いながらルフトがアルフの頬を撫でる。


(身にまとってる服の感じからして中世くらいかな?)


二人が身にまとっている服は少しゴワゴワしていて麻のようなもので出来ているようだった。

綿で出来た服ならばもう少しサラサラしているだろう。

この世界にも綿があるかはまだ分からないから何とも言えないが。


(部屋の中の作りはお世辞にも綺麗とは言えないし壁材の表面はザラザラっぽいから木材の加工技術もあんまりなさそうだな)


「外でみんなが待っている、そろそろ行こうか」


ルフトに支えられアイシャが部屋を出ようとする。


「ええ、みんなにアルフを見てもらわなきゃね」


部屋の外に出るとそこにはテーブルとイスがあり部屋の端には土で出来たかまどがあった。


(う~ん…やっぱり中世くらいっぽいな、かまどが土って事は石材加工も進んでないのか?)


テーブルを挟んでかまどの反対側の壁際には土で出来た暖炉があり何かの動物の敷物が敷かれていた。


(暖炉も土って事は確定か?いや~、クラフトし甲斐がありそうだなぁ!)


アルフはこれから自分が手を加えていけそうな物の多さにテンションを上げていた。

自分の周りの技術が低ければ低いほど自分の【スキル】が役に立つ。

そんなこれからの自分の生活に思いを馳せているとテーブルを挟んで寝室とは反対の扉をルフトが開いた。

季節は春だろうか、気持ちのいい風が頬を撫でる。


「みんな!僕とアイシャの子で名前は『アルフレッド』だ!」


そう言った途端、周りから歓声が聞こえてくる。


「おお!髪はお前に似た金髪だが顔はアイシャ似だな!」


「ほんと!こりゃ将来美人になるぞ!」


「いやいや!アルフは男だぞ!?」


「う~ん、どんな子になるやら…」


「ね~僕たちにもよく見せて~!」


「ちっちゃいね~!」


「あらあら、かわいいねぇ」


「めでてぇ、めでてぇ!よっしゃ酒もってこい!」


「あんたは酒飲みたいだけだろ!まったく…!」


「まぁまぁ、こんなことでもないと酒なんてあんまり飲めないんだし」


一部ただの飲兵衛のような声も聞こえたが大半は祝福の歓声のようでアルフもうまくやっていけそうで安心した。

そして、村の中央にある広場に到着するとそこには白髪混じりの茶髪に口髭を生やした壮年の男が待っていた。


「それではこれより生誕の儀を行う」


優しくでもどこか威厳のある声が響くと周りで騒いでいた声が消えた。


「ここラダ村に新たな子が産まれた、名を『アルフレッド』、我々は其方の成長を見守ろう、そして其方は我々の成長を見守ってくれ」


ワーッ!と周りから拍手が舞う。


こうして俺はこの村「ラダ村」の一員として迎えられた。

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