転生先「ラダ村」にて14
1人になったアルフは空き地に〈テーブル〉と〈長椅子〉を設置していく。
次に【クラフト】に〈ガミのトング〉を追加して40個作成する。
〈ガミのトング〉x10=ガミx1
〈バーベキュー台〉の火がいい具合になってきた頃、大皿や鍋を抱えた村人たちが集まってきた。
現在、村人は60名となっている。
釣りが出来るようになって食糧事情が良くなった為だ。
ほとんどはまだ生まれて間もない赤ちゃんなので母親に抱かれている。
程なく村の全員が集まり村長が口を開く。
「今日はアルフ、ダニー、ミミリーの3人が〈大ナギラ〉を釣り上げそれを皆に振舞ってくれるそうだ」
『おお!』
「3人に感謝を」
そう言って村長含む村人全員に感謝の礼をされたアルフ達3人は照れながらもどこか誇らしい顔をしていた。
「それでは始めよう」
その言葉と共に村人達が動き出す。
アルフは手隙の村の女性達に〈トング〉を渡し、使い方を説明しながら〈バーベキュー台〉の網に〈大ナギラの切り身〉を置いていく。
乳幼児を除いて1人1切れ分を置き終えたら余ったスペースには各自が持ち寄った野菜が置かれていく。
そうこうしている内に皆に〈ガミのコップ〉が渡される。
子供は〈ヒルクの実〉のジュース、大人は行商人から仕入れた〈酒〉だ。
「皆に行き渡ったかな?それでは、今日の糧に、乾杯」
『乾杯!』
村長の宣言によりバーベキュー大会が始まった。
アルフは始まってすぐ〈バーベキュー台〉の前に〈大ナギラの切り身〉の焼き色を確認する。
ジューと燃える炭に脂が落ちる音がして辺りに香ばしい匂いを撒き散らし始めていた。
「これは美味そうだねえ」
「ほんとねー」
「ますますお腹が減ってきちゃうわ~」
そんな声があちこちから聞こえ始める。
何度か〈鉄串〉を持ってひっくり返しこんがり狐色になるまで焼いた。
ようやく〈大ナギラの白焼き〉の完成だ。
「そろそろいいと思います」
「そうかい?」
「やっと食べれるわ~」
そう言ってそれぞれの〈バーベキュー台〉から皿に次々と移されていく。
アルフはダニーとミミリーの分も焼き上げ〈テーブル〉で待つ2人の元へ向かう。
隣ではレニーが夫アグトとアルフの両親ルフトとアイシャの分を焼き上げていた。
みんなの皿に〈鉄串〉を抜いて〈白焼き〉を配る。
「やっと食えるな!我慢してたんだ!」
「お腹ぺこぺこだよ~!」
「おう!匂いがたまらんな!」
「そうさね、焼いてる間に何度か食べそうになったよ」
「ははは、ありがとう、レニー」
「ふふふ、レニー、ありがとう」
「あはは、お待たせ!じゃあ食べよう」
アルフは作っておいた〈ガミの箸〉で身を摘む。
村では〈箸〉も使われていたがみんながみんな使えるわけではない。
基本的に料理ができる物が使う調理道具として使われていた。
そうした事情でアルフが〈箸〉を使っても誰も気にしない。
閑話休題
摘んだ身は柔らかくフワフワしているが持ち上げてみるとずっしりしている。
皮はパリッとしており簡単に切り離せた。
熱そうなのでフーっと息を軽く吹きかけ、口に運ぶ。
口に入れた途端、口の中が脂の甘みと皮の香ばしい香りに支配される。
泥臭さは一切ない。
下味も付けずに焼いたはずなのに脂の旨味だけで十分に美味であった。
味を堪能していると口の中であっという間に溶けて無くなってしまった。
(うんま!味付けしてないのにこれか!これで醤油があったらどんだけ美味くなるんだ?)
蒲焼にしたらどれほどの味になるのかと考え込んでいると辺りが静かなことに気づく。
周りを見渡すと誰も彼もが固まっていた。
アルフは隣で同じように固まっているミミリーの肩を軽く叩く。
「ミミリー?大丈夫?」
ビクンと体を震わせてミミリーがすごい勢いでアルフに顔を向ける。
「アルフ!これすっごいおいしい!」
「僕もびっくりした、美味しく出来てよかったよ」
「ハッ!美味すぎて息し忘れてた…なんだこれ?!めちゃくちゃうめぇ!」
ダニーも復活したようでその声を皮切りに辺りが騒がしくなる。
「なんだこれ?!うますぎだろう?!」
「ああ?!もっと味わっていたいのに口の中で溶けちまったよ!」
「こいつは正にご馳走だな…」
「ええ!口の中が幸せだわ」
3人の両親も口々に感想を漏らしていく。
「俺たちでも獲れるかな?」
「ダニーの話じゃ川魚の内臓で釣れたらしいぞ?」
「おお!餌は使わない内臓でいいなら困らないな!」
「明日早速試してみよう!」
周りではそんなやり取りが聞こえ始めた。
残った切り身の量が村人全員分は無かったので残りは【格納空間】に保管して釣った3人で楽しむ事にする。
その後は持ち寄ってきた野菜や肉や魚を焼いては食べてバーベキューを楽しむ。
存分に食事を楽しんだ所で村長が宴の終わりを告げる。
村人総出で片付けが始まりあっという間に終わる。
別れ際にアルフが村人達に仕掛けを作って渡すと村人みんなから改めてお礼を言われ、それぞれの家に帰っていった。
最後にアルフは村長に話しかける。
「村長、村で育てたい作物について明日相談させて下さい」
「分かった、昼頃に来なさい」
「分かりました」
「今日は美味しい食事をありがとう」
「はい!」
(朝起きたらパンを焼いておこう)
村長と別れたアルフは明日の予定を立てながら満足気な顔の両親と共に自宅へと向かう。
こうして初めてのバーベキュー大会は大成功の内に幕を閉じた。




