転生先「ラダ村」にて12
〈レンガ〉を大量生産した翌朝、朝食を終えたアルフは村長宅へとやってきていた。
その目的は大河に〈砂鉄〉らしき物があるのか、子供でも作業できそうな場所があるのかだ。
「ふむ、その〈砂鉄〉というのは分からんが、確か小川の河口付近は浅くなっていていたはずだ、恐らく土砂が溜まっているせいだろう」
「そうですか、ありがとうございます!」
「うむ、気をつけて行ってくるのだぞ」
「はい!」
小川の流れは河口付近でだいぶ遅くなっているようで大河の川底を削る程の流れにはなっていないようだ。
土砂が溜まっていれば〈砂鉄〉も取れそうだ。
アルフは感謝の礼を取り村長宅を出るとダニーとミミリーを誘いに狩人アグトの家に向かった。
「ダニー、ミミリー、いるー?」
「ん?アルフかい?」
アルフが2人を呼ぶと訪問者を確認しながら女性がドアを開けてくれた。
彼女はアグトの妻でダニーとミミリーの母親のレニーだ。
ブラウスの袖を捲っていて程よく筋肉の付いた二の腕をしているのが分かる。
ミミリーと同じ赤みがかった茶髪の髪を後ろで束ねた、目が少し鋭い勝気な性格の美人な女性だ。
筋肉質なのは獲物の解体の手伝いをするからだろう。
そんなレニーに挨拶をしてアルフは自分の用事を伝える。
「レニーさん、おはようございます、ダニーとミミリーを誘いに来ました」
「おはよう、アルフは早起きだねぇ、ちょうど今さっき起きてきたとこだよ、ほら2人とも顔を洗いに行っといで!」
「「は~い…」」
レニーが目元をこすりながら部屋からのそのそ出てきていた2人に声をかける。
兄妹なだけあって2人の仕草がよく似ていてアルフは思わず笑ってしまった。
「あはは、2人ともおはよう」
「「アルフ、おはよ~…」」
まだ覚醒し切れていない2人はのろのろと外に出てきて家の外に置かれた水瓶の蓋を外し手で水をすくい顔を洗い始めた。
顔を洗ってようやく目が覚めた2人は顔を手拭いで拭きながらアルフに用事を尋ねた。
「こんな朝からどうしたんだよ?」
「どうしたの~?」
「今日は大河まで行って〈素材〉集めをしようかと思ってさ、誘いに来たんだ」
アルフの言葉を聞いた途端に2人は顔を輝かせる。
「「行く!」」
アルフは即答した2人に朝食を取った後に空き地に来るように伝えて一旦別れた。
空き地についたアルフは今日使う予定の道具を予備も含めて作成する。
(〈スコップ〉は昨日のやつを量産してっと、あとは〈ザル〉かな?)
【クラフト】UIを出して前世の竹のような植物〈ガミ〉で出来たザルを思い浮かべる。
〈ガミのザル〉=ガミx1
無事に追加された〈ザル〉を作成し、あとは縦横1m程の〈木の板〉を作成して準備を終える。
ちょうどそこに二つの影が走り寄ってきた。
「アルフ、待たせたな!」
「アルフ、お待たせ~!」
「こっちもちょうど準備が終わったところだよ、早速行こっか!」
「おう!」
「は~い!」
元気よく返事を返してくる2人と共にアルフは大河を目指して村を出発した。
道中アルフは2人に今日の目標を語る。
「今日は〈砂鉄〉が取れないか2人に手伝ってもらおうと思ってるんだ」
「〈砂鉄〉ってなんだ?」
「さてつ?」
「そうだな、〈鉄鉱石〉ていう石が粉々になった砂のことだよ」
「ふ~ん、その〈鉄鉱石〉を取れば良いんじゃ無いのか?」
「ダメなの?」
「村の近くにそれらしい石が無かったんだよね~」
「そっか~、ならしょーがねーな!」
「手伝ってあげる!」
「ありがとう、お昼は魚釣って食べようね!」
「おお!それいいな!」
「わーい!おさかな♪おさかな♪」
こうしておしゃべりしているうちにアルフ達は大河に到着した。
「まずはこの〈スコップ〉で川底の土砂をひっくり返すようにして欲しいんだ」
そう言ってアルフが手本に〈スコップ〉を川底に突き刺し土砂をひっくり返す。
すると水中に舞い上がった土砂の内、比重の軽い砂や土が下流に流されていき、足元には黒色の砂が溜まっていた。
「お?〈砂鉄〉っぽいぞ!、ちょっと【格納空間】に収納してみよう」
そう言ってアルフは黒い砂をひとつまみ程【格納空間】に収納する。
【格納空間】を開くと「NEW」の文字と共に〈砂鉄〉の文字が表示されていた。
「やった!〈砂鉄〉だ!」
「おお!やったな!それをいっぱい集めればいいんだな?」
「おー!アルフ、やったねー!」
「うん!ある程度川底に溜まったらこの〈ザル〉ですくってこっちの〈木の板〉に集めて欲しいんだ」
「おう!任せろ!」
「まっかせてー!」
そうして日が頂点に来る前までアルフ達は〈砂鉄〉の採取を続けた。
「そろそろお昼だから一旦切り上げよう!」
「おう!」
「はーい!」
これまでに取れた〈砂鉄〉を【格納空間】に少しずつ収納し、〈木の板〉の〈砂鉄〉が無くなると3人は魚を釣りに小川を少し遡った。
アルフが3人分の釣竿を出して釣りを始める。
「よし!さっきの場所で焼こう!」
「おっし!魚の下処理は任せろ!」
「うん!おなかすいたー!」
それぞれ2尾ずつ魚を釣って、3人は〈木の板〉を置いた辺りまで戻ってきた。
アルフは〈焚き火〉を【クラフト】して設置し火をつけると【格納空間】から以前焼き魚をした時に作った〈ガミの串〉、〈木のまな板〉、〈石のナイフ〉を取り出した。
ダニーが手際良く魚の腹を開き内臓を取り出すとアルフはそれを受け取り〈ホウキのロープ〉の途中に付けた5cmほどの〈骨の針〉に〈フギの藁〉で巻き付ける。
〈ロープ〉の先にはオモリの〈石〉が括り付けられており、アルフはそれを川へと投げ入れた。
ダニーが魚の下処理をしている間にアルフが設置した罠である。
まず、オモリ側とは逆の〈ロープ〉の端を、取り出した1m程の〈ガミの竿〉に括り付け、〈竿〉の持ち手側を地面に突き刺す。
大河側に〈枝〉を30cm程の間隔を開けて地面に2本差し、その間に向かって〈竿〉の先を曲げていく。
竿先が〈枝〉の間まで来たら竿が戻らないように突き刺した2本の〈枝〉の間にストッパーの〈枝〉を当てる。
この時、ストッパーの〈枝〉を地面から5cmほど開けておく。
最後に、竿先よりも手元側の地面に1本〈枝〉を刺し、そこに竿先の〈ロープ〉をU字に回す。
これで魚がかかりロープが軽く引かれると竿先がさらに曲がりストッパーの〈枝〉が抑えを失い地面に落下、ストッパーがなくなった事で〈竿〉が一気に元の位置まで戻ろうとするのでその勢いで『合わせ』を行う。
『合わせ』とは釣りで魚が針を咥えた際に針を食い込ませる為に行う行為である。
「こうしておけば勝手に魚がかかるはず!まぁ大きい魚がいればだけど」
「おー、罠猟みたいなもんか!」
「そんな感じ」
「おー!かかるといいな~」
そうしている間に魚を〈串〉に刺して【格納空間】から出した〈塩〉をまぶして〈焚き火〉の周りに刺していく。
パチパチと魚の表面が焼ける音と共に香ばしい匂いが香り出し食欲を掻き立ててくる。
「あ~、うまそ~な匂い」
「いいにお~い!」
「ほんとにね」
時々火に当たる部分を変えながら5メラほどたった頃、十分に焼けたと判断し、それぞれ1本ずつ手に取る。
もう1本ずつは一旦アルフの【格納空間】に収納し、後に取っておく。
【格納空間】内であれば熱々焼きたての状態で保管でき、食べている間に焼き過ぎることもない。
そして3人が一斉に焼き魚に齧り付く。
「うんめー!やっぱ釣れたて焼きたてが最高だな!」
「はふはふ、おいしー!」
「だねー、全然泥臭くもないし、水が綺麗だからかな?」
「かもな!」
「はふはふ」
アルフとダニーが話しながら食べている横でミミリーは感想もそこそこに一心不乱に食べている。
焼き魚を堪能して3人川の字に仰向けに寝転がって食休みしていた時だった。
バシンッ!という音と共に〈竿〉が戻った。
何かが罠に掛かったようだ。
〈ロープ〉が引っ張られ〈竿〉がしなっている。
アルフは慌てて〈ロープ〉を両手で掴み引っ張るが、びくともせず逆に川に引っ張られる。
「重過ぎる!」
「任せろ!ミミリーも手伝え!」
「うん!」
ダニーとミミリーが遅れて〈ロープ〉を掴み3人がかりで引っ張る。
3人の力の方が若干強く徐々に岸に向かって掛かった獲物が近づいてくる。
10メラほどかかりようやく岸に打ち上げられたそれは、体長2mほどのうなぎのような魚であった。
「「「やったー!」」」
「でっけー!」
「すっごーい!」
「これはうまそうなのが釣れたぞ!」
3人は予期せぬ大物に大いに沸いた。
ダニーに素早く締めてもらい血抜きをする。
触るとヌルヌルしていたので3人がかりで〈塩〉を使ってヌメリを取る。
【格納空間】に入れてみると〈大ナギラ〉と表示された。
見た目はうなぎそっくりだったのでアルフが帰ったら村のみんなで白焼きにして食べようと決めてもう一度休憩を取る事にした。
釣って処理してと合わせて1テラほどの時間がかかったので3人ともクタクタであった。
〈焚き火〉前に並び処理中に濡れた体を乾かしながら残していた焼き魚を食べる。
30メラほど一眠りして3人は再び動き出す。
「さて、もうちょっと〈砂鉄〉を取ったら今日は早めに帰ろう!」
「「さんせー!」」
その後2テラ程〈砂鉄〉を取り、日が沈む前に3人は村に帰還した。
こうして初めての〈砂鉄〉取りは予想外の大物ゲットと共に幕を閉じた。




