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転生先「ラダ村」にて9

村長の許可を得てまず取り掛かったのは言うまでもない。

〈小さな木のハンマー〉の制作である。

それはなぜか、〈ハンマー〉でしか出来ない事があったからである。


(さてさて、さっそく【クラフト】っと)


【クラフト】のUIに表示されていた〈小さな木のハンマー〉のアイコンに触れ、生産数を1個に設定する。

次の瞬間には〈小さな木のハンマー〉が【格納空間(インベントリ)】内に「NEW」の文字と共に現れた。

ハンマーアイコンに触れながら自分の掌に取り出してみると長さ30cm程の木のハンマーが現れる。


(やっぱりね、だと思ったんだ)


アルフはわざと【クラフト】のUIを消さずに〈小さな木のハンマー〉を手にするようにした。

その理由は手にしている〈アイテム〉によってクラフト可能な項目が増えるんじゃないかと思っていたからだ。

そしてその推察は正しかった。

【クラフト】のUIには先ほどまでは無かったクラフターお馴染みの〈施設〉が増えていたからだ。


〈木の板〉=木材x1

〈簡易的な作業台〉=木材x20


(まずはこれを作らなきゃ始まらないだろ!)


アルフはさっそく村長に木材を融通してもらいすぐさま【クラフト】した。

自宅の居間に設置しようとしてある事に気づく。


(う~ん、狭い)


この世界の一般的な村人の家はあまり広くない。

寝室の端から端まで5mほどしかないが居間もその程度しかないのだ。

その居間にはかまどやテーブルなどがあるためこれ以上家に物を増やすと動線の確保が困難になる。


(ひとまず外に置こう)


アルフは様子を見守る母アイシャに声をかける。


「家の中に出すにはちょっと大きいから外に出すね」


「そんなに大きいの?」


「うん、邪魔になるくらい」


「そう、なら外に出ましょうか」


そして改めて外に出て村の空き地に向かった。

途中で狩人アグトの子供ダニーとミミリーが気になってついてきた。


「アルフ、なにするんだ?」


「なにするのー?」


「空き地にちょっとね」


そう言ってごまかしていると空き地に到着した。

広さは10平方mほどあるので十分だ。


「じゃあ出すね」


「ええ、お願いね」


「?」


「?」


アイシャは何をするか分かっていたがダニーとミミリーは何を出すのかさっぱり分からず首をかしげていた。

そして次の瞬間アルフの目の前に〈簡易的な作業台〉が出現した。


「おわ?!」


「わー!なにそれー?どうやったのー?」


ダニーは驚き、ミミリーは驚きよりも好奇心が勝っていたのかアルフ話しかけてきた。


「【クラフト】って【スキル】が使えるようになったんだ、それで作った〈作業台〉だよ」


「【スキル】ってなーに?」


当然の質問だった。大人なら知っているがまだ5歳に満たないミミリーは初耳だった。


「特別な力?かな、ミミリーもいつか使えるようになるさ」


「ふーん」


アルフは説明しながらミミリーの頭を撫でる。

1から10まで説明しても今のミミリーには理解出来ないと思っておおざっぱに説明した。


「これが【スキル】かぁ、父ちゃんが【気配察知】ってスキルを持ってるらしいけど聞いてもよく分からなかったんだよなぁ」


「アグトさんは【気配察知】が使えるのか、狩人にはピッタリの【スキル】だね」


「そうなのか?」


ダニーとのやり取りで何の気なしに言った台詞にアイシャが目ざとく反応する。


「アルフ、【気配察知】がどんな【スキル】か分かるの?」


(やべ!?)


「いや名前を聞いて周りの人とか動物の気配が分かりやすくなる【スキル】なんじゃないかと思っただけだよ」


「…そうなの…」


「へー、確かに父ちゃんがそんな事言ってたような気がするな、なんか分かるんだよって言ってて俺にはよく分かんなかったんだ」


あたふたしながら答えるアルフを見ながらアイシャはひとまず納得した。


(あぶねー、【気配察知】とか前世でもメジャーな【スキル】だったからつい口から出てたわ)


そんなやり取りをしている間にミミリーは〈作業台〉を触りしながらアルフに問いかけた。


「アルフー、これってただのテーブルじゃないのー?」


ミミリーの疑問は当然だった。

見た目は普通のテーブルだからだ。

〈簡易的な〉とつくように今回作った〈作業台〉はテーブルの淵に2段ある棚が設置されている以外はどこにでもありそうなシンプルな見た目をしていた。


「ちょっと待ってね」


そう言ってアルフは【クラフト】のUIを表示させながら〈作業台〉に触れる。

すると【クラフト】可能なリストに新たなアイテムが増えた。


〈木の弓〉=木材x2+ロープx1

〈木の矢〉=木の枝x1+羽x2


「弓と矢が作れるようになったよ」


「ゆみとや?」


「なんだ?それ?」


「弓と矢ね…作ってみてくれる?」


「うん」


そう言ってアルフは弓を1張りと矢を20本【クラフト】で作成した。

〈羽〉は以前ミミリーが父アグトが森で取って来た〈ヤズ〉という野鳥の羽を触って気持ちよかったのを知ってアルフにおすそ分けしてくれていた。

アルフは出来た弓と矢を1本【格納空間(インベントリ)】から取り出してアイシャに渡す。

受け取ったアイシャは作成速度に驚きつつ弓と矢を観察する。


「やっぱりすぐ出来ちゃうのね、それでこれが弓と矢ね、どうやって使うの?」


「片手で弓の中央を持って矢のこっち側を(つる)、弦って言うのは張られているロープの事なんだけどそれに引っかけて弦を引っ張るんだ」


アルフは別の矢を取り出して指をさして説明しながら弓を引く動作を真似る。

まず足を肩幅に開き、両手を下に伸ばして体の真ん中に構える。

矢を弓に番えるような動作をした後、弓と矢を下から持ち上げるように頭の上に持ち上げる。

そうして弓を持つ左腕をピンと伸ばした状態で今度は弓を放つ方向に円を描くように弓をおろしてく。

弦を握った右手が顔の真横を維持するように弓をおろしていき、左腕が水平になったら右手は顎先に固定し態勢を維持する。


「それで充分に引っ張ったら弦を離して矢を飛ばすんだよ」


右手を開いて弦を離す仕草をするとアイシャは何となく理解し説明された通りに弓に矢を番え始めた。

弓を左手に握り、右手で弦に矢の番える。

矢には矢筈(やはず)という弦を挟む部分がありそこに弦を挟んで引っかける。

弓を引こうとするアイシャにアルフは補足する。


「弦を引っぱる時に矢をこの指とこの指で挟み込むようにしながら引くと引きやすいよ」


アルフは中指と薬指を指さしながら説明する。

アルフの説明を聞いてアイシャは今度こそ弓を引く。

初めて弓を引くとは思えない綺麗な姿勢で弓が引かれる。


「矢を離す時に弓の握り込みを少し緩めると真っ直ぐ飛ばせるはずだよ」


アルフの助言を横目で聞きながらアイシャは視線を20mほど先の村の柵の支柱に移す。

柵の支柱は太さ30cmほどの丸太だ。

そうして十分に引き絞った後、支柱に向かって矢は放たれた。

バシュという音と共に放たれた矢は、真っ直ぐ飛んでいきトンという軽い音を立てて見事支柱に命中し突き立った。


(いやいやいいや、マジで母さん【弓術】の【スキル】持ってるんじゃないの?)


アルフがそう思いながらアイシャを見ると驚き半分、喜び半分といった顔をしていた。

声をかけようとして遅れて上がったダニーとミミリーの歓声に阻まれた。


「おおおおおおお?!すげえええええ!アイシャさんすげえええええええ!」


「すっごーい!すごいすごい!アタシもやってみたい!」


大興奮である。

その歓声を聞きつけてやって来た村人に4人は取り囲まれた。


「なんだなんだ?どうしたってんだ?」

「ダニーもミミリーもどうしたの?」

「アイシャ、それは何?何を持ってるの?」

「枝にロープ?何だ?」


そんな質問を投げかけられてアイシャもあわあわと慌てだす。

そんな事に構わず興奮冷めやらぬ様子のダニーが説明し始めた。


「これはアルフが作った弓っていうんだぜ!すげーんだぜ!ここからあそこの柵に矢ってやつを飛ばしたんだ!」


「すごかったんだから!バシュッ、ヒュン、トス!だったんだから!」


ミミリーは擬音で説明し始めていた。

それを聞いた村人は何のことやらさっぱりだ。

首を傾げながら村人に顔を向けられるアイシャにアルフは【格納空間(インベントリ)】からもう1本矢を取り出しながら告げる。


「母さん、もう1回お願い」


「そうね、見てもらった方が早いわよね」


苦笑いを浮かべながら矢を受け取り、アイシャはもう一度先ほどの支柱に向かって弓を引く。

その様子を黙って見る村人たちの前でアイシャは少しも緊張した様子を見せずに先ほどと同じよう矢を放つ。

またしても矢は見事に支柱に突き立った。

それを見た村人たちは驚愕する。


「な、な!?」

「すご!?」

「いやいやなにそれなにそれ!?」

「はぁ!?」


興奮する村人たちにアイシャは説明した。

我が子アルフが【スキル】を得た事、この弓と矢はその【スキル】でアルフが作った事を。


「俺にも作ってくれ!」

「アタシにも!」

「アタシも!」

「俺もだ!」


そんな村人たちの前に小さな影が二つ立ちふさがる。


「アタシが最初だからみんなは後で!」


「そうだぜ!俺たちが先だ!」


ミミリーとダニーである。

そんな二人の姿にほっこりしながらアルフは村人たちが集まり始めたのと同時に作成していた〈木の短弓〉を2張り取り出しながらミミリーとダニーに声をかける。


「ミミリー、ダニー、はいこれ」


言われて二人は振り返りアルフが手に持った弓を満面の笑みで受け取った。


「アルフありがとー!」


「やりぃ!アルフあんがとな!」


「矢は10本ずつ渡すね」


そう言って【格納空間(インベントリ)】から10本ずつ〈短矢〉を取り出す姿を見た村人が驚愕している事に気が付いたアイシャが爆弾を投下する。


「アルフはもう一つ【闇】の魔法スキルも持っているのよ」


「「「「は!?」」」」


固まっている村人に構わず【格納空間(インベントリ)】か弓を取り出しつつアルフは告げる。


「じゃあ弓は一人1張りずつ、矢は一人10本ずつ配りますね、あぶないので人に向けて矢を放たないようにお願いしますね」


この日ラダ村に弓を使った狩りが流行り始めたのだった。

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