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拳銃の記憶  ケルテックCP33  作者: かばパパ
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尾行

注意、暴力シーンがあります

 チラシにあった地元の信用金庫の職員を尾行して2週間が過ぎた。


 チラシに似顔絵とSNSサイトの情報まで載っていたので本人確定は半日で終わった。


 外回りに会社のスクーターで出るのでナンバーを控える。


 途中で何度か見失うが、夕方には信金に帰るので焦らない。


 何度か尾行すると、ある特定の家に手土産を持って日参しているのがわかった。


 高さ2メートル程の土壁に囲まれた、武家屋敷の様な屋敷で倉持ち、典型的な地主タイプの家。


 裏の勝手口の壁の高さ、防犯カメラのある無しなど、遠くから何度も観察する。


 防犯カメラ無し、警報装置も無し、夜に観察しても人通りもそんなには無い。


 屋敷の周りは全て、田んぼと畑。

 

 勝手口の前の道路も、土が剥き出しの私道。


 金曜日の夜は居酒屋に寄って帰るのも日課になっている、職場仲間と入るのを確認すると俺も後から店に入った。


 運良く案内されたカウンターの近くで職場の同僚と飲んで居るのを確認した。


 焼き物と烏龍茶を頼むと、耳だけは会話を拾う様に集中する。


「全くあのジジイときたら…金持ってるのに渋いんだよ!」


そう尾行していた男がジョッキの生ビールを飲みながら毒を吐いていた。


「他の銀行も狙ってるらしいですよ、金利が安いから預けるより金貸しの方が儲かるって何処にも預けないらしいですね」


枝豆を食いながら、同僚が相槌を打つと。


「そうなんだよ!絶対二千か三千は持ってるって、部屋にデカい金庫が置いてあった」


 アルコールのせいか舌の滑りが良い、耳を済ませながら金庫のある部屋の情報を記憶する。




 注文した物を片付けて会計を済ませる。


 助手席に置いてあったバックパックの中身を確認してから目的地を目指す。


 屋敷の裏の勝手口の見える場所で真夜中になるまで観察する。


 人が通らなくなって1時間過ぎた頃、軽トラを勝手口に近付けるとエンジンを切って惰性で壁の近くに停める。


 イボ付き軍手を嵌め目出し帽を被ると、静かに軽トラを降りて荷台に上がる。


 そのまま運転席の上に上がると屋敷の庭が見えた。


 月明かりで降りる場所を確認すると、バックパックを背に庭に降りる。


 そのまま母屋に向かうと台所からゴミを出すための扉あった。


 玄関の鍵などは立派な物が多い中、裏のドアなどは昔の錠前のままが多い。


 この屋敷も思った通り、何十年も前のシリンダー錠が付いている。


 伊達は古いミシンの部品などから自作したピンを取り出すと、数分でロックが解けた。


 そっと中に入ると予想通り台所だ、まずはシンクの下の扉を開けると、包丁が並んで収まっている。


 柳刃の包丁を取り出すと左手に握る、ズシリとした重さを感じる、あと布巾(ふきん)も拝借する。


 情報通り、床の間の金庫の前で布団を敷いて老人が寝ていた、警報装置も警備員も雇わず自前で文字通りの自宅警備状態に思わず頬が緩む。


 布団の上からマウントを取ると右手で拳を作って老人の左側の頬を殴る。


 鈍い音がして相手が動くが布団の上からマウントを取っているので芋虫の様にもがくだけの口の中に布巾(ふきん)を突っ込むと。


「騒ぐと…殺す」


 そう言って柳刃包丁で浅く頬に当てると、暴れて頬が切れる。


 仕方が無いのでもう1発殴ってから、目の前に包丁を突き出した。


「目か耳か?どっちが良い」


 そう言うと恐怖に震え出したのかガクガクと震え出す。


 「金庫を開けろ…」


 そう言うと震えながら、コッチを睨み付けて。


「い、嫌だ!」


 そう言った瞬間、耳たぶを柳刃で突き刺した。


 口の中の布巾(ふきん)に遮られながらも悲鳴を上げる老人に。


「開けんのなら…役立たずの指を落とす」


 そう言って布団から老人の右手を出すと、まずは柳刃の背で何度も殴り付ける。


 

 痛みの為に涙目になる老人、鼻からも鼻水が滴り落ちる。


 俺は左足の膝を使って痛め付けた右手を固定すると、柳刃を小指に当てた。


 当てた瞬間、老人は泣きながら。


「開ける!開けるから…止めてください」




 床の間にあった金庫は大型だった、高さは1メートル以上、古いタイプのダイヤル錠と鍵との連動式で、右手が使えない老人は慣れない左手で開けるのに手間取っていた。


 やがてガチャリと音がして扉が開いたその瞬間、老人は左手を金庫の中に入れると、中から銀色に光るリボルバーを取り出して俺に向けた。

 


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