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拳銃の記憶  ケルテックCP33  作者: かばパパ
6/29

試射

お待たせしました

 日本の狩猟期は11月15日から始まる。


 伊達は大阪と和歌山の県境にある県道をひた走る。


 ほぼ林道と言っていい県道は乗用車でも対向は難しいため、ほぼ車の姿も無かった。


 植林を伐採する為に切り開いた道路は、土が剥き出しで砂利も多い。


 乗っている軽トラはマニュアルミッションの4WDタイプで、後輪もダブルタイヤ、左右に2本ずつ付いている。


 土方だった親父の軽トラはその他にもダンプ機能など、軽トラにしては贅沢な装備をしている。


 助手席の上に拳銃の入った、布製の鞄を置いた伊達は、試射する場所を物色していた。


 やがて道は行き止まりになり、伐採した後の丸太がそのまま置いてある。


 伊達は奥に隠れる様に軽トラを駐車すると、鞄を持って降りる。


 丸太から20メートル離れると鞄からP17を取り出す。


 消音装置(サイレンサー)の付いた拳銃(ハンドガン)を右手に持つと、左手をグリップの底にあるマガジンリリースボタンに添える。


 弾倉(マガジン)を取り出すと透明なプラスチックの中で22LRが2列に並んでいる。


 弾倉(マガジン)を装填してスライドを引いて離す、カチャリと乾いた音がして薬室(チェンバー)に弾が装填された。


 右手の人差し指をトリガーガードに添える様に構えると、狙いを付けて2度トリガーを絞る。


 小さく乾いた音がして、22LR弾は丸太に吸い込まれた。反動らしい反動も無い、ブレも無い、電動エアガン並みのリコイル。


 そして当たった場所の丸太の皮が爆ぜた!


 ダムダム弾に改良した弾は丸太の中でヒトデの様に開くと、そのエネルギーを解放する。


 時間を置いて2度ずつトリガーを絞る。ここで調子に乗って連射すれば、薬室(チェンバー)に弾を入れても合計3発しか撃てない日本国内の銃とは違うと音でバレる。


 いち弾倉(マガジン)16発を撃ち終えると、今度は鞄から別の銃を出した。


 CP 33にストック、消音器(しょうおんき)、ダットサイトを装備した銃は、見た目だけは短機関銃にも見えるが、連射は出来ない単射オンリーだ。


 しかしマガジンはロングマガジンを装着しており、その弾数は50発。銃撃戦ともなれば心強い。


 そしてオープンサイト、映画やドラマなどでよく見られる銃に付いている基本装備、フロントサイトとリアサイトを重ねる様に見て狙うのとは違い、ダットサイトは光学照準器であり、覗いた一点で狙いを付ける。


 多数に対する標的にはこちらの方が操作はしやすい。


 射撃場で行う趣味の射撃ならば時間も余裕もある、しかし命のやり取りをする場面では、コンマ数秒…この差が明暗を分ける。


 左右に細かく移動しながら標的を狙って撃つ。同じ場所に集まるまで根気よく移動しながらの射撃でクタクタになる。


 全てが終わって大阪の実家に帰ったら、ポストに宣伝チラシが入っていた。


『証券、株券に興味のある方、ご連絡下さい』


 ゴミ箱に捨てようとした手が止まる。


 そろそろ失業保険も切れる頃合いだ。


 俺は新しい獲物を見つけた。

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