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拳銃の記憶  ケルテックCP33  作者: かばパパ
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帳場

 群馬県射撃場実弾強奪事件。


 そのセンセーショナルなニュースは日本全国を駆け巡った。


 日本初のこの凶悪事件は県警はおろか、警視庁からも肝煎りで捜査に全力を掛けるようにと訓示が降りて来ていた。


 群馬県の片田舎にある警察署、本来なら署員数十名のこの警察署に、日本全国から応援の警察官が駆け付けていた。


 二階建ての警察署の前には機動隊のバスが何台も駐車され、普段なら柔道、剣道の稽古の場である道場に、会議で使われる折り畳みテーブルやパイプ椅子、コンビニやスーパーで買い占めた食料品が山と積まれ熱気が渦巻いている。


 会議はまず県警本部長の挨拶から始まると、事件の説明へと進んでいた。


「報告します、昨夜未明、群馬県射撃場内の警備員詰所に男が侵入し、警備員を鈍器で殴り倒したのち、頭を殴って気絶させ弾丸を奪った模様です」


「奪われた弾薬は22口径拳銃弾、22LRと呼ばれる弾薬で五千発用意されておりました」


「警備員の話によると、犯人は男性、身長170センチ前後、体重80キロ以上のガッチリした体格、口に物を含んだくぐもった声ながらコントネーションはしっかりしており、日本人と見られる模様、なお防犯カメラに録画された情報とも一致しております」


「犯人は警備員の1人を頭を殴って気絶させた後、手足をプラスチック製の簡易手錠で拘束し外の植え込みに放置しておりました。またもう1人は警備員詰所に同じく頭を殴って気絶させ、同じ様に拘束しております」


「警備員の怪我の状態から推測される凶器は、ブラックジャック状の物だと予測されております」


「犯人の使用した移動手段は、恐らく車だと思われますが、車種などは判明しておりません。現在Nシステムで犯行時刻に現場付近の車両を確認作業中であります」


「鑑識から報告ですが、犯人が使用した簡易手錠はタイラップと呼ばれる物で全国展開しているホームセンターの商品でありますが、何処の地域の物かは特定出来ません」


「また、指紋や髪の毛など個人を特定出来る残留物は検出されませんでした」


 そこまで報告が上がると、県警本部長から。


「弾が強奪された…弾だけだ」


 そう発言した後、捜査官達を見回しながら。


「銃だ、銃を探せ、現在登録されているライフル銃、過去に登録していた人物の面取り、眠り銃の確認作業を徹底しろ」


「犯罪が起きる前に探し出せ、一刻を争う!」


 その声を聞いた捜査官達は、一斉に捜査本部を飛び出した。


 それを見送った後、県警本部長は二つ折りの警察用携帯電話から、警視庁に電話を入れる。


「私だ…SAT(特殊急襲部隊)に待機命令を…場合に寄っては出動もありえる」


 県警本部長は米国(アメリカ)でたびたび起きる、市民に対する無差別銃撃事件の日本版を危惧していた。


「五千発……戦争でも始めるつもりか…」





 その頃、伊達は家で弾を加工していた。


 22LRは貫通力は優秀なのだがストッピングパワー、いわゆる着弾した後のインパクトが足りない。


 それと言うのも弾頭は鉛の上にメッキが施してある、これは錆防止と発射した際に銃口内をクリーンに保つ為なのだが、同時に貫通力が高すぎるため人体など柔らかい物は弾が貫通する為殺傷力が低い。


 だがそれを補う方法がある、弾頭の先端に切れ目を入れ、標的の体内で弾を変形させる方法、いわゆるダムダム弾である。


 ダムダム弾、元は狩猟用に開発された弾薬で鉛の弾頭が動物の体内で変形した際に、そのエネルギーが全て標的破壊に使われる。


 射入口から入った後、体内でマッシュルームの様に変形する為、射出口には大穴が空く。


 イギリスなどが植民地で反乱軍に使用したこの弾薬は、1899年ハーグ条約により禁止された。


 しかし現在、法律なんて糞食らえ状態の伊達には関係は無い。


 22LRの弾頭部分に電気工事などで使われるカッターナイフを当てる。


 このカッターナイフは歯が折れる事は無い、折り目が無い一枚の薄い刃物で、弾の先端に放射状の切り込みを入れる。


 漢字の米の字、*の切り込みを千発の弾に次々と入れていく。



 来月から狩猟シーズンが始まる、平日の山の中に入って試射しても、鳥撃ちと思われるだろうと考えながら、全ての弾に切り込みを入れていった。



次こそ試射します


スンマセン

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