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拳銃の記憶  ケルテックCP33  作者: かばパパ
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遊佐

ユサの回想回です

 あれから10年が経った。


 今でも思い出す、あの忘れられない日々を。


 

 お爺ちゃん(ローロ)に会えた。


 

 あの日々を、私は……忘れない。






 突然、お母さんが日本に行くと言った時、悪い予感しかしなかった。


 話を聞くと、お父さんに会うと聞いて、ますます悪い予感は強くなって行く。


 だいたい、お父さんとは言ったものの養育費を一銭も払わずに来た人なのに。



 それがいきなり航空券まで手配して来たなんて怪し過ぎる。



 それでもお母さんが行くなら行くしか無い、半分諦めながらボランティアのシスターと機上の人になった。


 席は真ん中の三列並びを3人で座った、日本までの長い時間を私達3人は、狭い席で思い思いに過ごす。


 何度か目の前を同じ人が通るのが気にかかるが、トイレが近いのか何度も往復していた。


 日本に着くと、奈良の日本キリスト教会のボランティアが車で迎えに来てくれていた。


 初めての海外にワクワクしながら外を見ていると、いつの間にかトラックに挟まれて車を停められた。


 目出し帽を被った男達が銃を手にトラックから降りると、私達は車からトラックの荷台に移動させられる。


 「なんなんだ?あんた達は?」


 そう口に出したボランティアのドライバーが銃で顔を殴られた時、現実がリアルに感じられて目の前が真っ暗になった。


 しばらく移動すると、急にトラックが停車してエンジンが止まった。


 何故か私だけ下された、スモークを貼ったワゴン車に乗り込む時、私を取り返そうとしてお母さんが殴られていた。


 それが、お母さんを見た最後の光景…


 シスターもドライバーもそれ以来見ていない…


 私はマンションの一室に閉じ込められた。


 何も話してはくれない、お風呂とトイレ以外は食事も部屋で、サンドイッチばかりの毎日を過ごして居た日。


 突然襲われた、腹の出たガマガエルの様な男に、そしてその男が父親だと知らされた時…私は初めて……神を呪った。


 ガマガエルは事が済むと、ニヤニヤと笑いながら。


「お前の母親達は海の底だ、そのうちお前も同じ場所に沈めてやる」



 ガマガエルはそう言うと部屋を出て行った。


 それから少しずつ、ガマガエルの目的がわかった。


 私の心臓…娘の心臓を取り出すため。


 航空券を用意した、同じ飛行機に子分を乗せた、こっそりと顔写真を撮り、空港を見張っている仲間にデーターを送ると誘拐のプランを練る。


 早朝の到着にしてトラックで襲わせやすい様にする…全ては計画的な犯行。


 それから何日経ったんだろう、いつもの様に部屋に入って来た男が服を脱いでいる途中に物音が聞こえた。


 バスっ!バスっ!


 2回ずつくぐもった音がする、ドサっと何かが倒れる音、服も着ずに男が部屋から廊下に出るとまた聞こえた。


 そして部屋に目出し帽を被った男が入って来た。


 男は私を見ると。


「ここに残るか、1人で出るか…俺と行くか」


 俺と行くなら40秒で支度しろ、そう言うと部屋を出て行った。


 私は暫く動けなかった、どうするか考えるだけで40秒くらいは経ってたと思う。


 慌てて支度して部屋を出ると、目出し帽の男は机の中を漁って居た。


 嫌、……振りだけだ、何度も同じ引き出しを開けながら。


「行くか?…付いて来い」


 私が現れるとすぐにマンションを後にした。



 わざわざ狭い道ばかり走るので、なんで?っと聞くと。


「警察の目を避けるためだ」


 なんでも(ナンバー)照会システムがあって自動的に車のナンバーを撮影するらしい。

 

 流石に先進国、私の国とは違う。


 暫く、田舎道を走ると一軒の農家に着いた。


 そこで暫く過ごした時間は、私に夢を与えてくれた。


 お爺ちゃん(ローロ)はなんでも教えてくれた。


 食事の作り方も。


 バイクの乗り方も。


 銃の撃ち方も。


 そして一緒に買い物に行った。


 服や化粧品やバッグ…そしてとびきり大きいクマのぬいぐるみ。


 そして農家を襲って来た奴らを返り討ちにしたその日。


 私とお爺ちゃん(ローロ)()()()()()()


 


 あれから…10年が経った…

 お爺ちゃん(ローロ)


 私に自由を与えてくれた人…


 私にチカラを与えてくれた人…



  だから…私……逢いたいよ…



 お爺ちゃん(ローロ)…………



 だから………



  逢いに行っても…良いよね?…



 お爺ちゃん(ローロ)




 


次回は最終回


タイトルは


再会



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