独楽
伊達はフォークリフトで飛び出すと爪を一旦、目線の下まで下げる。
一番高そうなメルセデスAMGの後部座席に山下の姿を確認すると爪を上げてメルセデスAMGのドアガラスに突っ込んだ!
ガシャーン!っとウインドウの割れる音と共に、後部座席にいる山下の悲鳴が聞こえる。
そのまま爪を上げながら前進した、目の前にプロロジの転落防止の為の壁が見える。
車路側はトラックの排気ガスが溜まらない様に、また日中などの彩光利用の為、胸の高さまでの壁があるだけだ、下は一般道路になる。
そしてプロロジはワンフロアがビルの二階程度の高さがある、倉庫として使う為に高さを確保する為だ。
つまりここ、5階はビルなら10階程度の高さがある。
伊達はメルセデスAMGを壁の高さより高く上げて、そのまま外に出した。
メルセデスAMGが10階相当のビルと高さに宙吊りになる、山下が車の中で悲鳴を上げながら。
「やめてくれ!嫌!やめてください」
メルセデスAMGがゆらゆらと揺れるのが解るのだろう、慈悲を乞う悲鳴が聞こえた。
伊達は無言でリフトのマストを前方に傾斜させる、爪が手摺りのコンクリートに乗ったのを確認するとギアを後進に入れた。
ピーッ!ピーッ!っと電子音が鳴る、その音を聞いた山下は伊達の意図を察すると。
「おっ!俺が悪かった!手を引くから」
助けてくれ!っそう言いかけた時、伊達はアクセルを全開にして真っ直ぐに後進する!
爪とコンクリートが擦れて焦げ臭い匂いが辺りに立ち込める。
火花を散らしながら爪の先端がメルセデスAMGから抜けた瞬間、落下が始まった!
「あ!あ!あ!あ!あああああああああ〜!」
山下がそう叫んだ瞬間、山下の心臓がストレスに耐えきれなかった。
突然、心臓が止まると山下が口をパクパクさせながら左の胸を鷲掴みにした。
そして、リフトの爪から抜けた瞬間、メルセデスAMGは横にクルクルと回転しながら下に落下し出した。
まるで独楽の様に。
伊達はリフトを後進させるとギアを低速のまま後から他のヤクザが乗って来た、日産シーマのエンジン部分に突っ込んだ。
リフトの鉛は全てが後輪部分に集まっている、そのためシーマのエンジンに半ばまで突っ込んだ、もちろん再起不能だ、オイルやガソリンが漏れ出した車を一瞥すると伊達はギアを前進に入れた。
その時、下の道路で破壊音が響いた。
独楽の様に横回転したメルセデスAMGは、下の道路に着いた途端に轟音と共にバウンドした!
そしてその時、山下の身体が外に放り出された。
メルセデスAMGの破壊音を聴きながら伊達はスロープに向けてリフトを走らせた。
その時、屋上に向かって居た別働隊が帰って来た、スロープを降りて5階の車路を走るとリフトがこっちに向かって来た!
伊達は爪を目の前の高さまで上げると射線を遮る、右手をポケットに入れると拳銃を取り出した。
リフトとヤクザ達が乗った車が途中で交差する!
その瞬間、伊達は拳銃から6発を次々と発砲した。
その瞬間、伊達は腹部に。
焼け火箸を当てられた様な痛みを感じた!




