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拳銃の記憶  ケルテックCP33  作者: かばパパ
21/29

教会

 大阪にあるゴリの詰める捜査本部に奈良県警から連絡があったのは正午、お昼時であった。


 蕎麦を食っている途中に、奈良で銃撃事件、現場には22LRの空薬莢が発見されていた。


 その数、数十個。


「奴だ!」


 ゴリは上司に掛け合って奈良までパトカーを走らせた。



 事件現場は奈良の山の中、右手に山、左手に渓谷。


 土が剥き出しの林道でガードレールは無い。


 ベンツとスモークを貼ったワゴン車が道の真ん中で衝突していた。


 二台とも穴だらけになっており、まさに蜂の巣と言った状態で。


 その周りを奈良県警の鑑識がローラー作戦で遺留品を探していた。


 地面に這いつくばり、猟犬の様に細部を見逃さないその姿に頭が下がる。



 現場に居た奈良県警の鑑識に、大阪で起きた事件の空薬莢の底のメーカーの刻印を確認してもらうと。


「同じメーカーです、あとこれは確認待ちなんですが」


 弾頭はダムダム弾でライフルマークは無理だが。


「空薬莢のリム痕、つまり薬莢(カート)が排出される時の傷の位置で、同一の拳銃(ハンドガン)から排出された物なのか検査する方法が科学捜査研究所(かそうけん)にあります」


 採取した空薬莢はそこに回す手配をしていると言い、その後に。


「しかし…これ全部するとなると」


 発見された空薬莢は数百に及んだ。


 ゴリは科捜研の研究員に思わず合掌していた。




 和歌山にある個人病院、そこから黒いベンツが大阪に向かっていた。


 後部座席にいる豊和興業の組長、山下はスマホで子分達に指示を出す。


「人数を集めろ、飼ってる半グレ達も直ぐに動ける様にしておけ」


 絶対に逃さねえ!(ガキ)も一緒に居る奴も。




 その頃、伊達とユサは全ての準備を終わらせてからMのマークがトレードマークのハンバーガーショップで食事の真っ最中だった。


 バーガー2つにポテトとジュースのLサイズをペロリと食う伊達を見てユサは笑いながら。


お爺ちゃん(ローロ)よく食べるねぇ」


 ニコニコしながら眺めている。


 伊達は笑いながら。


「ポテトって奴は数本を素手で掴んで食うのが美味いんだよ」


 全てを終わらせた伊達の顔は明るい。


 離婚した嫁に書類袋に現金を詰めて郵便ポストに投函しておいた、切手も多めに貼っておいたから大丈夫だろう。


 中身を見た嫁が卒倒する様を考えるとニヤニヤ笑いが止まらない。


ケルテック製の二丁の拳銃(ハンドガン)は一度に数百発撃ったせいで、銃身が焼けていた。


 指紋を全て拭き取ると、渓谷の下の川に放り投げた、残った弾薬と()()()()()は土に埋めた。


 場所は伊達とユサしか知らない。


 軽トラに私物と現金を少し、それが2人の今の全てだ。


 嫌、一つだけあるとすれば、伊達の腰に差さっている拳銃(ハンドガン)コルトローマン3インチ、それだけが例外だった。


 2人は食事を済ませると、軽トラに乗ってある場所に向かっていた。


 日本キリスト教会 奈良支部。


 孤児院と併設している建物の前に来ると、伊達は軽トラからリサとリサの私物を下ろした。


お爺ちゃん(ローロ)


 リサが涙目で伊達に縋り付くと伊達も優しくリサを抱いて。


「迎えに来る…必ず」


 そう言うと軽トラに乗り込んで大阪に向かった。


 リサはそれを見送っていた。


 長い時間が経って。


 教会のシスターがリサに気が付いて声をかけるまで。


 伊達が去った道の向こうを。


 ただ、見ていた。

 

 

 

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[一言] 迎えに来て〜
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