黄昏
いつもの資料やアドバイスを頂いているTwitterのフォロワー様へ
ありがとうございます
自作の魅力ってなんだろう?
そう思って書いた本編
読んで頂ければ幸いです
米国西部砂漠地帯。
射撃場に22LR弾の乾いた銃声がこだましていた。
射撃コーチがピィーっとホイッスルを吹くと、両手の平を見える様に肩まで上げていたシューターが、素早く腰のホルスターから大振りの拳銃を引き抜く。
ケルテックCP33、22LR弾を33発収納する弾倉から次々と薬室に弾が送り込まれる。
パパパパパンっと軽い反動はほぼブレる事も無く標的紙に穴を開けていく。
「コイツはご機嫌だな!」
撃ち終わると惚れ惚れしながらシューターは拳銃を撫で摩ると、射撃コーチに一杯やらないかとクーラーボックスからバドワイザーの缶を出すとプルトップを押し開けた。
「今まで9パラから45口径まで撃って来たけど…合わなくてねえ」
シューターは日本人男性で何度か渡米歴があり、その度に射撃ツアーなどに参加するのだが、成績は余り良くは無い、射撃コーチもバドワイザーを一口飲むと。
「反動にびびってガク引きしたり、銃口が斜めになってたりしてましたからね、22LRは反動もほぼ無いし撃ちやすいですよ」
もっとも、子供が使う入門編だとは口が裂けても言わないが…大事なお客様なのだチップもかなり弾んでくれている。
シューターは飲んだ後の缶を潰すと、折り合って話があると言い。
「売ってくれないか?コイツとあと欲しい物が何点かあるんだが」
予備マガジンとサイレンサー、ドットサイトなど数点あげると。
「3千ドルでどうだ?現金で払う、申告しなくて良いお小遣いを稼がないか?」
射撃コーチは頭の中で計算をし出した、元は475ドルの物にオプション付けても3千ドルは行かないだろう、しかし車のローンや欲しい銃のリストを思い出すと。
「4千ドル…それなら手を打つ、あとオマケも付けよう」
翌日、4千ドルで買った拳銃をスーツケースに忍ばせるとシューターは長距離バスに乗り込むと西を目指した、船で日本に帰る為である。
そして4千ドルを何回も数えながら射撃コーチは鼻歌を歌っていた。
「弾は流石に売れんからな、日本は拳銃なんて売って無いし」
そう、射撃コーチは弾が無ければ問題無しと思い込んでいた。
だが実際は日本で唯一流通している拳銃弾が22LRだとは知らなかった、射撃競技のライフル銃部門で22LRは流通している。
勿論、許可があれば弾も買える事を。
そしてシューターはその事を知っていた、日本ではエアライフル銃などを所持しているシューターは、推薦があれば22LRライフルを買える事も、そして弾の購入方法も。
西海岸から出港する豪華客船ダブルダイヤモンド号、通称DD。
その二等個室にシューターの姿があった、出港して最初のパーティーに出る為タキシードに身を包んだ男は豪華な夕食を楽しむと、この世の春を謳歌していた。
やがて日本が近付いて来た数日後、シューターを含む数名が風邪に似た症状で高熱を出すことになる。
新型インフルエンザは食事を提供するスタッフから乗客に徐々に移り出した、予防接種の効かないこのインフルエンザはやがて死者を出し始めた。
そしてその中にはシューターの姿も含まれていた。
亡骸とスーツケースに詰められた拳銃は日本を目指して航海を続ける。
日本に着くと豪華客船DDはそのまま隔離された、検疫のため完全装備の職員が中に入ると船長と協議の上、遺体と荷物のみ下船を許された。
しかし死体は検証の為に科学捜査研究所に送られる、そして荷物はパスポートの住所に送られる為に、宅急便の中継地点に送られたのだが、中継地点の所長が受け取りを拒否。
「ウチの社員が感染したら困る!」
なんとか話し合いの末、倉庫の一角を隔離スペースにして配送に関わる最低限の人だけ触れる事になった。
「場所は貸す…だけとなウチは一切関わらない、勝手に置いて持って行ってくれ」
伝票も切らない徹底ぶりで、数個のスーツケースは倉庫の隅に放置される事になった。
そしていつの間にかスーツケースは消えていた、取りに来た遺族が騒いで発覚するまで。
誰もその事に気が付かなかった…。
日本で唯一流通している拳銃弾
22LR
誰も書かない、見向きもしない
そこに惹かれる憧れる
これからも書きたい物だけ書いて行きます
よろしくお願いします。