1.終わりの始まり
こんなタイトルとあらすじで見に来ていただいた全ての方に感謝致します……。
突然ですが、
ごめんなさい、明日、世界は滅亡します。
わたくしは大変な過ちを犯してしまいました。
私の不注意により皆様にご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます。
勿論、謝って許されることではございません。罪を償い、精一杯努力致します。
心よりお詫び申し上げます。
本当に申し訳ございませんでした。
☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・☆.。.:*・
カタストロフィは、ぶつぶつと世界中の人々に詫びながら、廊下を歩く。
すれ違う使用人達が「何だ?!」と振り返るが気にしている余裕などなかった。
ふるふると震えながら、死地に向かうように、一歩ずつ踏み出す。
ここは、大きく広い城の中。
カタストロフィはメイドである。
数ヶ月前に採用された。
勤める前に、ここの主の噂を聞いたことがあった。
わざわざ城の門の前に人々が集まっていた。一人の老人が語る。
『ここの王は素晴らしい人だ。しかも、すごい力を持っている…………世界を滅ぼせるほどの。』
カタストロフィの頭の中では、魔王のような角が生えて、魔王のような羽も生えていた。ついでに、魔王のような服を着ていて、魔王のような槍ももっている。
更に老人は語る。
『少しでも怒らせるようなことをしたら、どうなるか…………』
人々は聞き入る。老人は大仰なジェスチャーをつけながら、
『ドカーーンだ!』と。
『故に! 我々はあの御方のお陰で生きてゆけるのだー! ルド様ばんざーい!』
『ばんざーい!』
人々は歓声をあげる。
カタストロフィの頭の中に浮かんでいる像は完全に魔王様だった。
しかし、他に行く所もない。
(せめて世界だけは滅ぼさないように、注意して生きていこう。)
覚悟を決めて城を見上げる。
天まで伸びる塔、尖った屋根、そして綺麗に整えられた庭までも、全てが先ほどよりもおどろおどろしく見えた。
が、敷地に、思い切って足を踏み入れた。
装備は布の服、武器は拳。
(いざ! 参らん!)
裏口に回って声をかける。
腕試しだ!おれを倒してからゆけ! と言われるかと思いきや、あっさり使用人をまとめている執事が
「就職希望の方ですか。いつから働けますか?」
「いつでも大丈夫です。今日からでも!」
「ならば本日から働いてください。」
とあっさり採用が決まる。
自分の行動一つで世界を滅ぼす……
だから、絶対に間違えないように……
カタストロフィは強く心に誓う。
仕事は洗濯や掃除など。今までしていたこととあまり変わらないものから任された。
城の中はとにかく広く、量もとにかく多い。一日で終わらない……どうしよう、このままじゃ世界が滅亡しちゃうと悩む日もあったが、段々とこなせるようになる。
その後、段々と先輩に色んな仕事を任される。
カタストロフィは充実した毎日を送っていた。
やがて、主へお茶などをお出しする仕事を命じられる。
そこで初めて主とお会いすることが叶った。
残念ながら城の主は、角も羽も生えていなかった。
邪悪そうな肌の色でもなく、髪の色も普通の茶色、瞳の色は澄んだ青で、全然悪そうに見えない………。
「あっ、新人さんだねー ルドって呼んでねー よろしくー」
ついでに、ノリも軽かった。
第一声は、おいお前! 世界滅ぼしてやろうか! くらい言われると期待していたのに。
(誰ですか、魔王って言った人はー 普通の人間じゃないですか。)
カタストロフィは心の中で思いつつ、淑女の礼を取り挨拶をした。
そんな風に、この数ヶ月間、ミスなどしないように確認作業を徹底していたのに………
ここにきて、大きな失敗を犯してしまった。
初めての大失態であった。
おそらく、これはもう世界滅亡しかない…………。
謝罪をしに主の部屋へと向かう。
カタストロフィとは破滅、破局、悲劇的な結末。天変地異みたいなやつ。