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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

同性の幼馴染と付き合うのは普通じゃない

作者: あいどんと

幼馴染とは、どのくらいの距離が適切なのだろうか。

友達くらい?家族くらい?

人によって、その距離は違うのだろう。


人によっては、幼馴染と付き合ってそのまま結婚する人もいるだろう。

でも、その場合普通は異性同士だろう。

差別や偏見があるわけじゃないけど、単純に異性愛者の方が同性愛者よりも多くて、生物的にもそうでなければ種が途絶えてしまうし、日本では一部のところでしか認められていないから、だから同性で付き合ったり結婚したりというのはのは普通じゃないだろう。


だから、今この状況も普通じゃない。



今、私は幼馴染の部屋にいる。

昔から私の部屋や幼馴染の部屋で二人で勉強会したり、ゲームをしたり、用もなく集まったり。

そういうことはしてきたので別にそこはおかしなことではない。


そして、私は幼馴染に抱きつかれている。

女子同士で抱き合っているのを学校で見たことがあるし、幼馴染はスキンシップが多い方だ。

きっとそれはそこまでおかしなことではないだろう。

それに幼馴染はぬいぐるみとかなにかを抱いてないと寝れないし、幼馴染と一番仲が良い私に抱きつくのは当たり前なのかもしれない。


でも、でもだ。



同性の幼馴染に告白されたのは、全然当たり前じゃないし、普通じゃないし、おかしいはずだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


最初に違和感を感じたのは、今日の朝。

いつものように一緒に登校しようと幼馴染の家の玄関前で幼馴染を待っていたとき。


いつもは私が来たらすぐ幼馴染は玄関から出てきて私に抱きついて来ていたのに、今日は出てくるのが少し遅かったし、抱きついて来なかった。

どうしたのか聞いても、なんでもないの一点張りで何かあったのは明白だった。


幼馴染は何か他の人に聞かれたくないことを話す時は外じゃ二人きりでも絶対に話さずに、どちらかの部屋でだけでしか話そうとしなかった。

今回もそうだろうと思ったのだけど、今までと違ったのはそういうときでも口数は減らない幼馴染が全然喋らず、何より目を合わせるどころか私の顔を見ようとすらしないことだった。

でも帰ったら部屋で話してくれるだろうと信じて、そのときはあまり気にしなかった。


その後学校に着いてからも幼馴染はずっと同じような感じだったが、私の顔は見ようとすらしないくせして他の人とは顔を合わせて普通に話しているのだ。

いつもの私たちとは違った雰囲気に、友達が何かあったのか聞いてくるけれども私はわからないと答える他ない。

最近幼馴染は何かを悩んでて、あまりスキンシップをしなくなっていたから多分私関係なんだろうけど。


六時間目の授業が終わり、帰りの挨拶を済ませたところで幼馴染にどっちの部屋で話すか聞くと、


「私の部屋に来て」


と幼馴染は相変わらず顔をこちらに向けず言った。


家に向かう途中も会話は続かないどころか、話すこともしなかった。

きっと話すことは私と距離を置きたいとか、もう関わりたくないとかだろう、なんてネガティブな想像ばかりが頭を巡る。

いつも幼馴染は私のそばにいるから、幼馴染は私に依存してるんじゃないかとか、もう少し距離を置かないと幼馴染は結婚できないんじゃないかなんて思っていたくせに。

何も言わずにそばにいてくれる幼馴染に甘えて自分からは何も言わないで、いざその話をするとなると私はこうなってしまうんだ。

私はきっと幼馴染に依存していたんだろう。

もしかしたら幼馴染はそんな私の気持ちを見透かして、今まで接してきてくれたのかもおしれない、なんてそんなことを考えているうちに私の家の右隣の幼馴染の家に着いた。

私の部屋と幼馴染の部屋は窓が向き合っていて、よく窓を開けて話したりしたけれど、もうそんなこともなくなるのかな。


幼馴染が玄関の鍵を開けて家に私を入れる。

どうやら幼馴染の両親はどちらもまだ帰って来てないようだ、といっても私の家も同じなのだが。

数日ぶりに来た幼馴染の部屋を見たとき、またもや違和感が浮かぶ。

幼馴染は少なくとも私が部屋に来るときは大体ぬいぐるみが床やベッドにたくさん転がっていて、ぬいぐるみが並べられて置かれていることなどなかったからだ。


「珍しいね、ていうかこんなに片付けしてあるの初めて見たよ」


「うん…今までで一番大事な話だから。さ、座って」


「え、うん」


鞄を置いて、ベッドに座る。

幼馴染と話すときはベッドに座って話すことが多い。

それは幼馴染が抱きつきやすいからだろうと思っていたし、そう言っていた。


「それで、その、えーと…」


いつもならすぐに出てくる言葉が、今は出てこない。

幼馴染は下を向いて、何も言ってくれない。

思えば私から話しかけることはあまりなかったなぁ、なんて。


「ねぇ、その話って私のことなのかな?」


「えっ!?…うん。そうなの」


「そっか…ごめんね。私、今まで幼馴染に甘えてたみたい。それを気付いたのも今日なんだ。今までだいぶ迷惑かけちゃったね。これからはもう少し距離を置こ「そんなことない!」


幼馴染が私に抱きつく。チラリと見えたその目には、涙が溢れていた。


「そんなことない!そんなことないよ...!迷惑なんかじゃない!…私、あなたのことが好きなの。いつからかわからないけど、気が付いたらどうしようもないくらい好きになってて、それで、もっと近くにいたいというか、えっと、えっとぉ...わ、私と付き合ってください!」


え?どういうこと?好き?誰が誰を?


「え?…え??好きって、どういうこと?」


「好きなの。結婚したいの。察してよ…ばかぁ」


でも私たちは女同士で、そんなの普通じゃない。

でも何か、心に引っかかるものがある。


「え、でも私たち女同士だし...」


「…そうだよね。ごめんなさい。急に、こんなの…気持ち悪いよね…」


普通じゃないし間違ってるはずなのに、どうしてか胸の高鳴りが止まらない。

もし、もし付き合ったら、結婚したらキスしたりするんだろうか。

不思議と嫌な感じはしない。

幼馴染を離したくない。もっと近くにいたい。

幼馴染はこの気持ちをずっと心の奥底に閉じ込めていたのだろうか。

離れようとする幼馴染を私から抱きしめる。


「やめてよ、勘違いしちゃうじゃん…」


「ねえ、胸がドキドキして止まらないの。わかんないけど全然嫌じゃない。これってなんだろう?わかんない、わかんないけど、私から離れていかないで…寂しいよ…」


言葉が口から流れていく。

そして自分でもわからなかった自分の本当の心に気づく。


そっか、私は寂しいんだ。

幼馴染がいないと、私は自分で立って歩けない。どっちが前かもわからない。触れ合った温もりがないと、寒くて死んでしまいそうになる。


「私も、同じ。寂しいよ、離れたくない」


幼馴染がまた抱きしめてくる。

幼馴染が泣いている、そのことが私の心を突き刺す。

その流れる涙を止めたい。

どうしたら止まってくれるだろうか。


「好き…大好き。愛してる」


もっと強く抱きしめる。

もっと、お互いの心臓の音が聞こえるくらいに!


「私も好き…なんだか私が告白されたみたいだね!」


さっきまでのしおらしい感じから、いつもの元気さが戻ってきたようで、その変化に私の心がまた騒ぎ出す。


「で、さっきの告白の返事はまだかな〜?」


泣いてるのに笑ってる。

幼馴染に涙を拭われて、私も泣いていることに気がついた。


「言わなきゃだめ…かな?」


「だめ、絶対に言って」


いざ言うとなると、恥ずかしくて顔が熱い。

きっと私は耳まで赤くなっているだろう。


「耳まで真っ赤になっちゃって、かわいい」


「言わなくてもいい!…えっと、私も、好き。だから…はい」


「じゃあじゃあ、私たち今から恋人同士、カップルだね!」


カップル、カップルかぁ...

別に、これから誰かと付き合うんだろうなぁと思ってたし、クラスの男子に告白されたこともあったけど、でも、誰かを好きになることもなかったし、幼馴染と一緒にいるなら誰とも付き合わなくてもいいかな、なんて思ってたりしたのに。

今は幼馴染以外に考えられない。

他の誰よりも、何よりも。

だって、幼馴染が一番近くに居てくれるから。

私のことをわかってくれるから。

私の心を温めてくれるから。

近くにいる。それだけで私の心は満たされる。

幼馴染も同じ気持ちなのだろうか。


「私、けっこう、いやかなり嫉妬深いみたい。それでも私を愛してくれますか?」


私の全てを受け入れてくれるだろうか。


「当然だよ。それと…気づいてなかったみたいだけど昔から私が男子と話してたりすると後ですぐに聞きに来たり、かなりわかりやすかったよ!」


初めて聞いた、そんなこと。

振り返ってみると、思い当たることがいくつもあった。


「は、恥ずかしいぃ…」


「それに…私はもっと嫉妬深いから、絶対に離してあげないから…ね?」


むっとした。


「私の方がもっと、10倍くらい嫉妬深いし!」


「じゃあ私はその100倍!」


「なら私は1000倍だし!」


「「…っあはははっ!」」


二人して笑いあう。

小学生の張り合いみたいで、昔に戻ったみたいで。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

きっとこれから私は普通じゃない道を進んで行くことになるんだろう。


でも、普通って、なんだろう。

好きな人と一緒にいること、抱きしめあうこと、それの何が異常なのだろう。

私は同性である幼馴染と一緒にいたい、抱きつきたい、結婚したい。

それを普通じゃない、異常だなんて言われたところで私は私の気持ちを変えることはない。

普通か、そうじゃないかなんかどうだっていい。

誰に否定されたって、たとえそれが両親であっても、私は前に進める。

ただ、幼馴染と一緒にいられれば。

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