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[第7話:目撃]

藍璃(あいり)はあまり気が進まないのだが音楽室へと足を運ぶ。

はぁ。何の話なんだろぅ?

藍璃は咲斗(さきと)に呼ばれたため音楽室へ行くのだ。本当は(れん)とピアノの練習をしたいんだけどなー、と思いながら角を2回曲がり音楽室前の廊下へ。すると咲斗がもうすでに音楽室のドアの前にいた。

「あ、ゴメン。もうきてたんだ・・・」

藍璃がそう言うと、

「大丈夫。・・・話しにくいから、中入ろう?」

といって音楽室のドアを開け、藍璃に中に入るよう促す。藍璃は頷いて音楽室に入る。咲斗も続いて中に入り、ドアを閉める。そしてドアの鍵も、咲斗が持っていた鍵で閉めた。藍璃はそれに気づかず、壁側の一番端のイスに座る。

「・・・で、話ってさー・・・やっぱり、アレ?あたしが、・・・」

藍璃が言葉を詰まらせると、咲斗も藍璃の近くのイスに座り、

「うん、そう・・・んで音楽室来るってコトは、オレのことホントに好きってことなんだよな?藍璃?」

名前を呼ばれ、少し驚くする藍璃。それにそんなにハッキリと言われると、何か恥ずかしい。藍璃はちょっと赤くなる。

「ぅん。前までは、好きだった(・・・)けど・・・今はもう、」

と藍璃が言いかけると、

「え?」

咲斗は思いもしなかった答えに驚く。

「・・・や、前まではあたし咲斗のこと好きだったよ。でも今は他に好きな人ができたから」

と言いかけると、咲斗が立ち上がり藍璃の目の前まで歩いてくる。藍璃は驚いて咲斗を見上げる。

「え、オレじゃないの?・・・どーゆーこと?」

咲斗は、少し声をあらげるた。

・・・咲斗は、やっぱり近くで見るとカッコよくてドキっとしてしまう。藍璃の目は咲斗に釘付けになる。

やっぱり、あたしが好きになった人だ。・・・でも、何か違う。咲斗は、ただドキドキするだけ。

でも、連は?・・・連は、話してると楽しくて、一緒にいたくて・・・すごく幸せな気持ちになる。

・・・連の方ががいい。どうして同じ男の子なのにこんなに違うんだろう?

藍璃が言葉を発せられずにいると、藍璃の言ったことを完全に理解した咲斗がまた言う。

「じゃあ、藍璃はそいつが好きで、オレはもう好きじゃないてこと?」

咲斗は目を細めて悲しそうな顔をする。藍璃はまたもドキっとしてしまう。もう好きじゃないはずなのに。

「・・・うん、ごめん。あたしから好きて言っておいて・・・ゴメン」

藍璃が申し訳なさそうにうつむいて言った。すると咲斗は。

「ゴメン?・・・何だそれ。ふざけんなよ。オレは、藍璃のことずっと前から好きなんだけど。」

「え・・・?」

「最近、毎日昼休みにピアノ弾いてるのいつもきいてたよ。・・・誰かさんと練習してるところだったから、話しかけれなかったんだけどな。」

あ、あれ?どーいうこと?あたしのこと断るために呼んだんじゃないの?あれ??じゃあ、あたしと咲斗は両思いだったって、こと?それに連とピアノ弾いてるの、知って・・・?

藍璃が戸惑っていると、咲斗が藍璃に近付く。そして、咲斗は藍璃の左腕をつかんだ。

「え・・・何」

藍璃は驚いて立ち上がる。その勢いで、イスが大きな音を立てて倒れる。だが咲斗はそれに驚くこともなく、藍璃のもう片方の腕もつかむ。

「ちょ、放して・・・」

咲斗は、真顔だった。藍璃が咲斗の手を振り払おうとするが、無駄な抵抗だった。自分よりも背の高い男子に、力でかなうはずもない。

・・・こわい。

「放してよ・・・っ何すんの!?」

涙目で必死にもがく藍璃は震えながらそう言うが、咲斗が聞くはずもなく・・・

咲斗は藍璃をそのまま壁に押し付けた。

「キスに決まってんだろ・・・オレ、藍璃がホントに好きなんだ。もう止められない」

咲斗はそう言ってゆっくりと藍璃に顔を近づけていく。・・・藍璃はやっと咲斗がしようとしていることを理解した。その間も少しずつ咲斗の顔が近づいてくる。どうすることもできずに藍璃はただ咲斗を見つめた。

が、次の瞬間。

ガッ!!

「っい・・・!!」

鈍い音と共に咲斗のうめき声。藍璃が、咲斗の(すね)を思いっきり蹴ったのだ。脛の痛みにより、咲斗が藍璃の腕をつかんでいた手の力が緩む。その隙に藍璃は咲斗の手を振りほどき、ドアまで走る。走って・・・ドアの取っ手に手をかけ、思いっきりドアを開けた・・・!

「・・・あれ?」

ドアを開けたはず、なのに。藍璃は今おこったことがまだよく分からない。

何で、ドアが開かないの?

藍璃は混乱する。何度も強くドアを横にずらそうとするが、ドアは揺れるだけでビクともしない。

・・・開かない、開かない。どうしてっ・・・!?

「・・・あ、開かねぇぞそのドア。」

咲斗が藍璃に蹴られた脛をさすりながら歩いてきて、藍璃にそう言った。

「な、んで?」

藍璃は意味分かんない、という顔で聞く。

「だって、オレが内側から鍵かけたから。ホラ」

そう言って、咲斗は音楽室のドア(このドア)の鍵を藍璃に見せた。

内側から、鍵を、かけた?

・・・そういえば、この音楽室のドア、内側からも外側からも鍵かけれるやつだ・・・

って言うか、何で咲斗はそこまでするんだ・・・?

藍璃が呆然としていると、また咲斗が藍璃の腕をつかんだ。

「咲斗、放して。」

だが藍璃はさっきのように抵抗はせず、でも震えた声で静かにそう言った。

咲斗は抵抗しないのに少し驚くが、すぐに真顔に戻る。

「嫌だ、って言ったら?」

それでも藍璃は抵抗したりせず、唇を噛み締める。

だって、どうせこの力にはかなわないもん。

・・・っていうか、どうすればいいんだろう。

「・・・そんなに、あたしにキスしたいの?」

藍璃の言葉に、咲斗はピクリとする。でも何も答えず、ドアの横の壁に藍璃を押し付ける。

「・・・そうなんだ。」

藍璃は、静かに咲斗を見上げる。

「ドア、開けてくれないよね?」

藍璃が分かってるけど、という言い方で咲斗にそう聞く。するとやはり咲斗は「開けない」と呟くように言う。

「・・・あっそ。じゃあさ、交換条件してくれない?」

藍璃の意味不明な言葉に、咲斗は「え?」言う。

「交換条件。あたしにキスしたいなら、していいよ。でもその代わり咲斗は、音楽室のドア(このドア)すぐに(・・・)開ける。これでどう?」

咲斗は藍璃がこんなことを言うなんて予想もしてなくて驚く。

交換、条件?それにキスしていい、なんて言うとは。好きなやついるんだろ?いいのかよ。

・・・オレが言うのもアレだけど。

「分かった。オレはいいぜ?・・・お前が良いならな。」

咲斗はその交換条件を了解した。



「はぁ・・・」

連は図書室から出て、教室への道を戻る。

階段を、上がる。

この上は、音楽室・・・

そーいえば藍璃が朝、音楽室は吹奏楽部で使ってるから今日は無理って言ってたけど・・・オレ、実は吹奏楽部員なんだよね。

でも音楽室を使う、なんてことこと聞いてないし。何で藍璃はウソついたんだ?

連は、ゆっくりと階段をのぼる。

気になるから、音楽室ちょっとのぞいていこう。

そして、連は音楽室の前へ。

するとそこには。

「藍璃・・・?」

連の手からは、本が音をたてて落ちた。


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