[第6話:小さなウソ]
次の日。
藍璃はいつもより早く学校へ行き、連を待っていた。
連はいつも学校に早く来る。それを待っていた。
しばらく席に座って待っていると、廊下でキュッ、キュッ・・・という上履きの音がする。
藍璃は立ち上がり、教室の入り口を見つめる。
ガラッ・・・
連が来た。藍璃は連に走り寄る。連は「?」と首をかしげる。
「あのさ、連。」
藍璃は連に話しかける。
「何・・・?」
連がそう聞くと藍璃は、
「え?あ・・・えっとぉ・・・なんと言うか・・・」
と戸惑う。少しして、
「えっと、悪いんだけど、今日は音楽室に来なくていいから・・・っていうか・・・あたし行けないから。・・・ごめん。」
と言った。連は「え?」といって藍璃を見る。
「え・・・何で?」
連は困ったように聞く。そう聞かれてに藍璃も困ってしまう。まさか、
『咲斗に音楽室に来てって言われたから。連に話してる内容を聞かれたくないし。エヘッ☆』
・・・なんて言えないし。
藍璃は困って、「えっとー、だからー・・・そのー・・・」とブツブツ言う。そして、
「いや。今日吹奏楽部で音楽室使うらしいから。だからー・・・使えないんだ。音楽室。」
というウソをついた。それを聞いて連は「ふーん?」と言った。そして、
「わかった。じゃあ明日?」
と言った。
「え、うん。あしたは行ける。ごめんねー・・・」
と藍璃は笑ってごまかし、自分の席に戻る。そして、
・・・なっ何とかごまかしたぁあ〜!!ふぅ。・・・いや。バレないかな?いやいやいや・・・大丈夫だよね!連はいつも教室で本読んでるし。うん。大丈夫!ふぅ。
と心の中でほっとしていた。
連は今日は音楽室に行けないので、少し落ち込んでいた。・・・藍璃と少しでも話をしたかったなぁ。ピアノも弾けないなんて。はぁ・・・残念。でも明日行けるから、いっか。
と教科書をかばんから出したり、したくをはじめた。
藍璃はボーっと天井を見上げる。・・・そーいや咲斗は何を言うつもりなんだろう。ごめん!とかかな。いや、でもこっちは告白もしてないのに勝手にフラれるとか、何か悔しい。今は連のことが好きで、咲斗のことはもう好きじゃないんだし。うぅー・・・。
頭がモヤモヤとする。
藍璃がその後の授業に全く集中できなかったことは、言うまでもない・・・。