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転生ですか?ではどうぞ、ネズミの国へ  作者: 芭蕉桜の助
First year 秋 転生少年、くるみの街を知る
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万事(よろず)なのに百万(ミリオン)

・次の日の朝は、ルシアナさん特製のエッグベネディクトだった。


これもまた、卵の旨味を絶妙に活かしており、味付けはしっかりしているが淡白で、いくら食べても飽きない味だった。


「今日もすんごく美味しいです!!」


「うふふ。まだまだあるから、どんどん食べてね。」


と、食事を終えると、ルシアナさんがテーブルに着いて言った。


「ベルにルッキー。ジョー君にちゃんと商店街を案内出来た?」


「え〜っとね……。」


困った様な顔になるベルに代わり、ルッキーが言った。


「一通り回ったよ。後は、姉貴が行きたがらない店だけ。」


「行きたがらない店?ミリオンさんの店の事?」


「それ、何屋さんなんですか?」


オレが問うと、ルシアナさんもベルの様な困り顔になった。


「何屋さん、って聞かれると難しいのだけど、そうね。なんでも屋さんかしら。ベルは、店のご主人と馬が合わないみたいね……。」


「良いよ。オレが案内するから、姉貴は家で待ってて。」




食器洗いと洗濯を済ませたオレは、数分後、ルッキーと二人で商店街に向かった。


ここ2日で気づいた事は、商店街で売っていたモノがオレの世界と何ら変わらない事。八百屋さんにも、魚屋さんにも、得てして珍しい食品はない。


ポンド然り、日用品その他の道具にも同じ事が言える。


文字はといえば、 義務教育と高1の半分たらずのカリキュラムで理解できる程度の英文で書き表されていた。


でも、不思議なことに、こっちの住人が俺には日本語で喋ってるように聞こえる。なんでだろう?コミュニケーションをとる上で困らないってのは、幸いに越したことはないんだけど、妙に気になる。


「悪いなルッキー。案内してもらって……。」


「この前の借りを返すだけ。早く土地勘付けてくんないと困るしね……。」


愛想が無いのは相変わらずでも、ルッキーとの距離は少しずつ、確実に縮まっている。

そう思うと、どうしてもニヤけてしまう。


「何笑ってんの?恥ずかしいでしょ……!」


「おう。悪い悪い……。」


ミリオンのなんでも屋は、商店街の外れにある緑の外装の建物だった。華やかな他の店には程遠く、いかついドクロの看板や、コウモリの立て札が、どことなく入りづらい雰囲気を醸し出している。


「ベルが行きたがらないのも、分かる気がするな……。」


「姉貴がビビリなだけ。アンタは大丈夫でしょ。入るよ。」


薄暗い店内には、動物や花の造形物にドクロの置物、中世の海賊や貴族を連想させるコスプレやオシャレアイテムの数々……。

何より多かったのは、立派な植木鉢に植えられた、立派な観葉植物たちだった。


サブカルチャーショップってヤツだろうか?近いモノを感じるが、 俺がよく通っていた店よりも、随分とエキセントリックな様な……。


沢山のスノードームが入った戸棚の前に、ハタキでほこりをはたく若者がいた。


彼もやはりネズミだが、あの特徴的なモヒカンヘアに、オレは見覚えがあった。


「いらっしゃいやせ〜……って、あ!お前あん時の!」


モヒカンはオレを見て叫んだ。


「あの〜、誰だっけ?」


モヒカンを見てオレはつぶやく。どこかで会った気はするが、どうしても思い出せない。


「忘れてんじゃねぇよ!一昨日の夕方、オメェにボコられた男だ!」


そこまで言われて、オレはようやく思い出した。


この世界にやって来てすぐ、雪の中でオレに絡んで来たヤンキーネズミがいたのだ。とは言え、オレが彼らをフルボッコにしたシーンは完全に割愛されてたから、オレ自身すっかり忘れていた。


「あぁ〜!君ね。はいはい、思い出した。」


「なんだそのうっすいリアクション!オレらがあの後どんな目に会ったか……。」


「なに、この人ジョー兄にボコられたの?」


「うるっせぇガキ!テメーぶっ飛ばすぞ!?」


子供のようにわめき散らすモヒカン。


「ちょっとボブぅ。お客さんになんて口の聞き方……直さねぇとクビだよ?」


すぐ後ろで声がした。ハッとして振り向くと、ネズミの男が立っていた。モヒカンよりも年上の様だが、明らかにジェームズさんより若い。


腹巻きとヒョウ柄Tシャツの怠惰なファッションに、頭を覆い隠す緋色のソフトハットが、どことなく『どこぞのフーテンおじさん』を思い起こした。


「すんませんッス、ミリオンさん!」


モヒカンは腹巻きの男、店長ミリオンに頭を下げた。直後、腹巻きの男もオレたちに頭を下げた。


「いやぁ、うちの若いモンがどうもすんません。そんで、いらっしゃいませルッキー君、今日は何をお求めで?」


「表のガムボールマシンがなかったんだよね。」


ルッキーが慣れた口調で言った。


「ああ、こりゃ失礼。年明けに改装するから、一時的にくじ引き形式にしてたんスよ。」


そう言ってミリオンは、レジの下からダンボール箱を出した。箱からは、様々な色が着いた無数のヒモが伸びている。


「さっ、引いてみて。」


「ガチャの時はロクなの出なかったからね。今日こそ……。」


そう言ってルッキーはミリオンさんに5ラッド玉を一枚払った。


通貨の種類も、円とあまり変わらない。ルシアナさんからのオレの小遣いも、日の労働に応じラッドで貰ってるが、万ラッド札が四枚。オレには少し多すぎる様に感じる。


「チッ……またレモン味!」


「フフ……そう簡単にゃ出しませんぜ旦那……。」


歯がゆそうなルッキーに、ミリオンは黄色いガムボールを差し出した。


「また来るよ。」


「ええ、いつでも……ところでルッキー君、そこの旦那はどちら様で……?」


「アニキ予備軍。」


予備軍つきとはいえ『アニキ』呼びしてくれたからか、オレは自然にニヤけてしまっていた。


「それはそれは……予備軍のお(アニ)ィ様で……お初に。

あたくしゃあ、よろず屋で、ミリオンと申しまさぁ。以後、ご贔屓(ひいき)に……。」


「ど、どうも……。」


若いのにファッションも言葉遣いもおじん臭い、目の前の店長を警戒しながらも、オレは握手に応じた。




「それから、コイツァお近付きの印に……。」


店を出る前、オレの手の上に金の小箱を落とした。


「これは……?」


「ご自宅に戻ってから、開けてくだせぇ。それと……。」


ミリオンは、急にオレの耳元に近づき、ルッキーに聞こえない様に囁いた。


「これからは、買い物以外にも、ご贔屓に……志島(・・)さん……。」



何ィィィィィィィィィィィィ!!?


『志島さん』って事は、 転生前のジョーを知ってるって事かァァァァァァ!?


これは続きが気になる〜!……よね!?


(作者必死の宣伝)

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