役者は揃った
・まさに弾丸風雨。行く先々で動乱が起こり、行く先々で人が倒れ、流血が続く。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
革命を前にした混迷の国の姿は、一筋の光も見えない、夜明け前の暗闇の中。
されどジョーは剣を振るう。
真の自らの故郷に戻るため。この国で自分を救ってくれた大切な仲間たちを、誰一人死なせないために。
零矢がそれに続く。
自分の、自分なりの大きな目的を、願いを叶えるために。
「斬っても斬っても、きりがねー!!」
「どうした弱卒!もう弱音か!」
「うっせー!てめーと組むのはここまでだ!これが終わったら今までの恨みで叩っ斬ってやる!だから……」
「その気概があるなら十分だ!!後で幾らでも相手をしてやる!
だから……」
「「おれがヤるまで死ぬんじゃねーぞ!!」
蜂の巣を守るスズメバチのように、次から次へと大群で溢れ出るアルケミスの兵士たち。
マジックアイテムの使い手二人とはいえ、さすがに消耗し出す。
「ところでアンタ、何でギルドアンバーと繋がってるんだ?」
「今聞くことか?」
「立場によっては、ココ抜けてすぐに戦うかもしんねーだろ!」
「心配せずともそれはない!少なくとも、私は頭領に大恩があるからな!」
相手を切りつけながらでも、まだ会話をする余裕がある二人。
このまま敵の陣形に穴をあけられれば。
そう思っていた矢先に、最悪の刺客はやってきた。
ズシン!!
地響きかと思うほどの轟音が鳴り響き、そこには少なくとも、今この戦場において最悪の強敵が立っていた。
「レイヤ〜〜〜!!貴様〜!これはもう謀反だよなぁ〜〜!?」
「何だこいつ!!」
「一体どういうことだ……?」
そこには、零矢が2階のベランダで両断してきたはずのステインが立っていた。
※※※※※
一方その頃。
地下港に到達したギルドアンバーの幹部たちは、ドラクロワ号をジャイロモードに切り替え、迷路のように入り組んだ地下水路へ乗り上げていた。
「そこの馬鹿でかい曲がり角を右折しろ!20km先が採掘場だ!」
外部に備え付けたスピーカーから、頭領の大声が放出される。
無線を破壊する計画は失敗に終わり、それを理由にその後の計画を全てドミノ倒しにして走り出した二人。
ジョーの試練を担当した、シャルルとクレシアである。
「おいガリ!てめえは船に戻ってろ、採掘場は俺が抑える!」
「ガリなんて言う人がどこにいるのかな?僕だとしたらそのままお返ししよう。なんせ、僕の方が強いからね」
「んだとテメェ!」
上陸そうそう揉め事を起こす二人。
だが、そんな余裕はそう長くは続かない。
「いたそ!侵入者だ!」
帝国の兵士たちが、いち早くギルド幹部の位置を特定して、襲い掛かってくる。
「幹部二人だ!応援が来る前に殺せ!」
「なァ、聞いたかクレシア」
「まったく、ナメられたものだ。応援が来なければ……」
「てめぇら 俺
ごときに が倒せると!?」
キミたち 僕
兵士たちの突撃は、二人のデリケートな何かを刺激した。
さっきまでより凄まじい勢いで兵士に向かっていく二人。
兵団と接触する寸前に、シャルルは剣を抜いた。
『廻斬"渦潮"・三重!!』
海の魔力を纏った刀身から、散弾のような水流が迸る。
逆巻く潮の斬撃に巻き込まれ、兵たちは一撃で屈した。
「どんなもんだこの野郎……」
「威力は抜群、けど油断したね。奥からまだ来てるよ」
シャルルを一煽りしたクレシアは、彼に先んじ採掘場へ到着しようとより一層勢いを強める。
「大人しく投降しろ!クレシア・ムーンライト!!」
「投降しろって?君それは……私より強い者のいうことだよ」
杖を出すまでもない、そう判断したクレシアは代わりに懐から奇妙なカードの山を出した。
敵兵たちが突撃してくるのもお構いなしに、冷静沈着に山札をシャッフルする。
何度も山札を切った後、山札の一番上を引く。
兵士は警戒して槍を構えたまま、ある程度の距離を取りながらクレシアを取り囲んだ。
「賢明な判断だ。私のマジックタロットは運命にさえ干渉する。用心してもしすぎることはない。まぁ……」
クレシアはカードを確認した後、それを表にして兵士達にぐるりと見せた。
「【塔】の正位置。用心したところで無事じゃすまないがね。神に近づこうとする愚行は、巨大な塔から建つ権利を奪う……」
「何を訳のわからんことを!」
罪塔。
クレシアが詠唱したかどうか、誰も気づかない。
気付いた時にはすでに、どこからともなく現れた雷に感電して、全員なぎ倒されてしまっていたから。
「ちょっと痺れが、強すぎたかい?」




