出発
・砲弾入れから出た俺たちは、姐さんが登場している大日本戦艦に案内された。
その一室、船員室501。到着まで姉さんが寝泊まりしている部屋で、 ベッドの上に正座させられていた。
「なんて危ない事をするの!?」
「うぅ……」
「見つけたのが私じゃなかったら、叱られるどころか捕まってたかもしれない! もっと悪くすれば現場に着いて死んじゃったかもしれないわよ!?」
「面目次第もない。」
「ごめんくさい。」
この期に及んで言い間違える姉貴もどうかと思うが、 しかして全く言い訳のしようがない。
姐さんはため息をつくと、俺達にココアの入った紙コップを出した。
「もういいから……顔上げなさい。 今艦長たちに話をつけてくるから、あなた達は家に帰って……。」
「いやだよ!!」
完璧な理論武装はいくらでも考えてあったのに、俺より先に姉貴が声をあげた。
「私は知らない所でお兄ちゃんが死んじゃったらやだ!!今も一人で寂しくしてるかもしれない!少なくともこっちに来た時はそうだった……また……寒くて凍えてるかも……知れないのに。」
メソメソ泣きだす姉貴を、姐さんがゆっくり抱きしめた。
「大丈夫……大丈夫だよ。ジョー君は、私たちが絶対に助ける、 みんな生きて帰ってきて、またいつもの家族に戻るから……。」
「でも私、こんなに助けて貰ったのに、お兄ちゃんに、何もしてあげられない……。」
「そんな事無い。ジョー君は危ない目に何回かあったけど、その度に戻ってきた。いつも言ってたわ。『家族がいたから』だって。ベルちゃんもその、家族の一人なんだよ。」
「でも……でも……!!」
「姉貴……強くて優しくて優秀なシード大陸戦士たちのすごさを、俺たちは見て育ってきたろ? 彼らを信じてるんなら、 俺たちは今、こっちの平和を守るために勇気を出さなきゃ。」
こんなことを姉貴に説いている俺も、内心不安で不安で仕方なかった。
とはいえやはりここは素人の出る幕ではない気がする。
兄貴のことも、その裏で暗躍する何かのことも、この人達に任せるのが一番得策だ。
「……わかった。」
ようやく姉貴がこくりと頷いて、こちらとしても安心する。
「じゃあ今、船長達に話をつけて降ろしてもらうように……。」
ガタン!!!ボーッ!ボーッ!
ガタンと揺れると同時に、汽笛のような音が響き渡る。
「ウソでしょ!?もう出発!?」
急いで部屋を出ようとする姐さんだが、窓の外を見るとみるみるうちに港が離れている。とても今から降りますとは言えない雰囲気である。
「最悪……。」
姉さんが ガックリ肩を落とすと、俺たち2人が頭を下げた。
「面目次第もないです。」
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一方、アルケミス帝国地下・ギルドアンバー試験場《月の間》
「はぁ……はぁ……。」
「終わりかい……?ロングライド君。」
紫色の長髪が目立つ男の賢者、クレセラを前に、 俺は満身創痍魔力も底を尽きかけていた。
「まだっすよ……当たり前じゃ……ないすか!!」
「その心意気は買うが……この試練は今までと圧倒的に違う。 君の肉体に直接働きかけるものだ。 無理は推奨できない。」
「そんなこと言ってる場合じゃないんスよ!!この試練を越えられないようじゃ……デッドナイトは倒せない! 大切なものを何一つ守れない!」
剣を杖代わりにして、 俺はどうにか立ち上がった。
せめて意識を保ち続けるために、この賢者に負けを認めないために……。
「なるほどね……少なくとも、君が伊達や酔狂でここにいるわけではないことは、よく分かったよ。 もう一度始めようか。
この試練に打ち勝った時、君は以前の何倍も強くなっているはずだ。デッドナイトの幹部など、簡単に追い払えるぐらいにね。」
俺は何度だって立ちあがる。 今まで出会ってきたいろんな人たちとの約束が、 俺に勇気と力をくれるから。
炎よめげるな。もう一度、立ち上がってくれ!!
この剣に灯り、今一度……。
俺と一緒に戦ってくれ!!




