捜索
・ジョー・ロングライド失踪から早三日。
我々シード大陸『六王』は、すぐに対策会議を開始した。彼が、六王の構成員である私の息子だったこともあるが、今回はよりにもよって、大陸内に大型マフィアの侵入を許した可能性が出てきた。
いつもは集まりの悪いメンバーが、今日は召集時間に全員会議の席へと着いた。それほどの事態が起こっているのだ。
『六王』とは。
二十数年前に終結した巨大な戦いの折、『ある存在』に見事打ち勝った我々の中から、六人の有識者が大陸を管理運営する長として選ばれた。
メンバーは、私、ジェームズ・ロングライド。
万事屋ミリオン店主、ミリオン・ダイバー。
シード大陸TV・ラジオ放送局長、キャスタ・ブローダ。
火消し組総長、ドランク・サラバイダー。
マックス中央病院院長・ブラウン・マックス。
ドレイク農園園長、ライデン・ドレイク。
いずれも、過去ジョー君と面識があった事もあってか、彼の失踪の知らせを聞いた際は驚きの表情が見えていた。
大きな事件にこそ発展してはいないものの、もう既に何度かデッドナイトの幹部と接触している彼がいなくなった上、誘拐の可能性まであるとくれば、事態はより深刻になる。
「それで?ホシは割れたのか?火消し組……。」
「いや、残念ながら依然不明だ。」
「何やってんだ使えねえな。税金ばっかり吸い上げやがって。」
「何だとチンピラ農家!!ならテメエんとこだけで探すか。」
早くも毎回恒例、ドレイクさんとドランク総長のケンカが始まった。これを止めるのはいつも、マックス医師の役目だ。
「まあまあ落ち着きねィ兄さん方。ウチの病院の映像は残っちゃいないが、盗られたカルテから何か割り出せりゃ……」
「うるせえトド医者!!だいたいテメーの病院がしっかりしてりゃ……!」
「トドだとォ!!?それを言っちゃアおしまいよォ!!」
今回に関して、けんかの仲裁は役不足だったらしい。ブローダ局長は完全にすくみ上がってるし、さすがに私が止めに入らないとかな。
と、その時。
ダアン!!!
ずっと黙っていたミリオン君が、掌を円卓にたたきつけた。
「落ち着いて下さいよ……まずアタシらがしっかりしなきゃ、事態の収拾は不可能でしょう?」
次に、一枚の用紙をテーブルの上に置き、全員にカードのようなものを配った。
「まずコレは、ウチの商品を仕入れる港の入港記録のデータです。明らかに偽造して大型客船に乗ってこの町に来た形跡があります。」
「いつのまに……?」
「規模は兎も角、自由に動きやすいのはアタシなんでね。」
ドランク総長は彼の返答を聞くと、カードと書類に目を通した。不正・不審な改造コードのキャッシュカードで大型の連絡船に乗った可能性のあるものだけをまとめたログらしい。
「ん?おいちょっと待て!昨年10月に……一週間前、昨日だと!?昨年はともかく、最近の二件は報告がきちゃいねえぞ!?」
「そこですぜドランクさん。去年の10月といやァ……一つでけェ変化があったでしょ?」
「ん?あー……えっと、何だったか……。」
ミリオン君が質問を投げたのはドランク総長だったが、どうやら、答えにたどり着いたのは私の方が早かったらしい。
「クリス君がここへ来た……。」
「何だとジェームズ!!?」
「旦那、そりゃホントかい!?」
ドレイクさんとマックス医師が一斉にこちらを向くと、私は黙って頷いた。
同時に、考えないようにしていた『悪い予感』が、現実味を帯びてきたような気がして、思わず頭を抱えて卓に肘をつく。
「さすがジェームズさん、ご名答スね。」
ここでようやく、ブローダ局長が久しぶりに口を開いた。
「た、確かあの事件は裏に……。」
「ああ、デッドナイトが絡んでやがった。つまりこの件も……。」
ドレイクさんは苦虫を嚙み潰したような顔で、タバコを灰皿へ押し当てる。
「くそォッッ!!オレがロングライド家の近くに住んでりゃあ!!」
拳をテーブルにたたきつけるドレイクさん。あの子たちが生まれたばかりの頃から親交があったためか、私以上に動揺し、心を痛めてくれている。
「ドレイクの兄さんよ、そんな後悔はここにいる全員がしてらあ。何たってオレたちァ皆、あの青年に一目置いてたんだからなァ。」
「ああ……済まねえ。」
「ありがとうございます。ドレイクさん……。」
六王達が皆、自分の家族の為にあれこれ考え、行動しようとしてくれている。
自分の未熟さが歯がゆかったが、それ以上に皆の思いが伝わり、目頭が熱くなった。
「しかし、ミリオン君。だとすると今ジョー君は……。」
被っているハットのつばを引っ張り、ミリオン君は頷きながら、小さなため息を一つついた。
「人ひとり掻っ攫って潜伏できるとすりゃあ……もうあそこしかないでしょうね。現在のデッドナイトの巣とされる、国交断絶中の……。」」
次のミリオン君の一言で、私の嫌な予感は確信に変わった。
「オーディンス大陸は、アルキミス帝国……!!」




