激震
・「ユズおめェ……今何と言った?」
一番にオレが聞きたかったことを、頭領が聞いてくれた。
聞き違いでなければ、俺はこの組織にスカウトされたのだ。デッドナイトの影がうごめき、不穏な国家体制の国の地下でで生活するこの組織に。
「スカウトしようって、言ったの。あのね、彼、『私と同じ』なの」
訝しげに細まっていた頭領の目が、一瞬でまん丸くなる。驚きの色だ。
私と同じ。
そのユズキのアバウトな一言で、頭領はその本当の意味を理解したらしい。
「馬鹿な……するってェと何だい?向こうから?」
「だと思うよ。だとしたら、デッドナイトのバカ共を止められるかも……!!」
「ちょちょちょ!!!」
ユズキと頭領の重々しい会話に、オレはたまらず割って入った。
向こうから。
デッドナイトを止められる。
飛躍した話が留まるところを知らず、ドンドン混乱してくる。
「オレが何だっていうんですか!?確かにデッドナイトと接触したことはありますけど、『オレだから止められる』とか、イマイチ意味が……!!」
サンセット大陸で大口をたたいてはいたが、いざその脅威が、何の構えもなく迫っている。
それも、具体的にどんな状態か分からない、見えない敵が迫っている。
覚悟を決めようにも、彼らと共に戦おうにも、ー漠然と「デッドナイト」ではあろうがー『何』とどう戦うのかが見えにくいのだ。
ユズキは、ゴメンね、と一言挟んで、説明を始めた。
「あなたは、恐らくアタシのいたのと同じ、『あの世界』の元住人。二つの世界をつなぐ激流の泉を越えた、選ばれた人だけに宿る魔法が……。」
「ちょちょちょ、ちょっとまって!!泉?って一体……。」
転生者と泉。
何故か引っかかったのだが、それが何故かはどうしても思い出せない。以前、何かの本で読んだ気がしてならないが、何の本だったか……。
「お前さん、『泉』から来たわけじゃあねえのか!?」
いずれにしても、オレが元居た世界からこちらに来たとき、最初に目を覚ましたのはくるみの街だった筈だ。
「ウ~~~!!」
背筋を凍らせながら、興味深げにオレを見ている。
「頭領……こりゃ思ったより面白いかもよ、彼。」
「いや、しかしだな……。」
頭領の不安そうな顔を気にも留めず、ユズキは再びオレの前に進み出る。
「改めて、ジョー・ロングライドさん!!当組織、『ギルド・アンバー』へ、正式にスカウトします!!」
磨きたてピカピカのエンブレムを差し出し、満面の笑みを見せるユズキ。
オレが返事に困っていると、突然背後から刃の気配を感じた。
とっさに回避したものの、オレがさっきまでたっていた場所には刃の跡が残り、プスプスと煙を吹いている。
レイピアの持ち主は、赤い帽子を被った長身のネズミ剣士。青い皮膚の特徴的な、上品な雰囲気漂う剣士。茶色いマントではなく赤いスーツとかぼちゃパンツに身を包み、エンブレムは帽子につけられている。
「え~っと、これ、歓迎されてない、かな……。」
3、4歩横にずれたオレが助けを求める様にユズキの方を見ると、彼女はオレを睨む青い剣士を睨む。
「ご名答。僕は君を歓迎してはいないよ。」
「ちょっとシャルル!!何のつもり!!?」
短く叱ったユズキを、シャルルと呼ばれた彼は鼻で笑った。
「何のつもりも何も……いつからこの組織はユズキの一存で新メンバーを決める事になったんだい。」
「っ……!!」
どうやら、助け船は嵐の大海原で、木っ端微塵になって沈んだらしい。
「頭領、『テスト』を要請しますよ。彼側が組織にふさわしいかどうかのね。」




