加盟
・同類。
様々な憶測のできる話だが、彼女がオレ自身に最も似通っている点があるとすれば、答えは一つだ。
「君も、転生してここに……?」
「そーゆ―事。理解が早くて助かるよ。」
サバサバしたやり取りの中で、今のうちに解消しておきたい疑問が山ほどあった。
「さっき、アルキミス帝国って……。」
「そ。ここはオーディンズ大陸に一つの王国。アルキミス帝国。」
「オーディンズ!!?」
オレは思わず叫んだ。さっき撃ち殺された人さらいは、オレをどう運んだのか。
シード大陸から東南等に位置する、最果ての大陸。
六大陸で唯一、シード大陸の『七王』と現在国交を断絶している、何やらきな臭い国だと、ルイスから聞いた事があった。
「アルキミス帝国が鎖国体制みたいになった背景には、『ある組織』の陰謀が隠れてるんだ。ま、それはアタシたちの隠れ家についたら追々・・・で、そろそろ聞いていい?アンタの名前と、出身。多分ここいらの人じゃないでしょ?」
「あ、ごめん。オレは……。」
小舟の上で目覚めてからの、息もつかせぬ事態の連続で、すっかり忘れていた自己紹介を果たす。
「シード大陸!!?」
「うん。」
今度は彼女が叫んだ。やはり、オレがここにいるのは本来あり得ない事態らしい。
「六大陸の中心に位置する貿易の中枢から……って事は、さっきアマリアに撃ち殺されたのって、人さらい稼業のチンピラ!?」
「そうみたいなんだ。オレ、病院から連れ去られて……。」
「にわかには信じ難いけど……。」
「ウソじゃねーんだよ!ホントに……。」
「うん。ウソがつけそうな顔じゃないね、多分。」
目を皿にしてオレの顔をじっと見つめると、ユズキはあっさり言った。
「めっちゃアバウト!頼むよ信じてくれよ!!」
「アハハ……冗談だって!面白いね君。」
この状況でそんな弄り方をされたんじゃ、たまったものではない。やがて水路を抜けると、鉄橋の下のような場所に出た。
街は、ナツグミストリートにも劣らぬネオンの賑やかなビル街だった。
まるで町全体が、巨大な宝石の塊のようで、煌びやかな明かりたちにオレは思わず息をのんだ。
「スゲエ・・・!!」
「そりゃどーも。故郷を褒められんのは嬉しいよ。」
「まるで宝石箱みてーな・・・」
「宝石箱、ね。あながち間違ってないかも。私達のもんじゃないけど。」
その静かなつぶやきには、諦めと悔しさの色が混ざっていた。
「それって、どういう……?」
「あ、ごめんごめん!何でもないの、こっちの話。さ、行こ?久しぶりのお客さんだ。皆歓迎するよ。」
水路をさらに進んだ突き当りに、何やら鉄柵の付いた穴がある。穴の前でユズキが大手を振ると、柵が水中に沈み、ボートが沈むと元に戻った。
「センサーだよ。盟友がここを通る時、合図をすれば通れるんだ。」
自慢げに説明するユズキだが、オレはその言葉に何か不穏なモノを感じた。
うら若くも水路の地下に住み、デッドナイトの隊長格を敵に回し、この国の鎖国下の裏で暗躍するものを知っている。
もともとスッキリした大陸ではないと噂にしっていたが、こうなると気になる。
彼女、或いは『彼女たち』は一体、何と戦っているのだろうか。
「着いたよ。」
考え事にふけっていると、ユズキがオレの肩を叩き、慣れたリズムで車両を降りる。
そこは、広く突き出た岩の上にポツンと置かれたテントだった。
オレはユズキの手を借りて降り立ち、後から懐中電灯を持った小太りの青年、ジュゴンが付いてくる。
テントは、普通キャンプ場で見かけるモノより一回り大きめで、中は本や木箱で埋め尽くされている。
「ここに、二人で住んでんの?」
ユズキは腹を抱えて笑った。
が、なぜかジュゴンは不機嫌そうだ。
「そんなわけないじゃん!まあ見てなって。」
ユズキは、木箱の蓋を少し横にずらすと、何を思ったのか片足を突っ込んだ。
「ウソ……。」
もう片方の足、ついには頭までがすっぽり入る。
後を追ってみると、箱の下には地下への階段が続いていた。
二段目までは少し狭いが、そこから先はしっかり幅がある。壁に掛かっている燭台を頼りにユズキの後へ続くと、大きな鉄の扉の前に出た。
ユズキがそれを押し込み、ギィィ、と重い音がなったと思えば、何やら油のにおいが立ち込めてくる。
「おうユズキ、帰ったか。」
ゆっくりと前に進み出る彼女を、野太い声が出迎える。
「頭領、ただいま。」
中には、とび職の作業着によく似た格好の集団がいた。木製の机に腕を置いた、大柄な頭領を筆頭に、年齢も容姿もバラバラな男女が待ち構える。
共通するのは、羽織っているマント。
表はチョコレートブラウン、裏は黄金色。留め具のシンボルは、黒い六角形に金の渕が付き、トンカチとスパナをクロスさせたようなマークが彫られてある。
オレが中に入ると、ユズキが二歩右に避けた。
彼女だけマントをしていないので不思議に思っていたが、ポケットから出したヘアゴムを見て納得した。
他のメンバーと同じシンボルがあしらわれている。
ポニーテールに変えたユズキが、オレの方を差して左手を伸ばす。
「ユズ、お前なんだこの坊主は?」
「あ、どうも。シード大陸から来たジョー・ロングライドと言いま……。」
「シード大陸!!?なんだってそんな遠くから……。」
頭領が少し訝しげな顔をした。この大陸は唯一正規の方法で入れないのだから、無理もない。
「あの、その、色々あって……!!」
この数分で色々あり過ぎたせいで、事実を簡潔に伝えようとしても、上手くまとまらない。
「堅苦しい挨拶は抜きにしてさ、相談なんだけど。アタシね?彼をウチに入れようと思うの。」
ユズキが何を言ったのか、僕には一瞬理解できなかった。




