去りゆく年度 来る者たち
・オレたちが本当に大変だったのは、家に戻ったその後だった。
こっちでは、フラッシュスノーほどの災害が起きていなかったため、 一週間ほど経つと通常登校を再開。
3ヶ月ほど向こうに滞在していたオレたちは、3学期を丸ごとやり過ごしてしまった
おかげで貯まりに貯まりきった宿題に追われ、ようやく片付いたのは、始業式も差し迫った、春休み終了5日前の事だった。
「終わったァ……。」
「私も……。」
「兄貴も姉貴も、宿題ごときで何バテてんのさ。」
「成績トップのお前と一緒にすんなルッキー。」
「お疲れ様でした。お茶にしましょうね。」
待ってましたとばかりにテーブルにつくベルとオレ。
「あれ?そういやクリスは?」
ルッキーが呟いて初めて、クリスの姿が見えない事に気付いた。
「さっき出かけたきり帰っていないの、どうしたのかしらねぇ。」
「母さんのせいじゃない?」
ルシアナさんが不思議そうな顔をしたが、何か聞かれる前にオレは、ルッキーを軽くひっぱたいて茶を濁した。
「ルッキー、それどういう意味?私が何か?」
「い……いやいやルシアナさん、年頃の少年ってのは一人で出歩くのが好きだったりするんで多分……。」
「そうかしら……。」
「そうそう、きっと時期に帰ってきますって!」
危なかった。つい最近、実はルシアナさんを好いているとクリスに打ち明けられ、このことはオレとルッキーしか知らないという。
オレはコメントしかねたが、当面は他言無用の約束だったのだ。
恋の病は風邪より怖いときくが、よりにもよって厄介な人に惚れてくれたモノだ。
これから飯や団らんの度にこの十字架を背負わなきゃならないと思うと、先が思いやられる。
まあ、居候している家の娘に惚れこんで、しかもお隣さんとの間で揺れているオレが、偉そうな事言えるクチじゃねーな。
桜は散ったが、春はまだこれからだ。
葉桜みみとれてに見とれていたせいか、この状況の違和感に、オレはまだ気付いていなかった。
僕がこの町に来て、まもなく半年か。
『外』の世界は、五感で知った全てが新鮮だった。会った人、見たモノ、聞いたこと……。
けど、やっぱり要らない。この町は、「あの人」が目指す新時代には似合わない。
「よおクリス、待ってたぜェ?」
「こっちのセリフですよ。3分の遅刻とは……。」
「そう言うねい、王達の大陸じゃ、何かと動きにくくてな……で?あの一家の調べはどうよ?」
「完璧です。ダミーの団地を見て、ロングライド家は僕を浮浪児と信じ込んでる。」
「あの作戦は金使ったなァ。」
「ジェームズ、ルシアナ、両者にうまく取り入れました。後は「その日」を待つのみと、団長にお伝えください。」
「承知ィ……そっちも達者でやれや、デットナイト第三特攻隊長、クリスさんよォ……。」
久しぶりに呼ばれた肩書。春風と共に、間もなくこの町との決別の日がやってくる気配を、僕は肌で感じていたのだった……。」




