帰れないオレたち
・ロングライド本家での正月パーティ5日目。オレはこの家に来て初めて、夜中に目を覚ました。
天井が、身体が、というより大地が、ガタガタ揺れている。
「地震だ!」
最初に叫んだのは、多分ジェームズさんだろう。
程なくオレも体を起こし、浮遊しているマイケルさんを掴み、ルシアナさんの誘導で外に出る。
ベルやルッキー、クリスは、もう既に外へ出ていた。
続々と親戚が家から出てくる。
全員が出て来たのを確認すると、皆で裏の山を登り始めた。工房に行くために、オレが以前登った山だった。
「兄貴、早く!」
ルッキーが急かしたが、オレはさして焦っていなかった。
恐ろしくなかった訳ではなく、オレの後ろに誰も歩いていなかった為、『自分が逃げ切れば全員無事』という安心感があった。
寒かった割には、登っている間のことをよく覚えていない。火事場の馬鹿力というのだろうか 『それどころじゃない』と、俺の本能が言っているように感じた。
港のすぐ側には、大海が広がっている。今の地震はかなりの規模だ。あの強さなら、津波の発生は免れないだろう。
ゴォォォォ………!
遠くから、地響きとも違う、不気味な音が聞こえてくる。
振り返るな!振り返るな!
オレの胸中で、オレ自身が叫んでいる。
寝ていたマイケルさんも、この騒ぎでさすがに起きたらしい。
オレの背後を向いたまま、 青い顔をして固まっている。
瞬時に背後を向くと、見たくなかった光景が浮かんだ。
見渡す限りの青黒いカーテン。それは、波が立って巨大な津波のカーテンを作り、向こうの空を覆っていたのだ。
「ウソだろオイ……!?」
そこからは、どう逃げたのか覚えていない。
でも、次にオレが見たのは、立ち尽くしたりうずくまったり、むぜひ泣いたりする人、人、人……そして、瓦礫の山と化した街の破片だった。




