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転生ですか?ではどうぞ、ネズミの国へ  作者: 芭蕉桜の助
FIRSTyear 冬 年の瀬に揺れるシード大陸
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地図アプリなくても初めての街をスイスイ歩けるやつってすごいよね

・ 冬休みをフル活用したオレたちは正月の終わりまで 正月の終わりまでフラッシュスノー大陸のジェームズさんの実家に泊まることになった。


そうは言っても、目的は遊びだけではなく、この大陸からシード大陸に誘拐されてきたクリスを、実家に送り届けることだった。


火消し組によると、彼が両親と暮らしていたアパートはジェームズさんの実家から10 km 程度離れた隣町、『アップルタウン』にあると言う。


トナカイそりを走らせること15分。アップルタウン特有のりんごの実を象った建物が見えてきた。


「ジョー君、 火消し組から預かった、住民票の住所を、もう一度読み上げてくれるかい?」


「了解です! 『グリーンアップルリバーサイド西地区 4丁目 13番地5棟。』……。」



「レッドアップルより1ランク下のリバーサイドか。もうすぐ近くじゃないの?」


「楽しみだな〜!どんな人だろ〜!クリス君のパパとママ。」


「はしゃがないで姉貴。クリスも緊張してるんだから……。」


各々が自由に喋っている中、クリスは、一言も喋らず、雪景色を見つめていた 久しぶりに会う両親に、やはり緊張しているのだろう。


確かに、先程通り過ぎた陸橋には、『ここから先、グリーンアップルリバーサイド』と看板があった。


西地区、4丁目、十三番地、5号棟……と、 徐々に絞り込んでいくと、 ようやく目的地と思しき建物にたどり着いた。

集合住宅ポストにはクリスの実家ロンハード家は四階にあるらしい。 届け物がたまっているようで、ポストからは手紙があふれんばかりだった。


ジェームズさんを先頭に階段を登り、 ベルがわくわくと、ルッキーは慎重に、ルシアナさんは土産を大事そうに、 オレはどこか懐かしさと違和感を覚えながら、ゆっくりと階段を上っていく。


目的の扉の穴には、異様なほどに新聞が詰まっていた。まるで、外界との交流を遮断するつもりのような、この部屋自体が、巨大なさなぎのような薄気味悪さを持っていた。


四階、ロンハード家のベルを押した。



『ピンポーン!』




誰も出ない。


『ピンポーン!』


もう一度鳴らすが、やはり誰も出ない。


「おかしいね、 住所をここであっているはずだが……。」


オレから受け取ったハガキを見ながら、首をかしげるジェームスさん。


「 まさか、僕のいない間に何かあったんじゃ……。」


「大丈夫よ、クリスちゃん。きっと……ほら、何処かに出かけてるのよ。」


「うん、一度出直そうか。」


そういうルシアナさんとジェームズも、どことなく不安げな顔をしていた。




団地を出ようとしたその時、階段の下で掃除をしていたおばさんに声をかけられた。


「ちょっとあんたたち、ロンハードさんちの知り合いかい?」


「はい、そうですが?」


物腰低く返事をしたジェームズさんに対して 大家を名乗るオバハンネズミは、ひどく不機嫌そうに話した。

それはオレたちを、何より、クリス自身を絶望に叩き落とす一言だった。


「 ロンハードさん夫婦が、昨日突然、出て行っちまったんだよ!ここ3ヶ月の家賃も、もらってなかったってのに……あんたたち、肩代わりしてくんないかい?」










帰りにそりを走らせている間、行きとは打って変わって、誰も一言も喋らなかった。


ハイテンションだったベルも、冷静だったルッキーも黙り込み、 クリスに至っては、もはや放心状態。冗談抜きで、葬式のような重い空気が流れていた。


最初に沈黙を破ったのは、大黒柱のジェームズさんだった。



「お腹が空いたな。行きの途中にあった道の駅で、おしるこでも飲んで帰ろう。」


「そんな場合じゃないよ、父さん。」


「なぜだルッキー、お前はいいかもしれんが、父さんこの大移動で もう体力切れ寸前だよ。」





『道の駅 ビタミナ』で、 おしるこの屋台が来ていた。


お椀に入ったおしるこを、みんな黙々と、さじですくって食べていく。

誰も何も言わない。いつもみんなで食べる食事とは違い、美味しいもまずいも、好きも嫌いも、何も飛び出しはしない。すする音 飲み込む音、カチャカチャとさじを動かす音、そればかりだ。




数秒たってから、クリスが口を開いた。


「ボク、捨てられたんでしょうか。」



オレたちは、顔を見合わせた。どう答えればいいか、分からなかったからだ。

アパートを出て行ったこと自体は、色んな考えがあるのかもしれない。

だが、それに伴い、クリスを探そうとする行動が全く見えてこないのだ。

だとしたら、本人の言うとおり、クリスの養育を放棄したと考えるのが自然だろう。だが、その最も高い可能性は、本人にとってあまりに残酷なものだ。

いくらロングライド家での暮らしが幸せであろうが、クリスは両親に再会するのを心待ちにしてたのだから……。


クリスの顔が、不安で徐々に曇っていく。


「なぁクリス君、覚えてるか?」


最初に切り出したのは、またもやジェームズさんだった。


「……?」


「 今年の私達の結婚記念日に近くなってから、私とルシアナと君と3人で、おしるこ飲み歩いたことがあったよな。

今こんなこと言うのもどうかと思うかもしれないが、私はこれからも、こうしてみんなで食卓を囲めたらと思っていた。

恨まれてもいいから、ここで言ってしまおう。今私は安心している。 もう少し、君と一緒に食事ができそうだからね。」


ジェームズさんの話を聞いていくうちに、クリスの目から涙があふれ出てきた。


「うぅ……ひっく……ひっく……。」


「あらあらどうしたの?おしるこに涙が……。」


少し心配そうに笑いながらも、ルシアナさんはクリスを抱きしめた。クリスはルシアナさんの胸の中で、鼻水まじりに必死で自分の胸中を訴えた。


「本当は安心してたんでず……今日……帰れなくても、また皆と一緒にいられるかも……しれないって。でも……両親がどこにいるかわからないから……施設とかに預けられて、一人で……過ごすのかなと思って 怖くて。」


「バカね。 子供が嫌いな親なんて、いるわけないじゃない。もししばらく、パパとママに会えなくても、その間はウチで暮らせばいい。どうなろうとあなたは家の家族であることに変わりないんだから……クリスちゃんは一人じゃないわ。」


クリスが声を立てて泣く所を、オレは今日初めて見た。


ルッキーはとっておきのガムボールをクリスに譲り、少し兄貴になった気分を味わっているように見えた。



ベルは、自分のおしるこに入っていた白玉を一つ分けてやり、二人目の弟にお姉さんのをアピールしているようにも見えた。


オレは クリスにハンカチを手渡し、寄り添い合う家族に実感しているうちに、この温もりを絶対守ろうと誓った。



年の瀬も差し迫り、この世界で久しぶりに食べたおしるこは、涙と悲しみと再起の決意と喜び、何より『愛情』の味がした。



ロングライド本家の家系図

(おじいちゃん目線)


家長 ジンバ・ロングライド


妻 ジャスミン・ロングライド




長男 ジェームズ・ロングライド


妻・ルシアナ・ロングライド


孫1マイケル・ロングライド(同列 ジョー・ロングライド)


孫2 ベル・ロングライド


孫3ルッキー・ロングライド





次男 ロッキー・ロングライド


妻 リエル・ロングライド


孫4 ピーター・ロングライド


孫5 サリー・ロングライド


孫6 ジニー・ロングライド





三男 ジョージ・ロングライド


妻デイジー・ロングライド


孫7 生後7日 名前未定

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