めちゃくちゃモテるやつ= 幸せと思ったら大間違いだ
・ ローズさんとの一度きりのデートから一夜明け、オレはどうにも釈然としない気分だった。
結局のところ、オレの転生のメカニズムがわからないままだ。
まあ、ぶっちゃけ帰るつもりはないのだからそれはいいのだが、
その奥に、何かこの先のオレに関わる大切な秘密があるような気がしてならない。
ミリオンさんが隠していること、シード大陸に起きた悲劇のこと、オレに憑依したままのマイケルさんのこと。
そして何より、オレとベルの今後の事。
ミリオンさんの秘密とか、大陸の歴史とかに比べると小さな問題かもしれないけれど、オレにとっては何より重大だった。
結局、自分がベルのことをどう思っているのか、ベルはオレのことをどう思っているのか。
大げさな言い方だが、気になって夜も眠れない。
「ローズさん、あの後どうしたんだろうな……。」
気にはなっているが 今のオレにはどうすることもできない。
せめて、ルシアナさん達に位話しておくべきだっただろうか……。
「ジョー君、 元気がないね。一体どうしたんだい?」
朝から幽霊マイケルさんが(先日の事もあってか随分と静かに) 話しかけてきた。
「ローズのことなら心配いらないよ。昨日の様子を見る限り、心の病は晴れたみたいだからね。
そうなれば彼女はしっかりしてる。きっと無事に帰れたさ……。」
元カレの方が元カレの友人よりさっぱりしている。不思議な話だが、そのぐらいがちょうどいいのだろう。
考え込んでいたら、らしくもなく焦っているルッキーの足音と声が聞こえてきた
「兄貴!起きてる!?大変だよ!」
「どうしたいルッキー、そんなに慌てて……。」
「いいから下に来て!お隣さんが……。」
お隣さん?ルシアナさん曰く、隣は空き家だったハズだが……。
「ご苦労様で〜す。」
引っ越し屋の牛車は、かなりの大荷物が運べる大型車だった。
空き家ながらキレイな一戸建てに、続々と洋服や家具が運ばれて行く。そして最後に、牛車から降りてきた新しい住人を見て、オレは思わず叫んでいた。
「ローズさん!?」
「あ、おはようジョー君。」
まるでここにいて当たり前の様に挨拶したローズさんだが、オレのクエスチョンマークは大増殖する。
「あの……なんでここに……!?」
「あら?来ちゃまずかった?元婚約者の隣家に……。」
「いや、急すぎて……。」
「だって、恋は急にするものでしょう……?」
何を言ったのか、一瞬聞き取れなかった。だが、側にいた幽霊マイケルさんと、急いで出てきたベルの顔色が変わるのが分かった。
「私、キミのこと好きだから、今日から全力で墜としにかかるわね!」
その言葉が、告白と挑戦のモノであると気付いたのは、数秒経ってからの事だった。
同時に、顔を真っ赤にして驚きながらも、なぜか面白くなさそうなベルの真意を、オレはまだ知らなかった。
色々あって、その日はローズさんの引っ越しを手伝う事にした。
部屋を片付け、ホコリを落としていく。
ダンボールの中から本を並べると、ローズさんの意外な一面が見えてきた。
『世界ヒーロー大百科』、『これだけは知っておきたい特撮100の秘密』、『ヒロシ・シバオカの疾風仮面を振り返る会』……か。
見かけの割にオタッキーな……!
「ジョー君!あんまジロジロ見ちゃダメ!」
「すいません、つい!」
真っ赤になるローズさん。やっぱり人には言い難い趣味なのかな……。
「好きなんスね、特撮……。」
「ごめんね、引いたでしょ?」
「何で?オレだって好きっスよ。なんつーかこう……細かい事ごちゃごちゃ考えずに戦うのって、いいっすもんね。」
また、ローズさんは突然笑い出した。
「なんか、変な事言いました?」
「ううん、前にも言ったけど、限りなくマイケルに似てるなーって。アイツはね、絶対人を小馬鹿にしたりしないし、否定もしなかった。とってもいい奴でね。」
そう言って優しく微笑むローズさんに、オレは思わずドキッとしてしまった。
「そういう所だよ?私がジョー君を好きな理由は。」
ワインレッドの瞳や長髪、そこから漂うバラの香り。どこまでも大人の女性って感じだ。
でも……。
「すいませんローズさん、オレ今、好きな人がいて……。」
ローズさんを前にしても、ちゃんと心の中に、ベルの存在がある。これはもう、オレが紛れもなくベルを好きな証拠だ。以前と違い、もう誤魔化し用がない。ハズなのだが……。
「うん、良いよ。それでも……。」
「……?」
「そういう一途な所も好きなの。だから、ジョー君がその人とゴールするまで、私もジョー君を好きでいて良い?」
その問いに、オレははっきりNOと言えなかった。全く、なんてゲスな奴なんだオレは。
前世で、クラスの女子からめちゃくちゃモテてる奴がいた。
アイツはアイツなりに、大変だったんだろうな……。




