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転生ですか?ではどうぞ、ネズミの国へ  作者: 芭蕉桜の助
FIRSTyear 冬 年の瀬に揺れるシード大陸
35/86

鬼に金棒 ジョーにマイケル

・今、ロングライド家には、いや、オレの中には幽霊が居る。


この家の長男で、元消防団火消し組のエリート、マイケル・ロングライドその人である。

先日の一件(前章参照)で、ひょんなことからオレの中に憑依して、自分の死後のロングライド家を見守ることにしたらしい。


それは良いのだが。


「やぁ、おはようジョー君!今日もいい天気だね!」


「そっすね。」





「いや〜、美味しかったな。さすが母さんの玉子焼きは世界一だな!」


「そっすね。」





「今朝は快便じゃないか!明日もこの調子で……。」


「なんでそんな所まで見てんスか!?てかアンタどうやって玉子焼き食ったんスか!?」


「まぁまぁ、良いじゃないか〜!」


見ての通り、呑気的な性格に相まって、この人並み外れたおしゃべりさ。もう精神的に参ってしまう。




食卓でも風呂でもねどこでも、ところかまわず話しかけてくる。


無視れば駄々こねて騒ぎ出すし、かと言って返事すればルシアナさんが心配そうにこっちを見ている。


休むヒマもないってのはまさにこの事だ。



「ジョー君、大丈夫?今朝から独り言を……。」


食器洗いをしていたルシアナさんが、心配そうに話しかけた。


「あぁいや、何でもないです!あ、すいませんルシアナさん、自分ちょっと散歩に……。」


紅葉公園辺りを散策しながらも、マイケルさんのマシンガントークは止まらない。


「いやぁ懐かしい!いつもキレイだなこの公園は……。」


「あの、マイケルさん。ちょっと静かに……。」



「見給えジョー君、ここは昔、よく母さんと……。」


「いい加減にしてください!いくらオレでも、限界が……。」


気がつくと、オレは怒鳴っていた。マイケルさんの顔から、血の気が引いていくのが分かる。


マシンガントークに限界とはいえ、少し言い過ぎたかもしれない。


マイケルさんが次に何かを言おうとした瞬間、背後からものすごい怒鳴り声がした。


「見つけたぞマイケルゥゥゥゥゥゥゥゥ!」


振り向くと、ちょうどマイケルさんと同い年くらいの美女が、棍棒振り回しながら突進して来る。


紙一重でかわすと同時に、マイケルさんの顔が青ざめていく。


「ちょっと!あなた一体……。」


「ダメだジョー君!彼女に話は通じない!君と僕を間違えているんだよ!」


「悪いのはアンタでしょうがァ!あたしの涙を返せェェェェェェ!」



「もはや取り乱してんじゃないスか!何したんスかアンタマジで!怒りのあまり『ァ』とか『ェ』とか乱立してるし!」


「桜の助の打ち間違いとかじゃなくて!?」


「オレがツッコむ時点でそれはないでしょうがァ!」



世の中には、逃げるが勝ちという言葉があるが、今回の場合はまさしく、逃げねば死だった。














サッカー部を終えたオレは、グラウンドの整備と片付けに精を出していた。ふと、騒ぎ声が聞こえて向こうを見ると、住宅街の一本道をジョーの兄貴が爆走している。


「何やらかしたんだ?あの人は……。」


呆れて追いかけている人間を見たオレは、あまりの驚きに声に出してしまった。


「ローズの(あね)さん……!?」










美術部を終えて、私は画材の片付けをしていた。皆が撤収して静かになったと思ったら、 窓の外から悲鳴のような大きな音が響いてきた。


見ると、 正門の前の一本道を、ジョー兄ちゃんがものすごい速度で走っている。

声をかけようとしたその時。

背後から、お兄ちゃんを追いかけるその人の姿を見て、私は思わず息を飲んだ。

彼女はもう二度と、この町に来るはずはなかったのだから。


「ローズお姉ちゃん……!?」









よろず屋ミリオンでバイトを始めてから大分日が経ち、 オレ自身この街にようやく慣れてきた。


無計画に実家を出てこの町で迷走始めてからというもの、盗みやカツアゲを繰り返して荒れる日々。あの日ジョーのやつにぶっ飛ばされてからミリオンさんに拾われなければ、まだ俺は馬鹿やっていたことだろう。


途方に暮れていたとはいえ、無意識のうちに俺をあそこまでフルボッコにしてくれたジョーのやつは、未だに嫌いだが。


クリスマスもみの木バーゲンに向けた商品の準備中、ミリオンさんが外から戻ってきた。少々首をかしげており、何かを探しているようにも見える。


「どうしたんスか?」


「いやァ…… 表の商品が一つなくなっててなァ……。」


「箱の中の?」


「おうよ。お(めぇ)さん、なにか知らねぇかィ?」


表のおもちゃ箱といえば 伝説の剣や魔法の杖といった、戦いごっこが大好きななまいきざかりのガキ……お子様に人気の品物が入っていた。

ほとんどがプラスチック製だが、中には鉄製だったり、 果物ナイフ並みに切れ味があったりするものがあるから 管理は徹底するようにしていたが、まさかあれを盗む輩がいるなどとは思えない。


「心当たりはないっすね。ちなみに何がなくなったんですか?」


「木製の棍棒よ。 ナイフとかに比べて殺傷能力は低いがそれでも危ないことには変わりねえからなァ……。」


木製の棍棒……?そういえばさっき、 見かけねー女がジョーの奴を棍棒振り回して追っかけてた様な……。


まさか……まさかな。


この秋にやつがきてから色々ありすぎたせいで、何かあるとすぐ奴のせいにしてしまうんだ。 俺は頭の中で、そう整理した。

いや、正確に言うと、自分にそう言い聞かせた。

まさかジョーのやつが俺の知らない所で大変な目に遭っているとはつゆ知らずに……。

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