招待状は突然に
新長編開幕です。
ここでちょっとラブコメの匂いが出せるといいなと思っています。
悲しくも美しく、楽しくもうるさく、 でもやっぱり最後は笑って終わる。
そんな彼らの成長や葛藤を、 どうか温かい目で見守ってやってください。
・連日の台風の中であっても、やる気のある組織や団体は雨天に抗いイベントを強行するのは、この世界でも同じコトな様で。
この日このシーズンにも関わらず、ベルは学校から変なチラシを持ってきた。
「『町内会秋の紅葉狩り合宿』……?」
「うん、有志の生徒が何人かで行くんだ。ねぇ、行かない?」
「オレはいーよ。仲の良い同級生とかと行って来れば?」
「仲の良い同級生が10人みんな先約あるって……。」
どんなアンラッキーミラクルだよ。
「じゃあ、クリス。一緒に行けば?」
「すいません、ボクも近所の子と約束が……。」
クリス、お前もか。
「じゃ、じゃあルッキー、お前は、お前はさすがに……。」
「オレが一番望み薄。土日は毎週サッカークラブだもん。それにさぁ……。」
ルッキーは、クリスとベルにバレない様に、オレに耳打ちした。
(兄貴、考えなよ。姉貴が最初に兄貴を当たったのは、兄貴と行きたいからに決まってんじゃない。)
(え……!?いや、まさか……。)
(じゃあ見なよ姉貴のツラ……甘えん坊全開じゃん。)
瞳を潤ませ、何かを訴える様にオレを見つめる。女が男に何かをねだる時の常套手段だ。アレをやられると、オレとて頑なにはなれない。
「分かったベル。付いてくよ。」
紅葉公園の裏山の奥、『MULBERY山脈』は、元の世界と同じく、秋になると紅葉が訪れる人の目を引く自然豊かな山脈である。
今回のイベントの宿であるMULBERRY(桑の葉)ペンションも、そんな山の中の、雄大な景色を一望出来る、魅力的な宿だ……が、それゆえにそれゆえの苦労がある。
ペンションで荷物を下ろしたオレは、誰より早く寝転んだ。
「つっかれたー!」
「ごめんねお兄ちゃん、私の荷物も持ってたから……。」
「いや、良いんだけどさ……。」
「ようこそおいでくださいました!私、当ペンションの支配人、ロバート・アンデルセンと申します。」
ロビーで、少し太った中年男性ネズミが話しかけて来た。
鹿のシルエットが描かれたTシャツに、『biba neyture』と書かれたエプロン。ぱっと見、どこにでもいるちょっと家庭的なオッサンだ。
「当ペンションは山の中に建っています故、動植物を身近に感じられるのが魅力でございまして……。」
「いやぁ、いいっすね。自然豊かで……。」
笑いながらも、オレには一つ、素朴な疑問があった。
いくら自然豊かとは言え、なぜこんな所にペンションを建てる!
オレは宿の主人に一番にツッコミたかった。普通に鹿とか猿とかいるし、ペンションが見えて来た頃から山道半端じゃなくきついし!
まぁ、こんな所のペンションに来る珍客も、オレたち位のモンだろうけど……。
「食堂へご案内しましょう。くるみ町内会御一行様方、直にお揃いになります。」
食堂で待っていると、cashewの生徒と思しき若者たちが徐々に集まって来た。
参加者の中には、よく知った顔が有った。
「ルイス!それに美季も!」
「「ジョー君/先輩!?」」
「びっくりした!お前ら参加してたのか。」
「ルイスがどうしても来て欲しいって……。」
苦笑いする美季を見て、ルイスが恥ずかしそうにうつむいた。
「へぇ〜、以外。」
オレがルイスの方を見ると、ルイスはオレにこっそり耳打ちした。
(この前の事件ではメーワクかけちゃったから、のれん男子を脱する為に、この旅行をエスコートしようと……。)
(なるほど……にしても壮大なエスコートだな……。)
「二人とも、何の話してるの?」
「あぁいや、何でもない……。」
どうやらこの計画には一部、美季へのサプライズも含まれているらしい。
ひとまず美季にバレていないのに油断して、オレは二つのことを見落としていた。
一つは、美季をみるベルの目が、嫉妬と憎悪に満ちていた事。そして、窓の外からオレたちを見つめる奇妙な人影を……。




