長いニックネームは間違えやすいから止めましょう
初のシリアスだ!
てか、3000文字はやりすぎかなぁ……。
・ベルに支えられ、ロングライド家に戻ったオレ。
ルシアナさんから色々と聞かれたが、ベルの時と同じく笑ってごまかした。何も聞かないで欲しいのが伝わったのか、それ以上は何も聞かず、傷の消毒と包帯を施してくれた。
「骨は折れてないみたいね……あまり無茶したらダメよ?」
「すいません……心配かけて。」
「気にしない気にしない。さっ、ご飯にしましょう。」
夕食はルシアナさん特製チーズインハンバーグだった。
ジェームズさんとルッキーは黙々と堪能し、ベルは食べ始めてからずっと、正面に座るオレをふくれっ面で凝視していた。
「どうした……食わねぇの?」
「前に夢に見てた『ミキ』って、生徒会のミキ・ジョナサン先輩のこと?」
あまりにも唐突な、しかも的を得た質問に、オレは分かりやすくドキリとした。
「な、なんで、そんな事聞くんだよ……!?」
「仲良く話してたの見たって、クラスの子が……。」
「み、見間違いだろ……?」
「目が泳いでる。」
「ギク!」
今夜のベルはイヤに鋭い。怖いくらいだ。てゆーか、なんでオレ、ごまかしてるんだろう。ベルが好きだから、ベルに知られたくないから……一時は、美季に惚れそうになってた事を。
どう返して良いやら分からないオレに、助け舟をくれたのはルッキーだった。
「姉貴……その辺にしときなよ。兄貴だってオトコなんだからさ、同級生のオンナに一目惚れくらいするって。」
「え!?何!?もうそこまで行ってるワケ!?」
ルッキーの出してくれた助け舟は、返ってベルの面倒なスイッチを押してしまったらしい。
「落ち着きなさい、ベル!ジョー君困ってるでしょう。」
「ぶぅ〜……!」
「そういえば、ミキ先輩の彼氏の、ルイス先輩?さっき、商店街の方に血相変えて走ってったな……。」
ルッキーが気になる事を言ったのも耳に入らず、まだふくれっ面のベルに、オレはただひたすら苦笑いするしかなかった。
と、その時。リビングの壁掛け電話が鳴った。
「あら。ルッキー、出てちょうだい。」
「もしもし、ロングライド……。」
そこで言葉を切り、ルッキーは受話器をオレに向けた。
「名乗らないけど、ジョー・ロングライドに代われってさ。」
「……?」
不審に思いつつも、ルッキーから受話器を受け取る。電話の相手は、ドスの聞いた低音の男だった。
『よぉ……留守じゃなくて助かったぜ……。』
「誰だアンタ……なんでオレのこと……。」
『つれねーなァ……せっかく、ウチの弟分たちを可愛がってくれた礼を言おうと思ってたのによぉ……。』
「あの不良グループ……!?」
『団長の妹さんが怒っちゃってさぁ、今、ミキ・ジョナサンに遊びに来てもらっててな?彼氏も読んだんだけど、コーフンしちゃっててさー、お前、幾らか金持って迎え来てくんね?』
「テメェ……!何フザケた事を……!」
『あ、もちろん拒否っても良いよ?でも〜、コイツらどうなっても良いのかな〜?』
電話の向こうから、数人の男の怒鳴り声と、ルイスの呻き声が聞こえてきた。
『10分後に、ミリオン7番倉庫だ。もちろん……誰にも内緒で、一人で来いよ?』
電話を切ると、オレは皆に異変を悟られない様に務めた。
「電話……誰からだったの?」
「知り合いの先輩ッス。ルシアナさん、ちょっとジョギングに出て来ます。」
「今から?早く帰っていらっしゃいね……。」
玄関に立てかけてあった護身用の木刀と、ありったけの貯金を詰めた財布を手に、オレは外へ出た。
「待ちなよ。」
呼び止めたのはルッキーだった。手には、彼に似つかわしくない大剣にも似た鉄パイプを持っている。
「ウソ……ついてるでしょ?」
「……なんの話だい?」
オレは今度こそ、目を泳がせない様に気を付けた。ベルも大概だが、ルッキーはまた、段違いに鋭い。
「オレはただ、ジョギングに……。」
「万歩計もサンバイザーも持たず、ジャージにも着替えずに?
どう考えても使わない木刀と、全財産持って?たとえ冗談にしても、笑えないってば……。」
諦めた。もうルッキーに事をごまかすのは無理だ。
オレはルッキーに、今起きている事を、一言一句漏らさずに説明した。
「なるほど……良かった、鉄パイプ持って来といて……。」
「付いてくる気か!?止めろあぶねーぞ!」
「どの口が言ってんの?くだんの不良グループは、数十年前、この大陸の覇権戦争で旗挙げた、マフィアの残党だよ?一人で立ち向かおうなんて、それこそバカだよ。」
「なんで、不良学生がそんな連中なんかと……!?」
「さぁ……それは向こうさんに聞けば?ホラ、いくよ……。」
「ちょぉぉっと待ったぁぁぁあ!」
出掛けようとしたオレたちは、無作法にも塀の上に登るスポーツ刈り男に呼び止められた。
イザだった。手には、彼が剣道で使っているらしい竹刀を持っている。
「水臭いね兄弟!麗しのプリンセス女を救う大イベントにオレを誘わねーたぁ!」
「何この変人……。」
その読み方は同感だが、一体どこで事を聞き付けたのだろう。
「ルイスと明日の体重勝負について相談の電話入れたら、連絡つかねーから心配でロングライド家に来てみりゃ、兄弟たちの会話が聞こえてきたワケよ。」
何JKの競争みたいな事、男磨きでやってんねん!あっ!いかんまたツッコミ役に……!
「アンタも行くの?どっかの
先輩……。」
「おう!イザヤークだ!気軽にイザ先輩でいいぜ!」
「ほら、近所迷惑だからさっさと行くよ……?」
「待ってろよ!マイ・ライバル、そして、マイスイート・ミキィ〜〜!」
うるせぇよ!近所迷惑だってば!どんなにツッコミ入れてもムダだろうから、一刻も早く移動する事にした。
商店街の裏路地には、商店街に並ぶ数々の店の倉庫やゴミの焼却炉がある。普段はほとんど人通りがなく、不良のたまり場と化している。
ミリオンの7番倉庫は中でも日当たりが悪く、所有者のミリオン以外の人間はめったに近寄りたがらない。
「ど……どうする?兄弟、どっから入る?」
「今さら何ビビってんの?こうするに決まってんじゃない。」
青ざめるイザを尻目に、オレとルッキーは閉じられたシャッターを蹴飛ばした。
バァァン!
デカイ音を立てて吹っ飛ぶシャッターのむこうには、薪をくべたドラム缶を取り囲む不良たちが睨んでいた。
「こんばんは~、こちらで世話になってる親友、迎えに来ました〜!」
美季は目隠しされたまま、ぐったりして天井に吊り下げられていた。
ビクビクしていたはずの、イザの拳が震えだした。
恐怖が、武者震いに変わっているのが隣にいてヒシヒシと伝わってくる。
「迎えに来たってさ〜、降ろしてやれば〜?」
ドラム缶を囲んでいた不良の一人が言った。
「何がおかしいお前!!」
イザが怒鳴るが、不良はまるで意に介さない。
「何がおかしいって?オレはジョー・ロングライドに一人で来いっつったよな?」
「コイツらの用件はオレと別。テメェ電話の野郎か。名乗れ。」
「オレこそが、人呼んで血まみれの夜王こと副団長のリディア様だ!」
「ん?何?血みどろの宿六?」
「違うわ!血みどろの夜王!」
「何?チーズの八百屋?」
容赦なくボケをかますオレに、 とうとう副団長様様は痺れを切らしたらしい。不良達は立ち上がり、一斉にナイフを構えた。数秒後、彼らはそれに後悔することだろう。
戦いの火蓋は今、切って落とされたー。




