親友と災難は一緒になってやってくる
気がつけばブックマーク3件!
読んでくださった皆さん誠にありがとうございます!
・屋上で対峙する二人の男に挟まれ、オレはただ呆然と二人を見守っていた。
「つまり……どゆこと?」
「え〜っとですね、ジョー先輩。僕とイザ先輩は……。」
「一人の女を取り合い日々競い合う強敵って訳だ。」
「その読み方辞めろ!カッコつけの為にルピ変換する作者の身にもなってみろ!」
ヤバイ。気付かない内にまたツッコミ役になってる。
「すみませんジョー先輩。妙なご心配おかけして……。」
魔王のように意気込むイザと対象的に、ペコペコ謝るルイス。
「別にオレに謝る事ァねーよ。だがお前、自分の彼女をここまで真正面から横取りしようとするヤツがいて、やり辛くねーの?」
「この先輩、僕とミキが付き合い始めたその日に殴り込んできて、以来このテンションです……まぁ、ミキに惚れるのも分からないでも無いし、向かってくるならこの人より男を磨けば良いだけなんんで……。」
「ふてぶてしい奴め!お前にゃなおさらミキを任せておけん!」
タダ同然で人の卵焼き食ったヤツが何を言う……。
それにしても、オドオドしてはいるが、ルイスの目には本気を感じる。やっぱり、イザやミキが思ってる以上に、ルイスは強いのかもな……。
「んでルイス。アドバイザーってなんの話だい?」
「ああ……それなんですが、今のところ、僕がミキと付き合ってる以上、そう毎回両者からのアプローチが被ると昼ドラっぽくなっちゃうかなと……。」
「そこでだ!毎回オレとルイスが様々なテーマで対決し、勝った方にミキへのアプローチ権を得る!
そのジャッジと勝者へのアドバイスを担当してくれって訳だ。」
大声ではっきり、しかし何を言われてるのかさっぱり分からない。
「え、何?要はミキを口説く為に競争するから、勝敗判定をオレにしろって?」
「その通りで……。」
「いや、さすがジョー!理解が早いぜ!」
マジかコイツら……既に彼女確定中の女を取り合う!?しかも片方は現役の彼氏、判定者は元許嫁って……なんだコレ……ヘタな昼ドラよりよっぽど酷じゃねぇか……!!
「悪いけど……オレはパス。」
「なぁんでだよぉ〜!?」
すまなそうに頭を下げるルイスと、図々しくもほおを膨らませ、卵焼きを盗み食うイザを残し、オレは屋上を去った。
冗談じゃねぇ。アイツらは悪いやつじゃねぇけど、だからこそオレが甲乙付けるだなんて、冗談にしても悪過ぎる。
とんでもない事言い出したモンだ。
廊下を歩いてる最中、オレは背後から声をかけられた。
「アンタだよね?ジョー・ロングライド……。」
振り返ると、そこには明らかな服装違反に、ムダに長くまつ毛を伸ばした女生徒が数人、悪態をついて立っていた。
「そうだけど……何?」
「アンタだよね、ウチの彼氏傷物にしてくれたの……。」
「傷物……あぁ!あのカツアゲ犯ね!その件は悪かったね、ついマジでやっちまって……。」
バァン!
オレの言い方が悪かったのか、そばにあったカラーコーン(なぜこんなとこに)を思い切り蹴飛ばし、オレに思い切り迫って来た。ウワサの壁ドンってヤツか?いやちょっと違うな……。
「カツアゲ?アレは『公正な取引』だっつーの!アタシらがミキに当たらないであげてんだから、彼氏を通じてアタシらに貢ぐ。
それはアイツとアタシらの取引なんだからさ……部外者が口挟まないでくれる?」
こんなモンを取引だ?こんなモンを公正だ?
ふざけやがって、反吐が出る。オレには主義があるから、どんなクズいメス豚だろーが女は殴らない。
だが……。
このメス豚共にせめてもの敵意と憎しみ、その全てを表そうとした時。
「テメェ!何がおかしいんだよ!」
「死ね!マジ死ね!消えて無くなれ!」
オレはいつの間にか笑っていた。袋叩きにされても、四人がかりで蹴られても、オレの笑みは止まなかった。
「覚悟しろよ!このアタシを怒らせたんだ。ミキも、彼氏も……どうなってもしらねーから!」
罵倒も、脅迫も、オレの耳には届かない。やり返しも、言い返しもしないまま、ただ笑っているオレに、なぜかオレ自身が戦慄しているのがよく分かる。
彼らが立ち去ったあと、オレはしばらくその場に倒れ、天井を見つめていた。
我に返ったのは、部活帰りに通りかかったベルに起こされてからだった。
心配が尽きないようで、血相変えたベルに色々と聞かれたが、全てを笑ってごまかした。
直感的に、事件はまだ終わっていない。このままでは、ベルを巻き込みかねない。そんな気がしたからだ。
幸か不幸か、それが英断であったと、オレはこの後思い知らされる……。
エリート、完璧生徒会員。どれも私のあだ名らしいが、どれもこれも的外れ。
私は、彼氏一人守れやしない。わかってた。彼が、なにかの事情でやむを得ず、怪しい連中と付き合ってる事くらい。
一緒に住んでて、男として彼を見る意識が徐々に薄れて来て、彼を知ろうとするのが徐々にナーナーになって来てた。
そうだとしても、彼は自分にとって、大切な人だったハズなのに……。
2週間ほど前、病院で彼に再会して、今日また彼に諭されるまで気付かなかった。自分がどれほど彼が好きで、彼に愛されていたか……。
帰って謝ろう。そして、ちゃんと話そう。
怪しい連中と、授業を抜け出して何をしていたのか。
これから、お互いどう接するべきか。
「ちょっと君ィ……ミキ・ジョナサンだよなァ……!?」
明らかな悪意がこもった呼びかけに、私は警戒した。
「そうですけど、何か?生徒会ではない生徒は、全員下校時間を過ぎていますよね?」
私は振り向かずに質問を返した。相手は私の方へゆっくりと近づく。軽やかだが無駄がない、不気味で不自然な足音だ。
「固えなァ……もーちょい楽にしろって。アンタは彼氏と違って、痛い目見ない手筈だからよ……。」
「……!?あなた、何を言って……!?」
とっさに振り返ろうとした時 私は顔全体を白い布で覆われ、突如睡魔が襲い、何も見えず何も聞こえなくなった。
薄れゆく意識の中、私がただ感じていたのは、夢とも幻ともとれる、ルイスの笑顔だけだった……。




