再開はいつも最悪のタイミング
・二年松組、ルイス・ジョナサンに連れられ、オレはカシュー小中学校を見て回っていた。
小中ともに六年あり、元の世界の高等学習の分は、中学の半分で済ませられるらしい。
これなら、卒業後すぐにアカデミーへの進学や、就職ができるのも納得がいく。
キレイな校舎で、廊下にはゴミひとつ落ちていない。
教室のカベには手の込んだデッサンが飾られてあった。
窓から見える庭のパラソル、あそこで昼食を摂るのだろう。
「スゲぇな。何から何まで文化的だ……。」
「気に入って貰えました?良かった……。今度一緒に、お昼でもどうですか?」
「良いねぇ!」
会って小一時間、ようやく話が弾んで来た。
ベランダにでた時、オレは気になっていた話を切り出した。
「ルイス君……アイツら、いつからカツアゲなんかやってんの?」
「……。」
ルイス君が急に黙りこくった。ヤバイ事を、どストレートに聞いちまったらしい。前にもこんな事有ったような……。
「今に始まった事ではないんです。僕の家は、地主の祖父と両親、それと……僕のガールフレンドの四人暮らしで……。」
「羨ましいな……ガールフレンドと同棲とか。オレァ好きな人を相手に、目も見れねぇよ。」
「その彼女を、イジメの標的にするって脅されてて……。」
「……!!」
なるほど、地主の孫ともなれば、格好の獲物って訳か……。
「……すいません、つまらない話を。あの、この話、誰にも……。」
「言わねぇけど、良いのか?このままじゃお前……金搾り取られ続けるぞ?」
「……良いんです。彼女が無事なら、オレは……。」
無理やりに笑う彼の、何かこう、プライドのようなモノを感じ、オレはそれ以上突っ込めなくなった。
「ちょっとルイス、ダメでしょ?授業サボっちゃ……。」
廊下の向こうから、透き通った声がした。
オレが顔を上げるより速く、 ルイスは親しげに、彼女の方へ駆け寄った。
「ちょうど良かった。彼女が僕のガールフレンドの……。」
「上君……!??」
名を、それもかつての名を呼ばれて、オレが顔を上げると、まさかここで会うとは思わなかった顔が有った。
「美季……!?」
紫の長髪、色白の肌、澄んだ目の緑色は、『天命の砂』の影響だろうか。
そういえば、彼氏がいるとは言っていたが、まさかそれがルイスだとは、夢にも思わなかった。
「ふたりとも、知り合いなんですか?」
「あ!あ、あァ……む、昔の知り合いで……。」
まさか元許嫁だなんて言うワケにも行かず、話を合わせてくれ!と、美季にジェスチャーを送る。
「そ、そう。ちょっとした知り合いで……それよりルイス、なぜ、上君がここに?」
リアクションも、流し方も超不自然。笑いを堪えるのに必死だった。だが、ひとまずルイスには怪しまれていない様だ。
「編入予定らしく……校長に校内を案内する様にと……。」
「そうなの。じゃあ、多分中等部4年生、私と同じ学年だろうから……後は任せてちょうだい。」
ルイスと別れた後、美季とオレは引き続き校内を回った。
廊下に、二つ並んだネズミ人間の影が映る。
美季もそう。やはり転生者は、窓や人目にはネズミ人間に見えるらしい。
「びっくりしました……昼間はロングライド家の家事をお手伝いしてると聞いてたので、まさかここで会うとは……。」
「ごめんな。オレも今日突然話聞かされて……まぁ、助かったよ。ルイスとは、せっかく仲良くなれたし……目の前に彼女の元許嫁がいたんじゃ、気分良くはなかろうし……。」
初日どころか、編入前の案内の段階でケンカなど、まっぴらごめんだ。いや、もう既にケンカはやらかしたんだよな……。
そういえば、オレがフルボッコにしたカツアゲ犯の事……美季は知ってんのかな……いや、知ってたら何か言うだろうな。
それに、要らぬ心配をかけまいと今まで黙ってたんだし、オレが余計な事言うのもなぁ……。
結局、オレがそれについて聞く事は出来なかった。
「しかし美季、お前かなりの姉さん女房だな……。」
美季は顔を赤らめた。
「私は普通に接してるつもりだったんですが……彼、本当のれん男子なんてレベルじゃないくらいのれん男子で……自分で言うのもなんですけど、私が引っ張らないと成り立たないんです。」
そんな事はないような気がする。 いくら大切な恋人のためとはいえ、集団で絡んでくるカツアゲ犯を相手に啖呵を切れる男は、そういるものじゃない。ルイスもただのヘタレではないのだが、肝心の美季がそれを知らないのを、オレは少し残念に思った。
「話聞いてると、ルイス君も頑張ってる見てぇだし、お前の事かなり溺愛してんぞあれ。もう少し、頼ってやっても良いんじゃん?」
「……そうですよね。気をつけて見ます。」
まぁた余計な事言っちまった。ま、吉と出るか凶と出るか、もう後はこいつら次第かな……。
その日のうちに校内のほぼ全てを回り切り、ロングライド家に戻る。その時既にルシアナさんは諸々の手続きを終え、明日には正式に編入できるようにしてくれた。
この後、とんでもない事件が巻き起ころうとは、オレ自身はもちろん、誰にも予想出来なかった……。




