カツアゲ犯は合計金額ではなく札の枚数にこだわる。
新章開幕です。
と言っても何が変わるわけでもなく 相変わらずのネズミの国です。
強いて言えば、ジョー君が志島の苗字を捨てて、ついにロングライドを名乗る事かなぁ。
……!? これ結構重要だったかなぁー。
・ロングライド家の朝は早い。と言っても、オレが早く目ぇ覚ましちゃうだけなんだけど……。
この日の朝も、皆で朝食を摂った。ベルも、ルッキーも、ルシアナさんも、ジェームズさんも、みんな揃って。
いつもと何も変わらない、平和で穏やかな朝。
だが、オレにとってその景色は、昨日とまるで別物に見える。
何せ、向かいに座っているベルの気持ちが分からず、飯の一粒も喉を通らないのだ。
そう。オレはどうやら事もあろうに、妹同然の少女相手に恋をしてしまったらしい。
引かれてる、引かれてるな……読者の皆さんに……。
引かないで!ここに来るまで色々有ったって!ロリコンでもシスコンでもないんだって!
むしろ悪意があったのは桜の助の恋愛描写の方なんだって!
「お兄ちゃん、さっきから何言ってるの?」
「え!?……い、いや?なんでも!?」
「あ!ほら、ご飯粒ついてるよ……。」
3歳下の女にご飯粒とられるのもどうかと思うが、ベルのこういう所も可愛かったりする。
「お、おう……わりィな。」
「どうしたの?顔色悪いよ?」
顔を赤らめるオレを見て、ベルの母、ルシアナさんがクスッと笑った。ベルの美形顔は、この母ちゃんから
来てるのかもな。
考えて見れば、父ジェームズさんもよく見れば、かなりの草食系イケメンだ。ルッキーも然り、この家系はとにかく顔が良い。
「それじゃオレ、先行くわ。」
「あらルッキー、気をつけてね。」
ボールとスパイク、学生カバンを持ち、ルッキーが出て行った。その数分後、作業着に着替えたジェームズさんと、学生服のベルが出て行った。
さて、オレも仕事に……。と、台所に行こうとした時、ルシアナさんに呼び止められた。
「編入……すか?」
「そう、ベルの中学にね。もしかしたらジョー君の学習レベルに合わないかもだけど、こっちでお友達ができると良いなって思って……。」
確かに、一日中ココにいるよりか、この社会について学ぶのもいいかも知れない。だが……。
「学費とか、大変じゃないスか?今でさえオレの養育費大変なのに……。」
「あら?学費を工面しての養育費じゃない?私は、ジョー君をウチの子だと思ってるもの、ベルたちに与えてるモノは、ジョー君にもあげなくちゃ……ねぇ、ここに制服あるけど、着てみない?」
優しいミルクティー色の学ランだった。これほどセンスのいい制服は、近所じゃ見たことない。
転生前の母校のは、ものすごく田舎臭かったのをよく覚えている。
「採寸してないから、マイケルのお下がりなんだけど……どう?」
「すごく着心地いいです。」
嘘ではなかった。本当は採寸してたんじゃないかって位、オレの体によく合っていた。そういえば、顔も体格もマイケルさんにそっくり何だっけ、オレ……。
肌で感じるのは、これが初めてだった。
「ねぇ、良かったら、行ってみない?学校……。」
「今からスか!?でも……。」
まだ洗濯物が……。
そう言いかけた自分は、この世界の学校への興味に負けてしまった。
ルシアナさんに案内され、商店街の先、『紅葉公園』の先にあった。
『cushewschool』とデカく書かれた門の看板の向こうに、学ランと同じ優しいミルクティー色の建物がある。
三階部分と思しき壁に時計が付けられている。
「なんだか、懐かしい……。」
「ふふ、前の学校もこうだった?ちょっと待ってね。」
ルシアナさんはオレを校庭に残し、校舎に入った。何でも、校長先生に話があるらしい。
ふと、校庭の真ん中に目をやると、サッカーボールが転がっていた。
何の気無しにボールを蹴っていると、裏門らしき壁に当たってしまった。
「あちゃ〜!」
ふと、右奥のうんていの前に、生徒が何人かたむろしているのを見た。
ルシアナさんの話では、確かまだ授業中だったハズ……。
こっそり近づいて見ると、この学校の制服を着た青年たちが、同じくこの学校の制服を着た、ひ弱そうな青年を取り囲んでいた。
「この前、言われた通り払ったじゃないですか……!」
「あれしきで調子こいてんじゃねぇよ。参考書にしか金使えないなんて、使われる金の方も可哀想だろ?だから、俺たちが派手に遊んで成仏してもらってんだ……。」
「そんな……勝手なこと……。」
「ハァァン!?文句あんのかゴルァ! じゃあお前の彼女がどうなっても知らねぇぞこらァ!」
「ジョニー君のカノジョ、恐いぞ〜!お前の彼女、一体クラスでどんな目に遭うか……。」
「やめて下さい!ミキは関係ない!」
「じゃ金だせっつってんだろゴルァ!」
リーダー格らしい青年が、ひ弱そうな青年の胸ぐらを掴んだ。
話を聞いてる限り、どう考えてもカツアゲだ。一瞬ためらったが
なぜか彼を他人と思えず、気が付くと両者の間に割って入っていた。
「お兄さん方、この人怖がってるよ?良くないって、カツアゲなんてさ……今時流行んないよ?」
当然、ヤンキー達はオレに睨みを聞かせる。
「んだテメー、ここの生徒かよ?」
「いやまぁ、編入予定者と言いますか……。」
オレは腰を低くし、あくまで下手に出た。 盗人猛々しいと言うか、注意されてこういうもの腰に出るやつは、喧嘩になるとクソがつくほどめんどくさい。
「じゃとっとと失せろよ部外者……!」
「殺されてぇのか……ぁァン!?」
取り巻きの一人が、オレの胸ぐらを掴む。早速入ったな、盗人猛々しいスイッチ。オレは色んな意味で焦った。
「まぁまぁ、ココは平和的に行こうや……オレ、ケンカとか嫌いだしさぁ……。」
「ああ、そりゃいいや……ウソだバーカ!」
右手の拳をオレに思い切りぶつけるリーダー格。
オレは後悔した。 俺が手を出さなきゃいけなくなる前に、うまくなだめられなかったことを……。
気が付くと、四人組はまとめて白目を向いてノビていた。
自分で言うのもなんだが、オレはケンカで負けた事が無い。よろず屋ミリオンのバイト、ボブに絡まれた時も、気が付いたらオレの方が彼をのしていた。
幼い頃からいやいやこなして来た武道稽古が、まさかこんな所で役に立つとは……。
「何事ですかー!?」
校舎から、校長らしきメガネの爺さんネズミが走ってきた。
後ろには、ルシアナさんも一緒だ。
「あらまぁ……。」
「また君たちですか、三年生!後輩を相手にカツアゲなど……指導します!校長室に来なさい!」
校長は気絶したままの四人の首根っこを掴み、校舎の方へ引っ張っていった。
よくもまああの大柄な生徒たちを、片手で首根っこ掴んで引っ張れるものだと、 俺は冗談抜きで感心した。
「ルイス君、そこの編入生君に校内を案内して差し上げる様に。頼みましたよ。」
ようやく我に返った青年は、ズボンに付いた砂を払い、改まってオレに自己紹介した。
「あらためまして、生徒会書記、二年松組のルイス・ジョナサンと申します。」
「ジョー・ロングライドだ。宜しく……。」
「では、ロングライド先輩、こちらへどうぞ……。」
二年松組、ルイス・ジョナサン。覚えた。とりあえず、彼を指針に、CUSHEWS CHOOLでの新生活に、身体を慣らして行くとしましょうか……!




