生き返った〜!って言うおじさんは日々死ぬ思いで戦ってる
・目が覚めた。まさかまた覚めるとは思わなかった。
それとも、ここはもう既にあの世なのかな……。うっ!臭っ!
「ようこそ、地獄へ……!」
重く低い声がした。ベッドの傍で、ミリオンさんが立っていた。
「なんつって!」
「オレ……生きてたんスね……。」
「そのようで。あ、見舞い花、ここに置いときやすぜ。」
そう言ってミリオンさんは、花瓶にはみ出すほど大きなラフレシアを飾り立てた。
……なるほど、臭かったのはコレか……見舞いにラフレシアて……。
「気分はどうですかィ志島さん。全く、アンタにゃほとほと呆れやしたぜ。
あたしがせっかく差し上げたチャンスを棒に振って、あろう事か砂時計を他人に与えるなんざ……だが、あたしにゃ偉そうな事言えねぇな……。」
「あの、オレ、なんで助かったんスかね?」
「実は一つ、志島さんに嘘をついてやした。砂時計がもう一つ、ウチの店の倉庫にストックしてあってねぇ……志島さんがどうするか試したくて、あえて黙ってたんでさぁ……。」
驚きはしたが、それ以上は呆けてしまって何も言えなくなった。
「それで、オレ……ミリオンさんの期待に応えられたんスか?」
「ええ。もう十分、十二分でさぁ……あたしにゃ想像もつかねぇ奇跡を起こすだけ起こしてくれた……アンタにゃストックを消費して釣りが来まさぁね……。」
ミリオンさんが清々しく笑った。こんな風に笑うミリオンさんを、オレは初めて見た。
花のセンスは悪くても、この人は真っ直ぐな商人だ。
今回の件に、それを教えられた気がする。
一息入れてから、オレは一つ大変な事を思い出した。
「そうだ!美季、美季は……!?」
ミリオンさんに伝言を残していった彼女を追って、オレは屋上へ向かった。
美季は、屋上のベンチに、コーヒー牛乳瓶を二本持って座っていた。
「少し早めのプチ快気祝い……どうですか?」
オレたち二人は、屋上でコーヒー牛乳を飲んみながら、久しぶりののんびりした夕方を過ごしていた。
「ミリオンさんからお聞きしました。私を助けて下さったそうで……。」
「大したこっちゃねぇ。道具を用意してくれたのも、機会をくれたのもミリオンさんだ……悪かったな、オレが志島上だって黙ってて……。」
「良いんです。おかげで決心が着きました。」
「決心……?」
「私、こっちに来てからもずっとジョー君のこと忘れられなくて……あなたに会えないまま、生きるくらいなら、このまま死んでも良いのにって、ずっと思ってた……この病気にかかって、気付きました。私がこの世界で、どれだけの人に愛されていたか。
そして、入院中ずっと、“彼”に会いたかった。」
「この世界の彼氏さん?」
「彼もまた、私を必要としてくれる、私も彼が必要でした。だから……もう一度、ちゃんと彼を見つめて見ます。向き合って見ます。もっとたくさん……彼と話して、考えて見ます!」
「そりゃいい。美季がそこまで考えてんなら……オレも頑張って見ようかな……。」
「今の、好きな人の事ですか?」
「まぁ……本当に好きなのか、自分自身怪しいとこもあるが……向き合って見る!」
オレの、そして美季の紡ぐ言葉に、嘘や着色は微塵もなかった。
生きている。
今、息を吸って、二人で会話を交わしている。
その幸せを噛み締めながら、明日も精一杯生きていくことを、沈みゆく夕日に誓っていた。
そして、退院の日。
俺の迎えはロングライド家総出で来てくれた。
オレの快気祝い。ルシアナさんの手料理が並ぶ、久しぶりの五人で囲む食卓は格別で、その夜は時計が午前を回るまで、皆眠ることなく語り明かしていた。
きっと、美季が世話になってる一家もこんな感じだろう。
やがて食事が終わると、オレはベランダに出た。
今日は満月か……。もし何か一つでも今日の行動を違えていれば、オレは、今こうしてここに座っていなかったかもしれない。
つくづく、生きてるっていーなー。
「ジョー兄貴……。」
後ろから、ルッキーが静かに呼び止めた。
ラムネ瓶を持ってきて、片方をオレに差し出した。
「飲む……?」
キュポンッ!と音を立て、二人でラムネをのみ始めた。
「ぷはーっ、くぅーっ!」
「何、その飲み方……。」
「昔、風呂は命の洗濯つったお姉さんがいてな……その人はこうやって酒飲んでたよ……。」
「ふぅん、よく知らないけど……ところでさ、姉貴の話だけどさ……。」
「ん?」
「兄貴の好きにすりゃ良いんじゃん?」
「何……どうした急に。」
「マイケルの兄貴は、ちゃんとしたお兄ちゃんでいようとして、いつもいっぱいいっぱいだった……アンタも、そうなるよか、好きにやって欲しいなっつーか……。」
「優しいな、お前……。」
「べっ……別に!アンタも兄ちゃん気取るんなら、マイケル兄ちゃんと差別したくねぇし!ま……まぁオレはアンタを兄貴予備軍程度にしか見てねぇけど!?差別とか嫌いだし!!……その代わり」
「……ん?」
「もし姉貴を口説くなら、絶対幸せにしろよな!」
そう言ってルッキーは、オレの分の空きビンを処分して先に寝付いた。あからさまなツンデレだ。
ルッキーもああいってるワケだし……やるだけやってみようかな。
ベルに対するオレの気持ち、オレに対するベルの気持ち、ここらではっきりさせるとしよう……。
おかえりジョー!
そして次回、ついにベルにアタック!?




