パン屋のランクはカレーパンの味で分かる。
この章から料理要素も解禁します 別に封じていたわけではないのですがせっかくだから大分に行ってみました
・くるみの街の商店街、その一角にあるパン屋に、オレは臨時で雇われていた。
ルシアナさんからのお願いというか、今にも潰れそうなこのパン屋をどうにかして欲しい、との事だった。
「いやぁ〜助かるよ。我がベーカリーを助けようなんて若者が一気に三人も……おじさん泣いちゃうよぉ〜……。」
このやたらノリの良い(?)ネズミのおじさんが、このパン屋、『コンバットベーカリー』(売れないのはこの物騒な名前のせいじゃないのか?)店主、トーマス・ロンハードさんだ。
「なんでオレまで……。」
「文句言わないの。ルッキー、ママの古い友達なんだから、仕方無いでしょう?ね、ジョーお兄ちゃん。」
「それもそーだな。ここまでくりゃあ、乗りかかった船だ。」
仕事は、店の掃除から始まった。 食べ物屋さんなだけに綺麗にしており、臨時で雇われたオレらがやる清掃作業は、ほとんどなかった。
だが、この時点でオレたちは、 この店に隠れた重大な弱点について気づいた。
「メニュー、少ないよね。」
こともあろうに、ベルははっきりと言ってしまった。
だが、彼女の言う通り。ショーケースに並んでいるのは食パンとアンパン、そしてカレーパンのみ。よくもまあ、このバリエーションの少なさで3代も続いたものだと、俺は、逆に感心してしまった。
「ここにメロンパンとクリームパンとロールパンまで加わったら、 完全に金曜6時のパンヒーローアニメが完成するよ……。」
「余計なこと言うなルッキー!お前なんで知ってんだそのアルゴリズム……!!」
「カレーパンはとっても美味しいんだ。とっても大きくてね。中のたっぷりのお肉がホロホロ溶けるの!」
「いやぁ〜おじさん、どうもメニュー創作が苦手でね……今は昔からのお得意、年食ったじいさんばあさんしか来てくれなくなっちまった。」
頭をポリポリと恥ずかしそうに書くトーマスさん。頼りなさは否めないが、どこかほっとけないような気がした。
「ルッキー、一つ頼みがあるんだけど……。」
それからルッキーは物の数分で戻ってきた。
「買ってきたよ。何する気?これで……。」
「まぁ、見てなって……おじさん、厨房借りますね。」
「え?あ、ああ……構わねぇよ。」
オレは厨房に立った。
何かが足りない。その何かが、恐らくこの状況の奪回につながるハズだが、それが何なのか分からない。
一つ確かなのは、それが新メニューの答えであるということ。
冷蔵庫には確か、豚肉が有った。恐らく、ベルの言う大きなカレーパンの材料だろう。ならば、こうしてはどうだろう。
豚肉に衣を付け、鍋の油で揚げる。
揚がったら、店にあったバンズの上にレタス、その上にカツ、更にレタス、バンズを重ね、マヨネーズとソースを掛けた。
「ジョーお兄ちゃん、料理できたんだ……。」
「かじる程度にならな、名付けて『コンバットカツバーガー』なんてどうだ?」
「ビックリだね。てかトーマスおじさん、何で今までコレ思い付かなかったワケ?」
「てっきりバンズとは、上にソースか何かをかけてそのままいただくものだと思ってたよ。まさか二つ合わせて、何かを挟むなんて食べ方があるとは……。」
「私も!」
「ま、ぶっちゃけオレもだけど……。」
ベルとルッキーの感嘆の声に、オレは少々違和感を覚えた。
ということは、この世界のバンズとは同じものであって同じものではないのだろうか。
商店街にあるもの全て、俺の元いた世界に似通ってはいるが、やはりこの世界は俺の元いた世界と隔絶された、独特の進化を遂げた世界だったんだ。
こんな形で再認識するとは夢にも思わなかったけど、後日聞いた話では、サンドイッチやマフィンなんかも売り出して、再びコンバットベーカリーに活気が戻ったんだそうだ。




