旅の始まり
「戻る方法は一つ。真実の塔でENEMYを倒すこと。」
ENEMY。
英語を和訳すると敵。
つまりボス的なものか。
なんと言うか単純。
「ちなみにその真実の塔ってのは?」
「ここからひと月半ほどかかります。」
1ヵ月半!?
「あ、そうそう。こちらをどうぞ。」
プラントが差し出したのは
ポーションなどが入ってそうな
アンティーク調の小瓶。
「体力剤とキズぐすりとエネルギー剤です。」
わー。すごいゲームみたい。
「痛みはねぇんだけど。」
試しに左腕を殴ってみた。
さっき頬を抓った時も
痛みはなかった。
やはり夢なのか?
「ゲームによく出てくるゲージを想像して頂けますか?」
言われた通り想像すると
目の前にたくさんのゲージや文字が現れた。
「これが新様のデータです。設定によって変更は可能です。よくゲーマーと呼ばれる方々はゲージ表示をオフにする命知らずもいますが、表示設定の変更も出来るので表示することをオススメします。」
浜松 新って…本名かよ。
つまり、表示設定しないと
いちいちゲージをイメージして
表示しなくてはいけないのか…。
設定を弄って常に表示しておいた。
名前はARATA。男。
レベルは1か。
HPはエネルギー剤で回復。
負傷したところはキズぐすりで回復。
体力は体力剤で回復。
体力がなくなると身体が重くなり
走れなくなるらしい。
負傷した時にHPが大きく削られるが
キズぐすりも使わず
放置しているとジワジワと削られていくらしい。
ん?
「死んだらどうなるんだ?」
「そうですね…現実世界に戻るどころか
この世界にも戻れないかもしれないですね。」
すこし愉快にいうプラントに
少しだけ苛立ちを覚えた。
「そうだ。現実世界の俺はどうなってるんだ?」
突然目の前で人が消えるのも
トラウマものだろう。
「安心してください。現実世界の時間は止まっております。そして新様が現実世界から消えたことは誰も知りません。」
なるほど。
「てか、そのアラタサマって辞めね?」
「どうしてです?」
「お前、1度俺を新くんって呼んだだろ。それでいーよ。様とか柄じゃねぇ。」
「了解致しました。新くん。これから全面的にサポートさせて頂きますのでよろしくお願いします!」
こうして、俺とプラントの旅?は始まった。