少女とかみさま
少女は死にました。不幸に、不安に、死にました。少女は願いました。幸せに、普通に、生きたいと。
そんな少女にかみさまが声をかけました。
『君は何を望むんだい』
だから少女は言います。
「普通を望みます」
かみさまが言いました。
『君は何を望むんだい』
だから答えました
「普通を望みます」
かみさまはわらいました。
『いいよ。普通をあげよう』
そして、意識が真っ暗になりました。
だから、私は知りません。
その後に零された一言なんて、知りませんでした。
『君の言う、普通ってなんなんだろうね?』
.
..
…
私の目が覚めるとそこは知らない世界でした。
私は、広い広い草原の中で寝ていたようです。
手を動かしてみました。動きました。
目で世界を見ると、世界は鮮やかで眩しすぎました。
赤い空には真ん丸な月が見えます。
ゆっくりと、私は体を起こしてみました。
草原の草は高く、私の腰ほどまであります。
いえ、もしかすれば私が小さいのでしょうか?
じっと視線を下げたり手で体に触れます。
腰まで伸びた長い黒い髪…普通です。
怪我のあとのない白い手…普通です。
灰色の膝丈のワンピース…普通です。
瞳の色はどうなのかと思いました。
横に、銀のナイフが落ちていたのでそれを拾いました。
何故落ちていたのかはわかりません。でも拾いました。
ナイフを持つのは普通じゃないです。
だから、私ははやく瞳を確認してナイフを捨てます。
瞳…瞳は黒ですが、どことなく赤が混じっている気もします。
光の当たり具合では紫にも見えます。
瞳…普通じゃないです。思わず顔をしかめました。
そのまま銀のナイフを眺めていました。
きらきらと、光を反射しています。
後ろで草原の草ががさり、と揺れました。
なんだか、嫌な予感がしたので振り返ります。
そこにいたのは、普通じゃないものでした。
大きな犬、と言えば聞こえがいいかもしれません。
ですが、首が別れて頭が二つあります。
思わず後ずさりましたが、犬らしきものもこちらへ近寄ってきます。
少しこわいです。
なので、どうしよう、と考えます。
だって、私は普通に生きたいんです。
だから、考えます。
手の中にはきらきら輝く銀のナイフ。
私は、普通がいいから、普通を望むから…そのために、普通ではないことをしました。
無我夢中で、銀のナイフを犬らしきものに向けます。
何度も何度もその体を突き刺しました。
腕や髪には爪のあとがたくさんです。
髪もぼさぼさで、服も汚れました。
でも、私は生きています。
死んでないです。生きてるんです。
今度こそ幸せになりたいんです。
普通になりたいんです。
でも、この世界は私の知る普通じゃないです。
なので、この世界の普通を学ばなければなりません。
私はこの草原を抜ける事ができるでしょうか…
……ここが何処かなんて、考えてはいけないんだと漠然と思いました。
ここまでお読みくださりありがとうございます。初めての投稿ということで拙い部分も多々あるかもしれませんが、楽しんでいただけていれば幸いです。感想、問題等ありましたら仰ってくださると嬉しいです。
ゆったりとした更新になるかもしれませんが、宜しくお願いいたします。