歴史のお勉強
ⅲ
今の時代、人類の識字率は恐ろしく低い。
おそらく20%も無いだろうという話しを僕の勉強を見てくれていた神父様が言っていた。
旧世界にあった小国では識字率が99%なんて化け物みたいな人種が居たみたいだけど本当だろうか。
食堂で僕が読んでいた本は歴史の本だ。
まだ半分も読んでいないけれど大まかなあらすじはこうだ。
西暦2420年、あらゆる科学技術を発展させた人類に地球が突如として牙を剥いた。
未知の病、干ばつ、砂漠化、噴火、地震、津波。
あらゆる天災が間を置かずに人類に降りかかり、更には流星群が地球に衝突することが分かったという。
当時の上流階級達はエリートを集め、空より高い宇宙へと大きな宇宙船という船で逃げ出したらしい。
その後10世紀ほど宇宙をさまようも定住できる代わりの惑星が見つからず、地球に戻ってきて環境を調べるために500人の調査隊を送り込んだ。
神様はよっぽど人類が嫌いなのか、またもや隕石を地球へと寄越したが、今度の隕石が直撃すると地球が崩壊することが調査隊の解析によって判明して
宇宙船が隕石を破壊したらしいんだが、隕石が想定外の壊れ方をしたもので宇宙船はあわれ空の藻屑とかしたそうだ。
地球に残された調査隊は、科学技術を使って生き延びていたらしいのだが、地球の環境は10世紀前の流星群の衝突のせいで激変しており、
肉食獣なんかよりもよっぽど強くて恐ろしい魔物に追われ、取るものとりあえず逃げ続けて旧暦のなんとかという国があったあたりに
高い防壁を築いた町を作って閉じこもった。
この町が現在の首都カイナード王国となり、建国と同時に年号を改めて再生暦とした。
「これが今から360年前の話だってさ」
「・・・」
「ミルツ?聞いてる?」
「キコエテルヨ」
「…?」
僕がせっかく覚えた知識を文字が読めないミルツに説明してあげているのにミルツは青い顔になりながら一点を見つめている。
食堂の天井の染みでも数えていたのだろうか。
「面白く…無かった…?」
「アーオモシロイヨ。スゲーオモシロイナー」
どうしよう。ミルツの目が虚ろだ。
「うーん。あまり興味をひかなかったのかな…なら今度はミルツでも興味がわく物…あ!神話の本でも読んでまた説明しようか。」
よし。とうなずいた僕のそばで相変わらず虚ろな目のミルツが更に青ざめたが僕は気づくことはなかった。