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僕とミルツと


僕の名前はコウ。

この小さなユーキの町に住む13歳。

13歳だけどこの町では立派な狩人見習いだ。

見習いが立派なのかはわからないけれど、大人と同じ様に金銭を受け取るのだからきっと立派だ。


いつも眠そうな茶色い瞳に、相棒にからかわれる「まるで乙女のようなさらさらの黒髪」。

13歳にしては小柄で細い体のせいで同年代の狩人には一歩も二歩も体力が劣っている。


そりゃ狩人には体力が一番必要なのはわかってる。

でも体は急に大きくならないのも僕はわかってる。

僕はまだまだ成長期だからこれからどんどん成長していくはずだ…

そのはずだけど、狩人は防壁の外で狩りをする危険な仕事だ。

成長期が終わるまでのんびりしてたらそれこそ魔物に殺されてしまう。

だから少しでも別な部分を伸ばそうと頭を使う狩人を目指してる。


今日も目が覚めて冬にしては少し暖かいなと思いながら兵舎の食堂でスープを飲みながら日課の読書をしていると食堂の入り口から見慣れた人影が僕のことを見つけて駆け寄ってきた。


「おーっす。コウ。今日も全力で眠そうだなぁ。目開けてんのかそれ。」

「うるさいよ。ミルツ。僕はこれでも全力で目を開けてるんだよ。」

え?それで?ほんとに全力?みたいな顔をしてるこいつが僕の狩人見習いの相棒ミルツだ。

きりっとした目鼻立ちで瞳はグリーン。14歳にしては大きな体とゴワゴワとした強烈なくせっ毛の金髪がせっかくの整った目鼻立ちを若干台無しにしている気もするけれど腕は確かな僕の相棒だ。

大人の狩人は一人で狩りに行くことがほとんどだけれど狩人見習いは2人ペアでの行動を義務付けられている。

僕が10歳、ミルツが11歳の頃からのコンビなので3年間ほぼ毎日狩りに出ている気の知れた相手でもある。

ただ、いつも僕にちょっかいを出してくるのだけは本当に勘弁してほしい。


「んで、今日はどうしますかね。」

「んー。昨日新調した弓の性能を確認したいから麓の方のキラーラビットなんてどうかな」

新しい戦法も試したいし。と付け加えながらも本をペラリとめくる。

椅子の背もたれに盛大に寄っ掛かりながら体を伸ばし、まだ眠そうなミルツに目を向けず、手元の本をぱらぱらとめくりながら今日の予定について打ち合わせをする。

「りょーかい。りょーかいっと。んじゃー俺も腹ごしらえにスープでもいただきますかねー。おばちゃーん!スープお願ーい!あったかいので!」

「うるさいよミルツ!とっととこっち来な!」

食堂のおばちゃんとミルツの掛け合いを無視しながら僕は黙々と本を読み進めていく。

一瞬静かになったと思ったけれどすぐにミルツが戻ってきて僕に話しかけてくる。

「はー。おばちゃんつれないなぁ。ちょっと遅れてきたからって何も一番冷めたスープ出さなくてもいいじゃんなぁ…」

「自業自得」

僕が一言で返すとぶすーっとした目でミルツがぶつぶつ言いだした。

「ほんっとお前ってよくわからない…なんだっけ?よ…よん…?」

「四字熟語」

「おーおーそれそれ。そのよじじゅくじょがホイホイ出てくるよな。本ばっかり読んでるより体鍛えろよ。体をさ。よじじゅくじょを覚えたからって狩りには役に立たないぜ?」

盛大に間違えてるけれど訂正する気も起きない僕は本にしおりを挟んでパタンと閉じた。

「ミルツ。何度も言ってるけど僕らみたいな子供の狩人でも相手ができるのは小さな魔物に限られてるんだ。だからこそ僕がこうして小さな魔物の生息地や分布を調べたり、

どんな生態でどんな攻撃手段が有効なのか、可能な限り安全に狩りが出来るのか、本当は正式な狩人になってからじゃないと入れない教会の図書室で調べて情報を集めてるんじゃないか。」

「…よじじゅくじょ関係なくね?」

「四字熟語!それに僕らじゃ出会っただけで殺されてしまうような魔物だってあの山の麓にはたくさんいるんだからね。そいつらの情報についてだって知らないよりは知っているほうが断然生存率があがるんだよ!」

少し声を荒げながら僕は本を読む必要性について力説するけれどミルツは「あーはいはいー。どうせ俺は文字が読めませんよー」と取り合わずにスープをズズズと盛大にすすりだす。


僕も僕で何度繰り返したかわからないこのやり取りにあきれてこめかみを抑えながらため息をつき、

せめてスープは静かに飲みなよ。と、言っても無駄な事を口にしてから冷え切った残りのスープを飲み干す。


明日は打ち合わせをする前にスープを飲み切ってしまおう。冷えるとおいしくないや。これ…

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