決着
エ「やぁ、暁。元気かい?」
梨「う、うん。元気だけど?」
エ「そうか!僕も元気さ。なぜなら君に会えたからさぁ!」
梨「そう。良かったね。」
エ「これは運命なのか?」
梨「違うでしょ。むしろ偶然じゃない?」
エ「い、意外と辛辣なんだね」
「黄金のヴァリアント・モンキー?」
俺はマックスが持ってきた情報を聞いて絶句した。そんなやつがいるなんて聞いたことがなかった。
「ああ。どうやら東郷さんが聞いた話にはそいつがこの惨劇を起こしたらしい」
「どうやって倒すの?」
梨沙が俺に代わって聞いた。
「分からないわ。だって見たこともないんでしょう? 対策もたてれないわ」
俺たちが悩んでる間に援軍が到着した。到着した援軍に救助者を預けるため、近づくとその中にエリッサの姿を見つけた。
「げっ!」
「やぁ、豊橋。お前がこんな所で僕に救助されるなんて無様だねぇ。」
「はぁ? お前何言ってるんだ? 俺は救助者じゃないぞ」
「エリッサはなんでここに?」
疑問に思ったのか梨沙はエリッサにそう聞いた。
「もちろん、暁に会うためさぁ。……と言いたいとこだけど、実は君たちが苦戦してるであろうから手伝いにきたのさぁ!」
「うわぁ、いらねぇ……」
俺は思わず本音が出た。
「おい豊橋ィ! 聞こえてるぞォ! せっかくこのエリートの僕がわざわざ君たちのために駆けつけたんだから感謝したまえ!」
それだけ言うとエリッサは何処かへ去って行った。エリッサの実力は良太に劣らずとも勝らずだった。
「ったく、あのプライドの高さは1回死なないと直らないのか?」
「けど、あれはあれで無害じゃない?」
「い、意外と辛辣だな……」
俺は梨沙の発言に驚くものの、俺は思考を変えてマックスから聞いた黄金のヴァリアント・モンキーについて考えた。
すると、その時あることを思い出した。
「おい! マックス!」
「ど、どうしたんだい? 良太」
「なんで特設隊に入ったか聞いてねぇ!」
「えぇ……?」
なぜか、みんなの顔には呆れたような表情が出ていた。
「僕良太に説明したんだけど、さっき」
「えっ?」
俺は思わず梨沙の方を見た。すると、梨沙は冷めた目で俺を見ていた。
「ちゃんと説明してたよマックスは。良太は聞いてなかっただろうけど」
「うっ……」
俺は前から人の話を聞いてないことや忘れていることがあった。そのことを何回も梨沙や伯母さんから指摘されていたが、どうやらまたやってしまったみたいだ。
「ご、ごめん。もう1回言ってくれ」
「まぁ、いいよ。誰にでも聞いてないことだってあるさ」
「良太は特殊だけど……」
「うっ」
「とりあえず、説明するよ」
マックスは苦笑して、話を始めた。
「僕が特設隊に入ったのは、誰かを助けたいと思ったからさ。もちろんこれまで死んで行った人たちの敵を討ちたいと思うけど1番はその気持ちだね」
「ちなみに私も一緒よ」
マックスとライラはお互いを見て微笑んだ。それを見て梨沙が、
「なんか2人恋人みたいだね!」
そんなことを言った。
「「うぇぇ!?」」
「な、なな何を言ってるんだい!? 梨沙っ!?」
「そそそうよ!? へ、変なこと言わないで、くくくれるかしら!?」
2人は顔を真っ赤にして否定した。
「そ、そもそも僕とライラはた、ただの幼馴染みだから!」
「そ、そうよ! マックスとはな、何もないわよ!?」
俺は2人の慌てっぷりを見て思わず吹き出した。
「ぷっ。あはははははは」
「なんで笑うんだい?!」
「ご、ごめんごめん。だって2人の慌てようが、あはははは!」
「良太!!」
梨沙は楽しそうな良太たちを見ていた。まるでそれが当たり前の光景のように。
「私もいつか……良太の恋人になりたい……な」
梨沙のその一言に良太たちは気付かなかった。
救助者を見送ったあと、俺たちは黄金のヴァリアント・モンキーを探すため、場所を移動した。
「クリスチーニさん。その黄金のヴァリアント・モンキーってどこにいるんですか?」
「マックスでいいよ。そうだね、東郷さんもどこに出てくるか知らないみたいだったから少なくとも僕には分からないかな」
「は、はい! そうなんですか…」
俺たちは周りを確認しながら黄金のヴァリアント・モンキーを探していた。
「良太さん。黄金のヴァリアント・モンキーを見つけれたとして倒せるんでしょうか?」
美咲が心配そうに聞いてきた。
「情報が一切ない状況だからな。倒せるかと聞かれたら分からない。でも、俺たちならやれる!」
俺がそう言うとみんなは頷きあった。
しばらく進んでいると何処からか戦闘の音が聞こえてきた。
「良太さん!! あっちの方で誰か戦っています!」
美咲の言葉を聞いて俺たちは音が聞こえる方に走り出した。
戦闘音が聞こえる場所に到着した俺たちが見たのは、俺たちが助けた救助者とそれを守るために闘っている特設隊、そして複数のヴァリアント・モンキーを率いている黄金のヴァリアント・モンキーだった。
「あいつが黄金のヴァリアント・モンキー!?」
「本当に黄金だ!」
俺と梨沙が驚愕の声を上げる中、遠くでは次々と黄金のヴァリアント・モンキーに殺られていた。
「良太!! 早く助けに行こう!! このままだといずれ僕たちが助けた人たちまで全滅してしまう!!」
「あ、ああ!! みんな行くぞ!!」
俺たちは助けに入るため走った。すると、何体かのヴァリアント・モンキーがこちらに気付いて向かってきた。
だが、俺たちは向かってくるヴァリアント・モンキーを一撃で倒した。
「助けが来たぞォォーー!!!」
隊員の1人がそう叫ぶと、安心の声が聞こえてきた。俺たちはそれぞれ危険そうな場所に別れて救援に入った。
「梨沙! 俺たちはあの黄金のやつを討とう!」
「うん! 分かった!」
俺と梨沙は邪魔してくるヴァリアント・モンキーを蹴散らして、黄金のヴァリアント・モンキーの所に行くとエリッサの姿があった。
「エリッサ!? お前何やってるんだ!?」
「何ってこいつを倒してるんじゃないか! こいつは僕が倒すから君たちは下がっていなよ!」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ! 一緒に倒すぞ!」
「嫌だね! はっ! ちょうどいい。これで君たちより僕が強いってことを証明してやる!」
「おい!? エリッサ!」
エリッサはそう言うと、1人で向かっていった。俺たちも行こうとしたが、他のヴァリアント・モンキーによる邪魔が入った。
「くそっ! さっさと蹴散らしてエリッサを助けに行こう!」
「うん!」
数分後、数十体のヴァリアント・モンキーを蹴散らした俺たちが、エリッサのとこに着いた時にはすでに遅かった。
エリッサの武器は折られ、エリッサは座り込んだまま後ろに下がっていた。闘志はすでにないだろう。もはや死は目前といったところだ。
「く、来るなぁ。来るな来るな来るな!!! た、たた助けて! お願いします!!」
「良太、大変!! このままじゃエリッサが死んじゃう!!」
「分かってる! けど、どうする。この距離だと間に合うかどうか!」
俺たちとエリッサとの間には10メートルはある。急げば間に合うかもしれないが、その間に黄金のヴァリアント・モンキーが大人しくいるとは限らない。
そして俺は迷ってる時間がないことを思い知った。さっきまで、動いてなかったヴァリアント・モンキーがエリッサに向かって跳躍した。
「ひぃいぃぃぃぃぃぃ!!!」
エリッサが死ぬ。その事実を思い描いた。けど、俺は助けたいと思うと目にも止まらぬ速さで飛び出していた。
「エリッサぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺は10メートルの距離を一気に0にしてヴァリアント・モンキーの攻撃を受け止めた。
「と、豊橋!? な、なんでここに! お前らは他の相手をしてろって言ったはずだぞ!!」
「うるさい。死にたくなかったらどっかいってろ」
「僕に命令するな! ふん、仕方ないから一緒に闘ってやるよ。感謝するんだなぁ!」
「はいはい。感謝してますエリッサさん」
「ぐっ、貴様ァ!」
「言い争ってる暇ないよ! 2人とも!」
そろそろ受け止めているのが難しくなってきたが、梨沙が銃を放ってのけぞらせた隙にヴァリアント・モンキーから距離をとった。
「どうやって倒す?」
「こいつの防御性は高かった。僕の攻撃がまったく通じない」
「じゃあひたすら攻撃する?」
俺たちは話し合いながら敵の動きを待った。のけぞりが解けたヴァリアント・モンキーは俺たちを見て高々く吼えた。
「来るよ!」
「三方向に別れろ!」
「僕に指図するな!」
ヴァリアント・モンキーがこちらに向かってくると俺たちは三方向に別れた。
けれど、ヴァリアント・モンキーは先に俺を狙ってきた。
「良太!!」
「大丈夫だ! 梨沙は援護してくれ!」
「分かった!」
俺は向かってくるヴァリアント・モンキーの攻撃を避けて、腹に一撃を浴びせた。
だが、俺の一撃は弾かれてしまった。
「硬い! こんなやつどうやって倒す?」
「良太!!」
梨沙は援護射撃で俺に迫っていたヴァリアント・モンキーの攻撃から守ってくれた。
「ありがとう! 梨沙!」
「う、うん」
俺と梨沙は思わず目を合わせ微笑んだ。
「君らは戦闘中に何をやっている!」
エリッサに一喝され、俺たちは我に返った。エリッサが敵の攻撃を受け、俺が攻撃し、梨沙が援護する。その連繋が出来上がっていた。
「エリッサ! ”技”は使えるか!」
「僕を誰だと思ってる! エリートだぞ、もちろん使える!」
「よし! 仕掛けてみるぞ!」
”技”というのは元々人間が持っている能力のことだ。だが、大半の人間はそれを忘れてしまっている。それを思い出すのに必要なことは未だ分かっていないが、恐らく何か強い願いがきっかけになるらしい。
「行くぞ!! 魔神瞬迅殺!!!」
「だから命令するなって言ってるだろ!! 疾風覇道滅殺!!」
2人の”技”が黄金のヴァリアント・モンキーに炸裂した。
すると、黄金のヴァリアント・モンキーは体を大きくのけぞらせた。
「効いてるぞ! この調子で行こう!」
「待て! 連続では僕らの体力が持たないぞ!」
「くそっ! じゃあどうする?」
「聖なる光をもたらせ! 祝福の光!!」
突然俺たちの体を光が覆った。声がした方を見ると梨沙が”技”を使ったようだ。
「これであと1回は使えるよ! 私が怯ませるからその後はお願い!!」
「ありがとう梨沙!」
「これなら勝てる! 止めは僕に任せたまえ!」
「任せるぞ!」
俺たちは最後の攻撃を仕掛けるため準備をした。
「行くよ! 私に聖なる力を! くらえ、聖者の呼び声!!」
梨沙の”技”により、黄金のヴァリアント・モンキーは数秒間動きが停止した。
梨沙の”技”は自身に聖なる力を与え、様々な恩恵をもたらす。その力の効果は絶大だ。
「あとは任せたよ!」
「ああ!」
俺とエリッサは梨沙が作ってくれた時間で最後の大技を繰り出した。
「これで終わりだ! 魔を打ち払い殲滅せよ! 月界の業火!!!」
「さぁ、これで止めだ 僕の華麗なる技を見よ! 疾風轟覇斬!!!」
2人の”技”が黄金のヴァリアント・モンキーに炸裂し、跡形もなく消え去った。
「やったーーーー!!! 倒したーー!!」
梨沙の喜ぶ声が聞こえ、俺はその場に座り込んだ。
「ふん。僕のお陰だね。まぁ、この僕のエリートさがよく分かっただろう。」
「何言ってんだよ。お前最初負けてたじゃねぇか」
「なっ! あれはたまたまさ! この僕が負ける訳ないじゃないか!」
「はいはい。そうしとくよ」
「ぐっ!」
俺はエリッサを軽くあしらい、梨沙の所に行こうとした瞬間、
「危ない!!!」
すぐ近くにまで迫っていたヴァリアント・モンキーに気が付かなかった。
俺は目を閉じ、死を覚悟した。だけど、いくら待っても衝撃は来なかった。
目を開けるとそこには、俺を庇って攻撃を受けたエリッサがいた。
「エリッサ……?」
「はぁ!」
エリッサは攻撃をくらいながらもヴァリアント・モンキーを倒すと、その場に崩れ落ちた。
「君は……一体何をしてるんだ……」
「はぁ……? お前こそ何やってんだよ……」
「知らないね……。体が勝手に動いた」
「少し……聞いてもらいたいことがある」
エリッサは息をたえたえになりながら、話した。
「おい! 喋るんじゃねぇよ!」
「いいから。……僕はね君のことを実は前から……知っていたんだ。初めて知ったのは僕が一橋小学校に4年生の時に転校してきた時だ」
「えっ?」
一橋小学校とは俺と梨沙の学校だ。同じ学校にいたなんて俺たちは全然知らなかった。ふと、横を見れば梨沙も駆けつけていた。
「最初は元気のいいやつと……思っていた。それから何度も君を見ていた。どうしたらそんなに元気でいられるのかと。僕は根暗だったからね」
エリッサのこの感じは最初からそうだと思っていた。けど、実際は違った。
「そんな時、6年の時のあの日奴らがやってきた。学校が襲われた時、僕は怖くて何も出来なかった。けど、君は……勇敢に闘った。羨ましかったよ。憧れた」
俺はエリッサの気持ちに気づいてなかった。むしろ遠ざけてしまっていた。
「まぁ、僕は君みたいになるために努力して結局こんな性格になってしまった。エリートには……なれなかったよ。最期に共闘出来て……良かったよ。豊橋」
そう言ってエリッサは息絶えた。
「ばかやろう……。勝手に死にやがって……。お前は十分エリートだったよ。エリッサ」
非常に長くなってます!
今回闘いがかなりあったと思います。ほんと読みにくかったら申し訳ない!!
戦闘シーンは嫌いだ〜!ww
さて、エリッサがいい役で終わったでしょうか?あまりウザさが感じられなかったかもしれないですが、すいません!
まさかのエリッサ再登場からの共闘、そして死ぬという三連ちゃんでした!
ということで次回は回想です!
さぁ、誰の回想でしょう?
って言わなくても分かりますねww
なるべく早く更新させていただくのでそれまでお付き合いください!
ここまで読んでくれてありがとうございます!!