試練
試練の内容は簡単な駆除作業だった。子供のヴァリアント・モンキーが出たので倒して欲しいとのことだった。ーーちなみに試練はチームによって違うーーまだ子供のヴァリアント・モンキーでも危険には変わりない。
子供のヴァリアント・モンキーはヒトは食べないが、それでも腕を降り下ろしただけで人を殺せる。
主な主食は作物で、農作業をしている人の被害が多数出ていた。
「ったく。何だってこんな時に農作業をしてんだよ」
「仕方ないよ。こんな状況で、しかも今はまだ足りているかもしれないが、この先いずれ食糧も尽きる」
隊長のフリックが周りを見ながら答えた。
フリックは入隊試験の成績上位者だ。合格者があまりに多かったため、チームを10組に分け、10位までの合格者をチームの隊長に任命した。
「それにここいらの地域はヴァリアント・モンキーの被害が少なかったからね」
フリックの言う通りヴァリアント・モンキーがもたらした被害は僅か10日間だけだった。
それ以降、ヴァリアント・モンキーはその姿を減らした。宇宙船に帰ったと言われている。
都心部にはまだ大量のヴァリアント・モンキーがいるが、少し離れた所ではほとんど出てこない。
だが、時々こうして子供のヴァリアント・モンキーが作物を荒らしに来るのだ。
すると、遠くの方で何かの唸り声が聞こえた。
「っ!? 何か聞こえたぞ!! あっちの方だ。行ってみよう!」
林の方へ行くと、少し開けた場所に出た。
「あっ! いたぞ!! ヴァリアント・モンキーだ!!」
それは、8メートルある子供のヴァリアント・モンキーだった。
「うそっ!? あれで子供!? でかくない!?」
副隊長の浜田沙月が驚愕の声を上げた。
「皆、武器を構えろッ!! 来るぞッ!!」
こちらに気付いたヴァリアント・モンキーはものすごい速さで向かってきた。
「作戦通りに行くぞ!! 散開!!」
フリックの合図で俺たちは敵を囲むように回り込んだ。
ヴァリアント・モンキーは力が強く、どれも知能を持ち合わせていない。
こうして回り込むことで判断を鈍らせることができるのだ。
・・・この瞬間までは
「ようし、このまま行くーー」
その時、ヴァリアント・モンキーが急激な速さでフリックを襲った。
勢いのある力強いパンチにフリックの上半身が消し飛んだ。
僅かに遅れて、重力により下半身が倒れた時、一同は騒然とした。
「いやぁあああああああああ!! フリック!! フリックが!!」
「落ち着け、沙月さん!! まだ作戦の途中だ!! 死ぬぞ!」
フリックの突然の死に動揺を隠せない沙月に再びヴァリアント・モンキーがもうスピードで襲った。
そして、そのまま身体を吹き飛ばされ絶命した。
「くそッ!! 梨沙、あいつの足を攻撃してくれ!! もしかしたら、スピードが落ちるかもしれない!!」
「うん。わかった!」
梨沙はヴァリアント・モンキー目掛けて銃を撃った。
ーー後から聞いた話だと少し前から普通の”宇宙人”とは違う種類の“宇宙人”が増えていた。
その“宇宙人”たちは力、堅さ、速さなどと言ったステータスが1つだけ異常に発達していて、この時のヴァリアント・モンキーは速さに特化した“宇宙人”だったらしい。
その“宇宙人”たちはちゃんとした弱点がある。
一部のステータスが上がっている分、その部分の防御性が極端に低くなり、倒しやすいのだーー
梨沙の放った銃が見事足に命中し、ヴァリアント・モンキーがよろけるのを見た俺は一気に畳み掛けるように指示をした。
「梨沙、おそらく足が弱点だ! 俺が攻撃するから銃で援護してくれ!! これで終わらせる!」
足が弱点であることを一瞬で判断した俺は、一気に加速した。
「これで終わりだ!! うおおおおお!! 魔神瞬迅殺!!!」
目にも止まらぬ速さでヴァリアント・モンキーを八裂きにした。
数秒後、ヴァリアント・モンキーは絶命した。